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ピアノ曲の分析 - ショパン ノクターン 第13番 ハ短調 Chopin Nocturne No.13 in C Minor Op.48-1

この曲はショパン国際ピアノコンクールの課題曲に入っており、特に2021年のコンクールで何度か聞いて、弾いてみたいなぁと思っていました。

とりあえずwikiによる曲解説

最近新しいショパンを弾き始める際には、まずはこの人のYouTubeで解説を聞いてみることにしています。

ポーランド人ピアニストGrzegorz Niemczukさんの解説

それであれ?って思ったのが、16小節目の左手最後の16分音符の音。私の全音の楽譜はソの音ですが、この人はその上のシを弾いている。おや?
不思議に思って、その後いろんな人の演奏を聞くが、ソの人もシの人もいる…。友人のパデレフスキの楽譜はソとなっていたので、きっとエキエルがシなんだろうなぁ、と予想。楽譜を気にするほどちゃんと弾こうと思っておらず、昔買った全音でいいかなぁ、と思っていたのですが、ここはやはりエキエルの楽譜を買って、使ってみることにしました。

速度の指示はWiki参照。ピアノの先生いわく、Lentoはただ遅いという意味だけとのこと。

標語
mezza voce  音量を抑えて、柔らかい音で
ten. tenutoの略。音の長さを十分に保って
sotto voce 小声で
sempre 引き続き
cresc. crescebdoの略。だんだん強く
ritenuto すぐに遅く
dim. diminuendoの略。だんだん弱く
rall. rallentandoの略。だんだん遅く。だんだんゆるやかに。

参考に聞いた音源
ショパンを弾く時、とりあえずこの人の演奏を聞く。
Seoung-Jin Cho
大好きなピアニスト、Pollini
Maurizio Pollini
ピアノ先生おすすめの演奏
角野隼斗
以上すべてエキエルではないので、エキエル版で弾いてる人を探す
Daniel Barenboim
あとは、YouTube解説を見た、ポーランド人ピアニストGrzegorz Niemczukさんや、2021年ショパンコンクールの演奏をいくつか。

Niemczukさんの解説のまとめ
解説の始まりは曲の始まりではなく、ハ短調のコード。

ハ短調ってどんな意味?wikiによるとシャルパンティエはこの調について「陰鬱さとわびしさを表す」と述べている。マッテゾンは「並はずれて愛らしく、同時にまた、悲しい調」と述べている。愛らしいのか。。
この曲が書かれた1841年、ショパンの婚約者であったマリア・ウォジンスカが他の男性と結婚した。この数年前に二人は既に交際を終わらせていたが、この事実がショパンの心に影響を与え、彼が精神的に沈んだことは、彼の手紙などから読み取ることができる。結婚して家族を持つ、あたりまえの生活をする、というような望みを無くしてしまった。その気持ちがこの曲にあらわれている。
曲の始まりは、流れず(do not flow)、折り重なり(fold)、実際に重みのある言葉のように休息が必要( needs to rest like words of existential weight)。重く、悲しく、暗い。
左手を見ると、通常のノクターンの伴奏とは違って、人生に疲れた老人の行進のように、ゆっくりと歩く感じ、足取りが重くて非常に暗い。 この伴奏のため、右手のメロディーをルバートで弾くことは許されない。きちんと均一に弾かないといけない。お葬式の行進にも聞こえるこの曲を、オペラのアリアのように弾いてはいけない。メロディは歌ではない。どちらかと言えば、レチタティーヴォ
(recitativo 叙唱、個人的な感情の独白や状況説明)のように、ショパンが自分の気持ちをただ述べている、告白しているのである。また、メロディーの始まりが休符なのは、何か言いたいことがあるのに、喉に痛みがあって、つまって言うことができない状況を表している。ピアニストの気持ちを表さず、ショパン本人が語りたいように弾かないといけない。
弟子から見たショパンという本に、ショパンはこの曲の最初の4小節までをとても大事にして、きちんと弾けるまで何度でもやり直させた、と記載されている。2小節目から3小節目が難しいのは、メロディーが上昇しているのに、3小節目で急に下がるから。これはとても珍しい。
1小節から4小節が問い、5から8がその答え。9と10は暖かく、すこし笑顔がでる、それはお葬式でいうのなら、故人との良き思い出をかみしめている感じ。しかし11、12でまた辛い気持ちに戻ってしまう。そして、13 、14でまた言いたいことが言えない感じ。15からはピアノ(弱く)。17で元のメロディーにもどるが、曲は悲劇へと続いていく。24小節目に向けてどんどん音量をあげて行く。2回の似通ったメロディーは、ドラマティックで悲劇的。ひどい痛みについて語っている。そしてベートーヴェンの交響曲第5番「運命」に似ているフレーズ(23小節目のタタタ・タン2回の繰り返し部分)。
このように、最初のパートAは、人生を表した行進、悲惨な人生、そして悲劇的な終わりを迎える。
ここから、ショパンの天才的能力で、曲が輝き出す。1音の変化でCマイナーからCメジャーに変わり、光が戻る。死から天国に行ったように。あるいは生まれ変わったように。パートBのコントラストは、普通のノクターンのものとは違って、ゆっくりになり、天国にいるような気分、天使が歌うコラール
(讃美歌)のような音楽。聞いている人の気持ちを安らかにして、ずっと聞いていたいと思わせるような音楽。
最初のフレーズはメロディーをよく聞いて。次のフレーズの途中に、歌を邪魔する邪悪な声が入る。何か暗黒なもの、ここから天使の歌声と悪との戦いが始まる。同じ音を4本の指で弾くので、非常に力強い。3連符のリズムであることが重要。光の讃美歌は、降伏することを拒否し、歌い続ける。邪悪なものも降伏するどころか、どんどん攻撃を強める。そして最後に悪の力が優る。
そしてパートAに戻るが、指示にもある通り、倍のテンポ。agitatedに
(心がかき乱されてる感じ)、つまり、もう行進ではなく、走っている。最初のAの時は1音ずつだったのが、3連符になっているので、実質6倍の速さになる。それはどういう意味か。たぶん逃亡しているということだと思う。映画のような音楽、とても想像力を掻き立てる曲である。最初のAと最後のAテーマは全く同じ。そして重要なのが始まりがppになっていること。それで逃亡がより恐怖に満ちたものになっている。
それぞれのフレーズのアーティキュレーションは同様になる
(最初のAのフレーズを弾き、最後のAのフレーズと比較し、同じように強弱をつけるのを確認)
ベートーベンのモチーフのところではよりドラマチックに。
そして一番最後は天国に昇る一筋のフレーズ。消えていくように。
そして最後の和音。この意味はどういうことか。逃亡した後はどうなったのか。この質問に答えを出さないでおくのが良いと思う。答えはそれぞれが考えて、自分の解釈で弾いて欲しい。

曲の内容がわかったところで、実際のフレージングをどうするかは別にまとめようと思う。



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