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長編小説【記憶の石】

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14歳の、終わりから。 ※フィクションです。
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2023年2月の記事一覧

【記憶の石】12

【記憶の石】12

 ただ年を重ねるだけで悩みが解決することもあるのだな、というのが、私の大学生活の感想だった。私は地元で過ごした高校時代まで、孤独であることが人生最大の問題だった。子供なりにあらゆる努力を講じてみたけれど、誰も自分に興味を持ってはくれなかった。誰かと並んで歩いたり、家族以外の人と会話してみたくて仕方なかった。学校で、自然といつも並んで歩く人が決まる仕組みが知りたかった。ところが、大学進学で東京に出て

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【記憶の石】11

【記憶の石】11

 久子は大学2年生の冬、同年齢の者たちから少し遅れてスマートホンに切り替えた。学生までは携帯代を負担すると言っている父親が、そろそろスマホにしようかと提案してきたタイミングでガラケーを手放すことにしたのだった。久子は初めての携帯と同じく、ピンク色の端末を選択した。初めての携帯から2回、機種変更させてもらっていて、次は携帯サイトで最初に知り合った人が持っていたようなスライド式の携帯が欲しかったのだけ

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