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長編小説【記憶の石】

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14歳の、終わりから。 ※フィクションです。
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2022年11月の記事一覧

【記憶の石】②

【記憶の石】②

 携帯電話の小さな画面、今思えばずいぶんと小さいその四角に、少女はあまりにも広大な希望を見出した。これを仕方なく希望という言葉の範囲内に収めるしかなかった未来への期待だった。少女は画面の枠を逸脱した途方もない未来のイメージに一瞬にして心酔してしまった。
 23歳の大学院生を自称するその男はトモと名乗った。トモは自分の日記に自身の写真を載せていた。日記の内容としては煙草がやめられないという旨で画像と

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【記憶の石】①

【記憶の石】①

 夢の続きが気になって二度寝してしまうように、そしてその夢には二度と戻れないと知っているのに、消えかかっている幻にしがみついてしまうことがある。甘い記憶の欠片たちを拾い集めて守ろうとしても、朝日に照らされれば残るのは僅かだ。

 夢の終わりに到達できることはない。目が覚めたら終わるのだろうが、もしアラームをセットし忘れていたら続きがあっただろうし、でも映画のような明確なエンディングはない。夢の終わ

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