赤く染まった月からはどんな地球の姿が見えるのか？(奇跡の天体イベント②)
「あー・・どうしたものかなぁ。」
「どうしたのリコちゃん？」
「皆既月食の時に月が赤くなるのは分かったんだけどさ、そもそも月面で生活してるウチらは月食の時何が見えるんだろうな？」
「確かにあまり考えたことは無かったわね。」
「地球にぶつかって屈折して飛んできた赤い太陽の光が月面に反射するわけだから、月食中は月の大地も月面基地も、宇宙服を着ている私達も真っ赤になる訳だ・・つまり月面でも地球みたいに夕焼けが見れるってことか？」
「うーん、それはちょっと違うと思う。そもそも月面は大気で覆われていないから、空一面が地球の様に赤い夕焼けになるとは考え難いわ。お空はやっぱり夜空と同じじゃないかしら。」
「じゃぁどうなるってのさ」
球の持つ分厚い大気の層を通過する事によって月まで届くの。つまり地球の全体から放たれた夕焼けの光が、月面にも届くって事ね。」
「ちょっとクレアの言ってる意味が分からん。そもそも月食の時は地球の作った影に月面が隠れるわけだから、そもそも日の光なんて届かないんじゃないのか？」
「それがそうでもないのよ。地球の持つ分厚い空気の層は確かに青い光を散乱させ、波長の長い赤い光を通しやすい。でも、赤い光も大気の層による影響を少なからず受けるのよ。」
「少なからず受ける？」
「つまり赤い光も若干散乱・・光の進む方向が傾くの。」
「分かった！昔ガン○ムに出てきた”ビームを曲げる武装”と同じだ！ゲシュマイディッヒパンツァーやレクイエムみたいなやつ！ヤバいカッコいいよな。」
「え・・うん、でもそんな感じかな？とりあえず月食の時、地球に向かって放たれた太陽の光は下の図みたいな感じで例え地球の影に月が隠れている状態でも、赤い光は月面に届いている状態なの。」
「おぉぉ、つまり地球に太陽が隠されると、月地平線の向こうまで、赤く染まるって事か。でもよ、そうなると月食・・いや、私の様な月面に住んでる人間にとって日食(太陽が地球によって隠される)時は、地球の見え方はどうなるんだ？やっぱり真っ赤なのか？」
「その辺りも気になるわよね。実は地球の月面を向いている方向はもちろん暗いままだけど、地球の輪郭部分は太陽からもたらされた赤い光で縁取られる様に赤く丸く輝くと考えられるの。」
「うわぁぁぁ・・黒い円を縁取る様に赤いリングが夜空に浮かぶ。こいつはなかなか見れない光景だな・・赤い月ばかり不吉呼ばわりしやがって。地球も大概じゃぁないか。空を見る前に自分たちの足元みやがれってんだよな。」
「まぁまぁ、皆既月食はとても珍しいイベントだから、そのうち月面旅行に行くのが普及してきたら月へ旅行ついでに見に来るのも面白いんじゃないかな？」
「ウチらからしたら日食なんだけどな。地に足つけてる側が地球か月かによって、見える事象や言葉が変わって来るのも面白いよな。」
「これは日本が世界からは極東って呼ばれて世界地図でも右端に置かれているけれど、日本から見たらアメリカ大陸は東(右端)にあるのと似た様な感じね。」
「宇宙から地球を見たらぐるぐる上も下もないんだけどな。」
「古今東西、人間は洋の東西との出会いやフロンティアの開拓によって似たような事例はいくつも経験しているわ。人類の住む環境の拡大も、過去の事例を今一度振り返ることによってどの様に社会が新たな時代に適応していったのか、そのヒントを探る事が出来ると思うの。」
「宇宙進出には理系だけでなく文系の知識も大切って事だな。」
「もしかしたら地球で見ることの出来る星々と、その他の星で見ることの出来る星々にはその動きや見え方に違いがあるのかもしれないわね。」
「月は地球の距離も38万kmで、お隣の火星との距離の7,500万kmと比べても全然近いのに日食や月食の見え方一つ取っても違うものな。こりゃぁ他の惑星への移住が進んだら文化のレベルからそれぞれに差が出て来るんだろう。」
「そんな違いを互いにシェアして皆で楽しむことの出来る未来が来るといいわね。地球と月の環境の違いと言えば、地形などの地理的な違いもあるわ。次回は月ならではの地形も紹介していくわね。」
「ムフフ、クレアに月面の地理を紹介できるのかなぁ？」
「く、詳しい事は月出身のリコちゃんお願いね。」
「あいよー。今回も最後まで見てくれてありがとうな。」
「それでは次回にお会いしましょう。」
「またなー。」
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