ずるずる1年不妊治療を休んだ結果、染色体の検査が出来るようになった。
前回は、何度、胚移植しても成功せず、何度かの流産も経験し、メンタルはボロボロ。肝臓もボロボロになっていたので、しばらく治療を休むと決めたところまででした。
ギリギリだった精神状態
今、振り返ってみても、本当にあの頃のメンタルはギリギリだったと思います。友人の出産祝いを買いに百貨店の子供服売り場に行けば、パニック発作を起こすのではないかと思うほど、動悸が激しくなる。(軽いパニック発作だったのかも。)エレベーターにベビーカーが乗ってきたら、居ても立っても居られず、私は自分の行きたい階でもないのに降りてしまう。SNSに溢れた「子供を授かりました!」「産まれました!」そんな投稿を見たくなくて、スクロールしなくなりました。
治療を休んでからは少しずつですが、そんな症状も治まっていきました。仕事も、それまで治療のためにずっと泣く泣くお断りしていた出張や長距離の移動を伴うものも、心置きなくやらせてもらいました。自分を取り戻していくようで、毎日が楽しかった。とはいえ妊活を完全に辞めたわけではなかったので、毎月タイミングはとってみたものの、一度も妊娠しませんでした。治療を休んでしばらくは、体が元に戻っていくようで、普通の生理が嬉しかった。妊娠しなかった・・・と落胆することのない普通の生理です。しかし、月日を重ねるごとに「やっぱり自然妊娠は無理なんだ」と思い知らせるような気がしてきて、このまま治療を休み続けても良いものか?という思いが湧いてきました。
治療再開のタイミング
気が付けば1年、休んでいました。その時38歳の冬。39歳になる年です。年齢的なタイムリミットも迫ってきている。冷凍保存している受精卵はあと4つ。治療は再開したくないけれど、休むことに罪悪感を覚えるようになったということは、今が再開すべき時なのかもしれない。
その頃、甥っ子(このnoteの甥っ子日記の主役)が、中学受験のため1週間我が家に滞在することになりました。甥っ子に「頑張る時は頑張らなくちゃいけない、負け癖つけたらだめ!」と言っておきながら、妊娠に許された残り少ない期間を考えると、まるで自分自身に言った言葉のようにも感じられて、私ももうひと頑張りしなくては!と覚悟が固まりました。
久々の通院で可能になった新たな免疫検査
久々のクリニック。しばらく休んでいたことを責められるかと覚悟していましたが、先生からは何も言われませんでした。もしかすると私のように、突然治療を休んで、またひょっこり再開する人が多いのかもしれませんね。ピルも飲まずに1年休んでいたので、心配していた腺筋症はエコー検査したところ、全く問題なし。ホルモン剤を投与していなかったので、悪化しなかったのかもしれません。
久々の通院だったので採血でホルモン状態などを検査します。それに加えて、新しい検査項目として免疫機能を調べることが出来るようになっていました。
人にはT細胞と呼ばれる免疫機能が備わっていて、異物が体内に侵入した時に攻撃してくれる大切な役割をになっているのですが、なんとその免疫機能が高すぎることがわかりました。免疫機能が高いということは風邪などは引きにくいので日常においては素晴らしいこと。しかし、妊活においては、免疫機能が高すぎると、受精卵を異物と誤認して攻撃し、流産させていたのかもしれない、というのです。通常、腎移植の後などに服用する免疫抑制剤タクロリムスを1日1錠服用することになりました。これが1錠1000円もするのです。1か月、この薬だけで3万円。はぁ~、本当お金がかかります。でも、もしかしたら私の不妊原因はこれだったのかもしれないわけです。原因特定となれば大きな進歩です。
着床前染色体異常の検査
不妊治療の世界は驚くべきスピードで次から次に新しい検査が出来るようになります。この1年の間に他にも様々な検査が可能になっていました。どれも驚くほど高額なのですが・・・。
まずはビタミンDの検査。最近の研究で妊娠にはビタミンDも必要だとわかってきたのだそう。採血で検査可能、数値が低ければサプリを取り入れるだけでOK。
そしてもう一つが着床前胚染色体数検査。受精卵を胚と呼ばれる状態まで培養し、その組織の一部を採取して、受精卵の染色体に異常がないかを検査するものです。この検査によって、あらかじめ染色体に異常のある受精卵を排除することができるので、着床率を上げたり、繰り返す胚移植の失敗や、流産による身体的・精神的なダメージを軽減することができます。流産になった胎児の染色体を調べると、その約70%が染色体異常が認められたという報告もあるそうです。
ちなみに染色体異常は女性の年齢でどんどん増えていきます。30歳では23%、35歳では35%、38歳で50%、41歳で70%、44歳で90%。高齢芸能人の妊娠や出産がニュースになる度に、まだまだいける!と勘違いしてしまいそうになりますが、この数字が現実なのです。いかに高齢で健康な子供を妊娠し出産できるかが奇跡なのかがわかりますよね。
これは私にとっては待ち望んでいた検査でした。これまで繰り返してきた移植の失敗や流産は、染色体異常のある卵ばかりを移植してきたからなのかもしれないのですから!流産の可能性も減らせれば、もうあんなに辛い思いをしなくて済むかもしれないのですから。
ただし、この検査は誰でも受けられるわけではありません。私のように胚移植を何度か失敗したり、夫婦のどちらかに染色体異常が認められていたり、反復流産の方が対象となります。(細かい基準は通院しているクリニックに確認してください。)また実施医療機関もまだ多くはないはずです。
費用もいくつの卵を検査するかによって異なりますが、数十万はかかります。採卵までに数十万、加えて染色体の検査まですると、移植するまでにあっという間に100万円くらい使ってしまう事になります。それでも、無駄な胚移植を避けられるかもしれないと考えたら(胚移植をするだけでも薬代も考えたら毎月10~15万円くらいかかるのです)、染色体検査の費用はペイできてしまうかもしれません。デメリットとしては、せっかくの受精卵が一つも移植に適切ではないという判断をされること。それまでの労力も費用も水の泡となってしまいます。
どんどん治療の技術は進んでいく
というわけで1年休んでいた間に、免疫機能の検査、ビタミンDの検査、着床前胚染色体数検査など、以前はできなかった検査を受けられるようになっていました。よって、費用は思っていたよりも一気にかかってしまいましたが、それまで着床が上手くいかなかった原因が、免疫機能か受精卵の染色体異常にあったかもしれないというところにまで絞ることが出来たのは大きな前進です。
染色体検査をすることに決めました。これまで辛かった自分の身体的・精神的な負担を少しでも減らしたかったからです。結果が出るまでに約1か月。残り4個のうち、一つでも良い卵がありますように。
2020年2月・コロナウィルス
検査結果が出たのは2020年2月下旬でした。4個のうち、移植できる卵は2つ。残りの2つは染色体異常が認められ、破棄になりました。
その頃から世界は新型コロナウィルスで大騒ぎになりました。不妊治療も「不要不急の不妊治療は控えるように」とお達しがありました。妊娠にタイムリミットのある不妊治療に不要不急って何なんだ?とも思いましたが、やはりせっかく妊娠したとしても治療法がはっきり確率されていないコロナウィルスに感染してしまったら、と考えると恐ろしくて、折角再開を決めて通院を始めたばかりでしたが、私も治療を見送ることにしました。
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