ふたりきりの夜に

初めてあなたの
指にぶつかる
あったかくって
雪の手のわたしが
触れてもいいですか

触れ方も
触れられ方も
忘れてしまったけれど
あなたとならば
それもいいかも

おたがいの
皮膚の温度で
季節の移ろいを知る
休日前の夜を
今日からひとり占めする

肩の上を
あなたの指が滑る
涼やかな空気と
皮膚の温度が混じる
今宵のプロローグ

柑橘系(シトラス)のわたしと
草木系(ハーブ)のあなた
違う香りを身につけた
ふたりの肌のあいだで
化学反応が始まる

あなたの太い指が
肩の上の布(レース)に触れる
なにをするのか
わからなくて
せつなく瞳を閉じる

闇夜に響く
風鈴の音(ね)は
夏の終わりと
秋の初めのあいさつ
並んで聞くわたしたち

肌のにおいも
皮膚の温度も
化学反応と言えるほどの
混ざり具合
ふたりきりの夜に

薄い膜ごしの理性も
痛覚の心配も
あなたが
初めてのこと
一緒に幸せにいられるかな

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