たまに自分の踊りを撮る。
撮ったものを色んな人に観てほしいと願う気持ちは少しはあるが、それよりも普段のレッスンで口先だけの先生に成り下がっていないかを確認する意味合いの方が強い。
レッスンの時は「先生モード」に自然と入るので昔取った杵柄だったり鍛冶場の馬鹿力みたいな現象に助けられてある種「騙し」で乗り切れる。
しかし、誰もいないスタジオで一人でカメラに向かうと嫌がおうにも不甲斐ない自分と向き合わなければならないので非常に辛い。誰も褒めてくれないし誰もダメ出しをしてくれない。頼りになるのはカメラの小さなモニターに映し出されている現実のみ。頭の中での理想像とかけ離れた現実に溜息をつきながら凹んでいる暇など無いからひたすら何度も踊って何度も撮る。
不思議なもので箸にも棒にも状態だったものが次第に少しはマシになっていく。図らずしてハッとするような出来栄えの部分があったりもする。そんな事を励みに疲れて駄々を捏ね始める身体を宥めすかして踊る。正直な所、楽しくはない。だが、もしこれが他人との共同作業であったらどうなのか?と妄想し、架空のデュエットや群舞を踊っているつもりで一緒に踊る同志に迷惑をかけないように尽くす。
そうやって嫌々ながら創ったものは名作には成り得ないが意外と飽きずに何度も観たいと思ってしまうものになったりする。
愛着よりも戒めの気分で。
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