国会で居眠りしててもいいみたい

先日、日テレが煽りで目を引きたい感満載の見出しをつけた記事をYahooに投稿した。
 
『林外相が国会対応でG20欠席…答弁たった“53秒” 「日本の信じられない対応にインド衝撃」』
 
Page Viewを増やすことに貢献したくはないのでURLは記載しないことにした。
 
こういう記事は本当なら無視して話題に上げない方が良いのかも知れない。
 
だから僕がそれについてnoteで書くこともあまり良くないことかも知れない。
 
しかしおかしいことをおかしいと言わないのも良くないのではないか?
 
迷った末に書くことにした記事だから、もし皆さんが思うところがあれば僕のnoteはここで閉じて『どうする家康』を見に行っていただければ幸いだ。


率直に言って林芳正外務大臣が国会に出席するためにG20を欠席したことは問題でも何でもない。
 
G20には林さんの代わりに山田賢司外務副大臣がちゃんと出席していたのだ。
 
……にも関わらず何故問題視されるのだろうか?
 
副のつく職業でいえば、アメリカの副大統領は大統領が亡くなった時に代わりに大統領に就任することだってある。
 
日本の副大臣はというと、副大臣は大臣の職務を代行でき、政策決定にかかわり、国会答弁も担当するそうだからやはり大臣に次ぐ重要職であり、大臣の代役を務められる有能な人物が任ぜられなければならないことは明白だろう。
 
林さんの代わりに山田さんがG20に出席したことを問題視するということは山田さんに対してもの凄く失礼な行為だ。
 
いつだったか、選挙で落選した人に対して「ご愁傷様です」と言う行為が批判されたことがあったが、あれが無礼だと批判されたのに山田さんがG20に出席したことを問題視する行為がまかり通るのならもはや日テレのご都合線引きとしか言いようがないだろう。
 
すなわち「日本の信じられない対応にインド衝撃」等という見出しをつけたということは、「インドは林さんと比べて山田さんを軽んじている」と言っているに他ならないわけだからインドに対しても恐ろしく無礼だと言わざるを得ない。
 
インド人の記者の中から日本の対応に対して批判的なことを言っている人だけを抽出して「インド衝撃」という見出しをつけたのなら論外だし、「林さんは出席出来るのに出席しなかった」等とインド人に吹聴して回ってインド人から批判的な発言を引き出したのならむしろそれこそが日本の立場を危うくする行為だ。
 
万が一本当に「林さんではなく山田さんが来たのはおかしい」とインドで思われていたのだとしてもそれなら日本は「山田さんでは不満ですか?その発想は山田さんに対して失礼ではありませんか?」と毅然とした対応を取らなければならないだろう。
 
そうでなければ日本はずっと外国に対して下に出なければならないことになる。
 
さらに言えば「53秒間の答弁のためにG20を欠席」というのもおかしい。
 
「53秒」等と言っているが、それはあくまでも林さんが答弁に立った時間のことであり、その日の国会全体の時間ではない。
 
まさかとは思うが、日テレは「国会では答弁している時間以外はどうでもいい」とでも言うつもりなのだろうか?
 
そうだとしたら国会議員は「自分は答弁に立たない」という理由で国会に出席しないこともOKだし、自分が答弁に立つ時以外は居眠りしていても構わないということになってしまうのだ。
 
国会は予算案を承認したり新しい法律を作るための議論をする極めて重要な場だ。
 
従って国会議員は自分が答弁している時間以外の聞く時間だって重要視しなければならないはずなのに「答弁たった“53秒”」等と言うということは、日テレは国会議員の聞く時間のことは蔑ろにしているとしか言いようがない。
 
国会で中身のないくだらない話やしょうもない議論がされていたり、居眠りしている議員がいたり出席しようとしない議員がいるのならそれを批判し、国会だってG20と同じくらい重要な場だと言うべきなのに日テレがやったのは国会をG20と比べて蔑ろにし、さらには大臣と比べて副大臣の立場は軽んじるという行為だった。
 
少なくとも『林外相が国会対応でG20欠席…答弁たった“53秒” 「日本の信じられない対応にインド衝撃」』という記事に関しては全く日テレを擁護することは出来ないのだが、残念ながら日テレのこの記事は紛れもなく僕等視聴者の鏡だったようだ。
 
Yahooに掲載された『林外相が国会対応でG20欠席…答弁たった“53秒” 「日本の信じられない対応にインド衝撃」』のコメント欄を見てみると、林さんの代わりに山田さんがG20に出席したことに対して「インドのメンツをつぶす」だの「日本をダメにする」だの理不尽な批判が次々と……

以前の記事で僕はこう書いている。

 本当に「“視聴率”が取れる」のなら視聴者である僕等のような無名人の責任もまた重い。
質の悪いワイドショーや迷惑系や炎上系の連中に対して需要があるかのような振る舞いをしてしまう僕等にも責任はあるのだ。
 
……と。
 
今回、日テレの記事に同調するようなコメントが多かったということはより僕等の責任は重いということになる。
 
さらに僕等国民の姿勢は国会議員にも反映されているらしい。
 
小野寺元防衛大臣は林さんに対して「53秒の答弁のため、G20を欠席せざるを得なかった林座長のほうから、ご挨拶をお願いいたします」等と揶揄したそうだ。
 
答弁に使った53秒以外の聞く時間について全く考慮されていない。
 
麻生副総裁は「G20っていうU国の話をやる外務大臣会合に出られないというのは、国会論議を理由にというのは、私どもとしては考えなきゃいかんなというのが実感です」と発言したそうである。
 
国会論議はG20と比べて重要ではないと思われているのだとしたら、僕としては考えなきゃいかんなというのが実感です。
 
日本維新の会の馬場代表は「G20の国際会議とてんびんにかけられて、予算委員会が上回ったという結果ですから、政府・自民党がその程度のこととしか考えていないんだろうなという証明になる」と……。
 
馬場さんが予算委員会をG20とてんびんにかけてその程度のこととしか考えていないんだろうなという証明になるし、林さんと山田さんをてんびんにかけて山田さんを軽んじているんだろうなという証明になる。
 
国会議員のこういった声には幻滅を禁じ得ないかも知れないが、これらもまた僕等の鏡だということなのだろう。
 
僕等が大臣と比べて副大臣を低く見たりG20と比べて国会を低く見たりすれば、それらは報道や政治に反映されてしまうということがお分かり頂けると思う。
 
SNSで岸田総理が中国への投資をしようとしていることに対して苦言を呈する声を見かけたのだが、今回インドに対して「山田さんでは不満ですか?その発想は山田さんに対して失礼ではありませんか?」と毅然とした対応を取るべきだという声が国民からあまり出なかったということは日本が外国に対して下に出なければならないことを肯定したことになるから、岸田さんのそれもやはり国民の声なき声を反映した行為だと言えるだろう。声なき声は非常に反映されやすいのだ。
 
今回の件を受けて僕等は副大臣を大臣と比べて軽んじてはならないということ、国会は国際会議と同じくらい重要な場であること、そして自分達の姿勢は紛れもなく政治や報道に反映されるのだということを再認識する必要があるようだ。
 
……だけどこの記事を見た人が日テレの件の記事を見に行っちゃったら、僕の思惑は大外れということになっちゃうんだけどね……(汗)

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