田舎のスーパーで“300円チャレンジ”やってみた

いきなり“300円チャレンジ”なんて言うと読んで下さっている皆さんも「?」となるだろうからまずは何のことなのかを述べさせて頂きたい。
 
僕(88世代)と同世代の方だと、保育園(もしくは幼稚園)や小学校の遠足で「持ってきていいおやつは何円以内」というようなことを言われたことがあるという方も多いのではないだろうか?
 
20年以上前の『クレヨンしんちゃん』のエピソードで『遠足のおやつを買うゾ』というお話があったのだが、このお話の中でもしんちゃん達の担任の吉永先生が「おやつは300円まで」と言っている。
 
ちなみに当初吉永先生は「税込で300円以内」にするつもりだったのだが、風間君に言い負かされて結局「税抜きで300円以内(税込なら当時は消費税率5%だったので315円以内)」に変更せざるを得なくなり、「日本の政治家のバカヤロー!」と叫んだのだった。
 
現在なら税抜きで300円となると、今なら食品であるおやつの消費税率は8%(ただしお菓子の包装の中にカードやシールなんかが入っていると食品単体とは見なされずに10%になることもあるけど……)だから一部の例外となる商品を買わなければ税込価格は324円になるだろう。
 
……ところで、去年の今頃だったがこのエピソードに関して「今考えてみると、おやつ300円台までにするのって結構絞られますよね」という指摘があった。
 
確かに正規の値段でおやつを買おうとすると、300円以内で買えるものはかなり限られる。……はずだが、佐賀の田舎のスーパーでお買い得品を買うとなると話は別になる。
 
そう思った僕は実際に300円以内でどれくらいおやつが買えるかを試してみる、“300円チャレンジ”をやってみることにした。
 
こちらは去年の今頃に佐賀のあるスーパーで“300円チャレンジ”をやってみた結果だ。

とら焼き(どら焼き?)99円
アルフォート69円
かっぱえびせん69円
フルーツオレ49円
合計286円
 
上記を見て「税抜き価格?」と思われた方もいらっしゃるだろうけど、実はこれ税込価格だ。
 
「安っ!羨ましい!」と思われた方もいらっしゃるだろうけど、以前の記事で書いた佐賀県の最低賃金を思い出して頂けるだろうか?

要するに最低賃金が853円(上記の買い物をした当時は821円)と低い県だからこれくらい安売りしないとおやつが売れない。買う側にとってはありがたいのだが、店側にとっては相当のやり繰りが必要ということになる。
 
バイリンガールちかさんが10年以上前にこう指摘されているのだが、まさに佐賀県は賃金が低いために余計価格競争が激しくなっていたのだ。

酪農家の視点に立った「牛乳を通常価格に戻して下さい」というCMが以前放送されていたことがあるのだが、確かに価格競争が激しくなりすぎると生産者側に大きな負担がかかってしまう。
 
フジテレビの『奇跡体験!アンビリバボー』で以前『下仁田納豆』が特集されたことがあったが、その再現VTRの中で『下仁田納豆』の経営者である南都(旧姓:伊藤)隆道さんは1個70円の納豆をなかなかスーパーに置いてもらえなかったことで「値下げするしかないのだろうか」と口にしたことがあった。
 
しかし、隆道さんの相談を聞いた『もぎ豆腐店』の茂木稔さんは「値下げ」というワードを聞いた瞬間に激怒したという。
 
そして茂木さんは「自身が使用している大豆で自分の納得がいく納豆を作って持ってこい」と、自分の店で使っている良質な大豆を仕入れ値と同じ値段で隆道さんに売ってくれた。
 
良質な大豆を使い、且つ試作を重ねて製造方法にとことん拘った分、大変質の良い納豆が出来上がったが、大豆が高価な分納豆の値段も高くなる。
 
隆道さんが算出した納豆の値段は1個270円だった。
 
すると茂木さんはその値段で納豆を引き取ってくれ、自分の店、『もぎ豆腐店』でそのままの値段で売ってくれたのだった。
 
その取引が1年ほど続いた後、茂木さんは隆道さんに「これからは、自分で豆を仕入れて、自分で売ってみろ」と、取引の中止を申し出た。
 
『もぎ豆腐店』に来る客は1個300円する良質な豆腐を買うような舌の肥えた客だった。……ということは、270円の良質な納豆を販売するには舌の肥えた客が来る店に置いてもらう必要があった。
 
隆道さんはそういった客が来るであろう百貨店を訪れたのだが、百貨店側は試食もせずに取引を開始してくれたのだという。
 
実はそれまで『下仁田納豆』と取引をしていた『もぎ豆腐店』の茂木さんが隆道さんから買い取った納豆の一部をサンプルとして百貨店をはじめとする店舗に渡したり送ったりして、「近いうちに若い奴が売り込みに来るので、よろしければ……」と声をかけていたことで百貨店側は良質な納豆の取引に応じたのだった。
 
茂木さんはかつて『もぎ豆腐店』で製造していた豆腐の大半を納品していた会社から取引をやめると通達され、困っていたことがあった。
 
そんな時、茂木さんは付き合いのあった農家や知り合いの販売コンサルタントから「本当に美味しい豆腐を作るという夢を叶える良いチャンスではないのか?困ったことがあれば、いつでも相談に乗ってやるからよ」、「お前がこれだと思う材料で豆腐を作って、それに見合う値段をつけて、自分で売ってみろ。困ったらいつでも相談に乗ってやるから」と助言を受け、試行錯誤を繰り返しながら『滑らかで旨い豆腐』を作ることに成功した。
 
そして豆腐が出来上がると、農家を営む男性は自分の作物も卸している百貨店のバイヤーを紹介してくれ、茂木さんが作った『三之助とうふ』は百貨店で販売されるようになり、多くのファンを獲得したのだという。
 
そして茂木さんは自分が受けた恩を今度は『下仁田納豆』の隆道さんに送ったのだった。
 
「仕事は自信と誇りと情熱を持ってやる、それが重要だという事を教わりました。茂木さんからして頂いたことを、次の世代に繋げていく事が茂木さんに対する恩返しだと思います。恩返しよりも恩送りということが真実だと思います。」
 
隆道さんはそう語ったそうだ。
 
その他、詳しいことは『奇跡体験!アンビリバボー』の関連記事で見られるだろうから割愛させて頂くが、このエピソードから学ぶべきことは多いだろう。
 
売れるようにするための安売りを否定するわけではない。現に『下仁田納豆』では現在高級な納豆だけでなく、3個入りで300円の比較的手頃な値段の納豆など、いくつもの商品を用意し、販売しているのだ。
 
しかし、値下げすることにばかり拘るとやはり生産者側や店側への負担は大きくなる。
 
『下仁田納豆』の南都隆道さんが言ったように生産者は仕事は自信と誇りと情熱を持ってやっているだろうから、生産者が作った物に見合った値段をつけ、消費者側は極力その見合った値段で購入するという形をとっていく必要があるのではないだろうか?
 
正直に言ってしまうと僕も適正価格を大幅に下回るような安価な物ばかり買ってしまうことが未だに多いので耳が痛い所である。販売する側だけでなく消費者側も気をつけて「war」だけに「peace」に変えて行かなければならない。
 
まあ、佐賀県だと賃金が低いから、お店に行って通常価格の商品を見て「高いな」と感じるようなことがあったら「もうちょっと安ければ」ではなくて「お店に愚痴るな!通常価格で買うのがきついなら通常価格でも問題なく買えるように最低賃金の引き上げを県に要請せんかい!」とならなければならないのだが……。
 
ちなみに原材料価格の高騰により物が値上がりというニュースをよく聞くので、今は300円でどれくらいのおやつが買えるだろうかと思ったことから僕は今年の2月1日に再び去年と同じスーパーで“300円チャレンジ”をやってみた。
 
結果は……

どら焼き(『とら焼き』とは別)89円
ロールケーキ79円
ラムネ75円
ストロベリーオレ(フルーツオレと同じ価格で)55円
計298円
 
324円以内という形を取れば去年と同じ品物を買えたのだが、去年は消費税込みで300円以内の商品を買ったので、今回も消費税込みで300円以内にしようと思い去年買ったのとは違う品物を選ばせて頂いている。
 
……まあ、要するに安売りには限界があるのだ。
 
それに、フルーツオレ、ストロベリーオレ系は6円値上がりしたと言ってもまだ安い。
 
店側が値上げせざるを得ない状況なら、まさに今こそ先程言った「お店に愚痴るな!通常価格で買うのがきついなら通常価格でも問題なく買えるように最低賃金の引き上げを県に要請せんかい!」とならなければならないということなのだろう。
 
……とはいえ、去年の10月に最低賃金がやっとこさっとこ853円に上がった佐賀県でこの後すぐまた賃金の引き上げは難しいかも知れないから、少しずつでも最低賃金を引き上げてもらって、その上で生産者や店が困ることのない通常価格で商品を買うことが問題なく出来るようにしていくことが重要だ。
 
僕は88世代なのだが、せめて僕等の子供世代(←否、僕は独身で子供は居ないからこの表現はおかしいかも知れないが……)が社会人になる頃には、生産者や店が困ることのない通常価格での販売が一般的になり、且つ最低賃金が通常価格での商品の購入を問題なく出来るだけの金額になるようにしていかなければならないだろう。
 
……え?むしろ“300円チャレンジ”なら安売りされているものではなく適正価格で300円以内の物を買った方が良いんじゃないかって?
 
……失礼しました(汗)

2/14追記

去年と同じ商品を買った場合はいくらになるかも出させて頂きます。


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