被害者は嘘を言っていないのに…

皆さん、遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
 
去年は自分のモチベーションが下がってしまったり忙しくなったりでなかなかnoteを更新出来ず申し訳ありませんでした。
 
今年も更新の頻度は低めになりそうではありますが、社会と向き合い自身の理解を深めていくために出来ることはしっかりやっていきたいと思います。
 
さて、それでは新年1回目の更新では僕が好きなエンターテイメントから学べることを書いていきたいと思います。
 
 
 
今年もYouTubeではアニメ『名探偵コナン』の再公開が始まった。
 
普段は非公開となっている2話目の『社長令嬢誘拐事件』も今月の10日まで公開されるようだから興味がある方には是非見て頂きたいのだが、今回はこの2話目で誘拐された社長令嬢の谷晶子ちゃんの証言にスポットを当てて考えてみたい。
 
誘拐犯が晶子ちゃんの父である谷社長に電話で身代金を要求した際、晶子ちゃんは電話口で社長に助けを求めると共に自分が今いる場所についてこう証言した。
 
「窓から大きな煙突が見える学校の倉庫」
 
これを聞いたコナン君は谷家の番犬ジャンボと共に煙突が見える学校を探したのだが、谷家の近辺にあった学校を調べても晶子ちゃんの証言と一致する場所はなかった。
 
誘拐犯が晶子ちゃんを監禁している場所は谷家の近辺ではないのか?
 
そう思い始めたコナン君だったが、高層ビルを見つけた時に「もしかしたら」とあることを考えついたのだった。
 
前から見ると窓の明かりが見えるビルだったが、そのビルの横側には窓がなく、夜に遠くから見るとビルはまるで煙突のように見えたのだ。
 
そしてビルが煙突のように見える場所には学校があった。
 
こうしてコナン君は見事に晶子ちゃんの監禁場所を突き止めたのだった。
 
そうでないものがそれっぽく見える。
 
これはサスペンスという創作物ならではの表現だと思ってしまいがちだがこういった事例は実社会でも十分に起こり得る……否、正確に言えば既に起きているのだ。
 
周防正行監督が映画『それでもボクはやってない』のメガホンをとった際には実際に起きた痴漢冤罪事件のいくつかを参考にしたのだそうだが、その中の1つと思われる西武新宿線第3事件では痴漢に遭った被害者が犯人と思って捕まえた人物Aさんは……もうお分かり頂けるだろうとは思うが冤罪だった。
 
この事件についてはフジテレビ系列の『奇跡体験!アンビリバボー』でも特集されていたから知っている方も多いのではないだろうか?
 
痴漢の被害者の証言はおおまかにはこうだったそうだ。
 
「お尻を触られた時に後ろにいた2人の乗客の内1人は女性だったのでもう1人の乗客が犯人だろうと思った」
「1度犯人の手を掴んだが振り払われて逃げられたので再度捕まえた」
「Aさんが腕時計をはめていたかどうかは覚えていない」
 
Aさんは実際には冤罪だったわけだが、Aさんが仮に本当に犯人だったとしても冤罪だったとしても被害者の上記の証言に嘘はないことがお分かり頂けるだろう。
 
そしてこの時点では推定無罪が原則だから警察や検察がきちんと捜査を行えばAさんの無実を早い段階で証明出来た可能性があるばかりでなく、真犯人を逮捕することが出来た可能性も十分に考えられるのだ。
 
だが、警察がやったことは……
 
①  Aさんが犯人だと思ったという被害者の証言を鵜呑みにし、さらに真犯人ではないかと思われる人物には犯行が不可能であるかのように被害者の証言を誘導した。
②  一般人が持ち得ない警棒や拳銃を持ったままで犯行現場の再現実験を行った
③  Aさんがはめていた腕時計に関して被害者は覚えていないと証言していたため、逮捕時にAさんが時計をはめていたことを踏まえればAさんが無実である可能性をすぐに考えられるはずなのだがAさんの取り調べを担当した警部補は逮捕時にAさんが時計をはめていたことについて裁判では「覚えていない」の一点張り
④  Aさんが痴漢の犯人であれば被害者のお尻を触った際に手に被害者の衣服の繊維片が付着していた可能性があったにも関わらずそれを調べていなかった
 
『それでもボクはやってない』は創作物だろうと思っていたら実際の事件でも呆れるほどずさんな捜査が行われていたようである。
 
西武新宿線第3事件についての記事を読んでみたら冤罪事件の発生原因について「被害者による犯人の取り違い」と書かれていたのだが、個人的にはそれは違うのではないかと思っている。
 
真犯人を逃がしてしまったことやAさんが誤認逮捕されたこと自体については被害者による犯人の取り違いを原因の1つとして考えることも可能だが、その後Aさんが犯人であるかのように仕立て上げられた上に第1審で有罪判決を出されてしまっていることを踏まえると冤罪事件の発生原因は警察のずさんな捜査であり、捜査に疑いを持たなかった検察、そして裁判官の責任であることを指摘しなければならないのではないだろうか?
 
コナン君のように被害者がどんな環境下にいて証言をしたのかをきちんと考慮した捜査を警察がやれば冤罪事件の発生率は今よりもずっと少なくなるのではないだろうか?
 
ちなみに西武新宿線第3事件にスポットを当てると冤罪事件を引き起こしたのは警察であり検察や裁判官の責任が問われることになるが、スマイリーキクチさん中傷事件やガラケー女事件にスポットを当てるとどうなるだろうか?
 
もっと言えば草津ヘイトについても完全にSNSの利用者の身勝手なエセ正義が原因で発生したと言って良いのではないだろうか?
 
僕もまたSNSの利用者の1人だ。
 
従って僕等は被害者が嘘を言っていないのに自分達の先走りや思い上がりで誤報を出してしまうことがないよう、コナン君を見習わなくてはならないと考えている。

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