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人手不足に悩む職場で、人に定着していただくには⑤(完)

会社としてできることは何か

このテーマについて前回までは「個人」の視点で考えてきましたが、最後は「会社」の視点で考えてみたいと思います。

第1回の記事で人が不本意な形で流出してしまう職場を特定し、職場ごとに対策を行う必要があると述べましたが、会社としてはバケツの穴を塞いでも肝心な人が入ってこないといつまでも人手不足に悩まされ続けるため、「如何に辞めさせないか」に加えて「如何に来ていただくか」も重要な課題になるかと思います。

とはいえ、人手不足に悩む会社はどうしてもネガティブなイメージが先行してしまうが多いため、採用にも苦労しているのが現実です。

そこで、魅力的な職場をアピールしたテレビコマーシャルを流すなど、職場としての自社のイメージ向上に取り組んでいる会社もありますが、いくらお金をかけて自社のイメージを上げようとしても、今のご時世ネガティブな情報はすぐに拡散してしまいますので、実態が伴わないまま「魅力的な職場」をアピールすればするほど、中にいる人たちが「そんなの嘘だ!」と言い出し、かえって逆効果になってしまいます。

結局のところ、新しい人に来ていただくためには、今働いている人を大事にするしか方法はないと思います。

では今働いている人を大事にするためには何ができるのか?
8年ほど前に中国で聞いたある地方スーパーの話を紹介したいと思います。
(ちなみにこの話を教えてくれたのは中国でも従業員のロイヤリティが高くて有名な火鍋チェーン「海底撈(ハイディラオ)」の出身者です)

私は行ったことはないのですが、中国の河南省許昌市(三国志好きにはピンとくるかもしれません)には「胖東来」という地元のスーパーがありました。
今は諸般の事情でほとんどの店舗が閉店してしまったそうですが、当時は地元での評判が高く、働きたいという人が後を絶たないほど人気のあるスーパーであり、最盛期は7000人の従業員を抱えていました。

待遇は同業他社よりも良かったそうですが、一番印象の残ったのは「横断歩道で信号を守る人(赤信号で渡らない人)を見かけたら、それは胖東来の従業員だ」という話でした。

もちろん数千人も従業員が居ればいろいろな人がいるので誇張されたところはありますが、信号無視が当たり前の中国(しかも地方都市)で外部からそのようなイメージを持たれていることが意外でした。(中国では「スーパーの従業員」はそれほど社会的地位の高い職業ではないため、最初から教養レベルの高い人が働いていたということではありません)

それでも「胖東来の従業員はモラルが高い」というイメージが社会に広まったため、「胖東来で働きたい」という人が増え、結果的に好循環が回っていました。

聞けば「胖東来」の従業員がこれほど高いモラルを持つようになったのは「教育」であり、実務面の教育のみならず、人間的な成長につながる教育を重視していたとのことでした。

スーパーの従業員にとって、自分の仕事はただのレジ打ちであったり、商品棚の陳列という認識を持つ人もいるかもしれませんが、「社会にとって必要な仕事であり、社会からも見られている」という意識を持たせることで、強制されたから信号を守るのではなく、自分自身の仕事に誇りを持っているから信号を守るという行動につながります。

このことから、「今働いている人を大事にする」ということは、教育を通じて自社の従業員が会社や社会にとってどんな価値をもたらしたのか伝えてあげることで、「今働いている人が仕事に誇りと喜びを見出せるようにする」ことではないかと思います。

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ここまでの話をまとめると、きれいごとかもしれませんが、社員を「労働力」ではなく、「人」として扱うことが人に定着していただくうえで最も重要であると言えます。

「人」だからこそミスも失敗もするし、未熟なところもあります。
だからこそ、「人」として成長できるようにするための教育が大事ではないでしょうか。

今回のシリーズも最後までお読みいただきありがとうございました。

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