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「Light it up blue 川越 特別セミナー」

4月2日から8日まで発達障害啓発週間です。

4月3日、ウェスタ川越にて
Light it up blue 川越
2021年世界自閉症啓発デー
発達障害啓発週間
特別セミナーが開催されました。
(主催:Light it up blue 川越実行委員会 NPO法人チューリップ元気の会 後援:川越市)

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今年はコロナ禍ということで、パレードやイベントはありませんでした。その分中身の濃いセミナーだったと思います。

川合市長の挨拶から始まった特別セミナーのテーマは「障害のある方の福祉と防災 平時に備える」
第一部は、社会福祉法人けやきの郷の理事長阿部叔子様と総務部長内山智裕様のお話でした。

89歳で現役である阿部理事長のお話は、たいへん迫力あるものでした。

けやきの郷は、2019年10月の台風19号で甚大な水害に遭われました。
けやきの郷近くの越辺川の堤防が決壊。16施設のうち15施設が水害に遭い、入所施設「初雁の家」とグループホームの一階は全て浸水し、被害4億円の被害だったということです。
そして、利用者さんとスタッフさんは、翌年の3月末まで不自由な避難生活を余儀なくされたのでした。

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⬆️配布資料より

けやきの郷法人設立は、1984年。最初の施設である「初雁の家」の開所は1985年です。
この「初雁の家」は川に囲まれた土地にあります。川越市の「水害ハザードマップ」では「浸水想定区域」(浸水が最も懸念される場所)になっています。

なぜ、このような場所に「初雁の家」が建設されたのでしょうか?
それは、「自閉症に対する無理解•差別によって」と言えるのでは…ということです。

けやきの郷は、義務教育終了後に適切な療育の場を求めて、自閉症のある子たちの親たちが設立しました。(全国で2番目、東日本では最初)
施設建設の地を求めるなか、発起人たちは何度も何度も地域住民から反対されて、候補地も何度も変わりました。
ある地域では、同意書撤回から始まる反対運動が起こりました。理解を求めて、説明会を何度も開き、1500戸を一戸ずつ訪問して回ったそうです。
そんななか、「障害者施設はゴミ捨て場と同じ迷惑施設だ」など、偏見と差別の言葉をぶつけられたり、地域の公衆トイレの鍵を閉められてしまったり、悲しく悔しい思いをされたのでした。

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⬆️配布資料(NHKのアーカイブ)より

やっと見つかった土地は、県からあっせんされた土地でした。
半径300m以内に一戸も住宅がない土地。
建設直前に、かつて水害があった地域だと近く農家から聞き、1.5mの土盛りをしたそうです。
それでも、その後、1999年と2019年の二度も、浸水被害に遭ってしまうことになりました。
さらに、グループホームの高齢化した利用者さんのために建設を予定していた「高齢化対応グループホーム」の工事開始直前に建設予定地が完遂し、計画が挫折。
水害が歴史と財産と未来を奪ってしまった…と、阿部理事長は訴えていらっしゃいました。

台風19号による甚大な水害に遭いながらも、けやきの郷の利用者さんとスタッフ、全員助かりました。
しかし、避難先では苦労が待ち受けていました。福祉避難所が開設されなかったため、避難先を何度か変えることに。
最終的に川越市福祉総合センターオアシスの体育館が避難先となりました。

自閉症の人にとって、環境の変化はかなりのストレスになります。住み慣れた場所でいつもどおりの日課で過ごすことが心身の安定につながる彼らにとって、避難生活がいかに困難であったか。
また、彼らを支援するスタッフの方々のご苦労も相当なものであったはずです。

勤務先である事業所のすぐ近くにも新河岸川が流れています。2019年10月の台風19号では、水位がかなり上がっていました。もし、入所施設であったら、夜勤者は眠れぬ夜を過ごしていたことでしょう。

職場の利用者さんやスタッフも、義援金募金活動や復旧作業のボランティアに参加しました。それから約一年半の月日が流れましたが、けやきの郷の利用者さんやスタッフの方々にとって、まだまだ安心•安全の確保が十分とは言えないでしょう。
いつ、また水害に遭うかもしれないという土地に施設があるのですから。

けやきの郷エリアは、県にあっせんされた土地であり、それは人々が自閉症に対して偏見や差別から施設建設を反対したから、選択の自由がなかったのだ…
そんな悲しい歴史を知り、障害福祉に携わる者として(また、障害ある子の母として)理解し合い、共に生きるための課題はまだまだ山積みなのだと身に染みる思いがしました。

阿部理事長は
「灯火を灯す者の役目。障害ある人にとって安全なら、全ての人にとって安全なのです」
と結びました。

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⬆️最明寺(川越市)

Light it up blue
癒しと希望の青い灯火は、自閉症など発達障害のある人のみならず、全ての人のために灯されているとも言えますね。


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