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「頑張っていますね!」

職場である障害福祉サービスの事業所は、就労継続支援と生活介護サービスを実施しています。

昨年の秋と今年の秋、生活介護グループでは、肢体不自由特別支援学校の生徒さんの実習受け入れをしました。

食事や排泄などのケアについて、特別な配慮を必要とするため、生徒さんによっては、担任の先生と保護者様(お母様)の付き添いをお願いしていました。

実習を受け入れる事業所側としては、お母様が付き添ってくださるのは、心強く、安心します。

でも、お母様にとって…我が子のためとは言え、決して楽なことではありません。それでも、笑顔で付き添っていただき、頭が下がる思いです。

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障害ある子の育児とは無縁の人にとって…高校生になった我が子の実習先に、数時間一緒にいることは、想像しにくいことでしょう。そうした話を聞くと「大変ねぇ」と思うかもしれません。

私自身、我が子は特別支援学校に通う子で、知的障害があり、かなり多動です。普通の保育園・幼稚園を利用できず、母子で通う療育専門施設に通っていた時期がありました。

それは、確かに大変な日々でもありましたが…周囲の人に気の毒そうな表情で「大変ねぇ」と言われると、何とも複雑な心境になりました。

なぜ、複雑な心境になったのか?

「大変ねぇ」の言葉の裏側に「うちはそうでなくて良かった」という心情を読み取っていたのかもしれません。

障害ある子を育てるのは、大変なのは事実。でも、嫌々、我が子を育てているわけではない。苦労をしていたとしても、それは日常。憐みの言葉はかけて欲しくない…

「大変ねぇ」ではなく、「頑張っていますね!」と言って欲しかったのだと気づきました。

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息子が2歳〜3歳にかけて通っていた「心身障害児総合医療療育センター」には、バギーに乗った肢体不自由のお子さんたちも多く通う病院でした。

我が家からは、電車利用でも車利用でも、片道30分程度で行ける距離でした。しかし、肢体不自由のお子さんとそのご家族は、他県からも通われているケースも多いようでした。

うちの息子は、多動で、追いかけ回すのに、日々苦労していましたが…その病院でバギーに乗ったお子さんたちを見かけると、全く種類の異なる大変さを抱えているのだと想像できました。

ある日、ある小さなお子さんの姿を見て、一瞬目を背けてしまうことがありました。

言葉が不適切かもしれませんが、生まれたての赤ちゃんくらいのサイズで、見た目が「胎児」のようだったのです。

私は、少し動揺してしまいましたが…そのお子さんの近くにいた二人の女性はにこやかに談笑していました。

お母さんと保育士さん?それとも、保育士さんと看護師さん?

二人の女性がそのお子さんとどのような関係かわかりませんでしたが、その二人がごく自然に談笑している姿を見て、私の動揺は落ち着き、安心感に変わりました。

多くの人は、そのお子さんの姿に動揺してしまい、その存在を拒絶する人もいるかもしれません。

でも、その存在を受け入れ、「当たり前」として、共に過ごしている人がいる事実に、私はほっとして、希望を感じたのでした。

あの子も頑張って生きている。それを支える人がいる。私も息子と共に頑張って生きて行こう!

そんな勇気もいただいたような気がしました。

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数年の月日を経て…仕事を通して、再び、手足に不自由があっても、頑張って生きているお子さんたちやそのお母さんたちと出会うことができました。

引率の担任の先生方も、穏やかであったかいハートの方々のように感じました。

「頑張っていますね!」「私も頑張りますね」

(実習の直接の担当者ではなかったので)心の中で呟いてみました。










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