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お金が私に教えてくれたこと

私の父は、私が20代の頃に事業に失敗した。
地元ではちょっと名のある会社で、高校生まで裕福な暮らしをしていたものだからその反動は大きく、生活が一変した。
そのことで、留学半ばで日本に急遽戻され、仕事をしながら家事もしていたため、ひたすら家と仕事の往復の日々が始まった。
20代半ばの女の子には、やはり負担の多い金額を毎月実家に入れていたものだから、周りの友達がファッションや旅行に自由になるお金を使って、自分に投資しているのを横目に、私は我慢しなくてはならなかったのは結構虚しかった。旅行に誘われても行かれなかったので、時々心ない言葉も浴びせられた。
結局結婚するまで実家を出ることもできず、留学から戻されてからは海外旅行をしたこともなかったし、徐々に欲というものを忘れていったようにも思う。

事業が傾いてからというもの、もともと派手だった母は数年間にわたる極度な節約生活のせいで精神を病み、途中でタコの糸が切れたように買い物依存症へと走ってしまった。そこでまた借金が増え、私と姉はその後処理に自分たちの稼いだお金が消えていった。
仕方がないことと思う反面、若い時に若い人が通る華やかな道を通れないまま、さらに父の仕事の立て直しに私は家業に送り込まれた。
会社では残業手当のつかない日々の中、ひたすら仕事の立て直しで年月だけが経っていく。父はワンマンな男だったので、指摘をされることを大いに嫌い、仕事について何度となく衝突をした。
しかし父のやり方では、会社がよくならないことはわかっていたものだから、数年間修羅場とかした。

そうして、長い歳月をかけて事業は信頼と売上の回復を徐々に取り戻す兆しが見えると、大震災やリーマンショックのたびに伸び悩んだ。そして今回のパンデミックが追い討ちをかける。
人生とはこうも物事がうまく行かないものかと呆れ果てたが、笑顔を失うことはしなかった。

しかし、ある日仕事が突然うまく回り出した。これは神からのご褒美なのか?長い間の苦労から掬い上げてくれたのだろうか?そんなふうに思えるほど、仕事の依頼が来た。父の代から一緒に仕事をしていたスタッフが定年退職をし、新しいメンバーに入れ替わったことが大きな要因だったのかもしれない。仕事が面白いように入り、どんどんと売り上げを伸ばしていく。
お金というのは、ある日突然と回り出すのだと知った。

長い間、あれだけ苦労していたお金の問題。生活はいつもカツカツで、自分の給料は一生上がらないのではないかと思う、悶々とした日々からの解放が目の前に来て、初めてお金に対して負のイメージが消えた気がした。今までは、お金は私を苦しめるものそのものだった。
でも今は違う。お金は夢を与えてくれるものに変化しつつある。
ようやく、お金が希望や忘れていた夢を取り戻す大切なものへと変化し、お金に感謝している。心も安定して仕事も楽しくなり、お金を増やすことへも着手できるまでに。
お金は人の人生を狂わすものでもあれば、そのお金に救われるものでもある。私は今、資金を貯めて将来的に社会貢献ができたらと思えるまでになった。父を恨んだこともあった。母を恨んだこともあった。でも、この大きな経験は、これからの人生にきっと役立つだろう。そしてこのお金を生き金にしていくことが、これからの私の役割なんじゃないかと思う。

“#お金について考えていること”


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