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なかなか過酷な夏休みを過ごした少年とゴーヤチャンプルー

『夏休みの日記』

【1日目】
夏休みが始まった。何やら母さんが家の窓という窓に「緑のカーテン」なるものを設置し始めた。補助金が出るから、という理由だそうだけれど、補助金自体が目的なら、無駄な出費じゃないか?と心配になった。けれど、「これで美味しいゴーヤができるかな~」なんて嬉しそうな母を見ているとそんなツッコみは出来なかった。既にいくつか実が付いているので大きくなるのが楽しみです。

【4日目】
まだ大きくならないことに少し拗ねた母さん。待ちきれなくなったのか、スーパーでゴーヤを買ってきた。「母さんね、ゴーヤ初めて食べるの」と衝撃的な発言をした。ゴーヤが食べたくて緑のカーテン設置したんじゃないんかい。けれど、「やっぱレシピあんま分からないし」と今日の食卓にゴーヤは出てこなかった。

【7日目】
「そろそろ調理しようかな~」とレシピを調べる気になった母さんがゴーヤチャンプルーを作ってくれた。苦くて泣きそうだった。「苦い」と涙目になっていたら、「ちいかわなの?」と返された。母さんはゴーヤチャンプルーにハマったみたいだった。これが恐ろしい夏休みの始まりだとは、つゆにも思わなかった。

【10日目】
ついに自宅の緑のカーテンのゴーヤが食べ頃になった。嬉しかったのか、市役所の補助金担当課の人に「補助金ありがとうございます!ゴーヤができました!」と電話をしていた。今日もゴーヤチャンプルーだった。相変わらず苦かった。

【11日目】
今日もゴーヤチャンプルーになりそうだったので「苦くて嫌だ」と言ったら、母さんは「ゴーヤの苦味を抑えるためには?」を研究するようになった。塩の量、塩揉みをするかそのまま10分放置するか。茹でるかの研究結果をノートに書き始めた。運が良ければこれを自由研究で出そうかな、なんて惰性が生まれた。研究に夢中になった母さんのせいで5皿分くらいのゴーヤチャンプルーが出てきた。正直あんまり違いが分からず、ただただ苦しかった。

【12日目】
今日もゴーヤチャンプルー。

【16日目】
7日間連続でゴーヤチャンプルー。もう飽きた。

【20日目】
今日まで10日間連続でゴーヤチャンプルー。「さすがに泣きそう」と言ったら、また「ちいかわなの?」と言われた。もはやちいかわになって討伐をする方がマシな気がしてきた。

【21日目】
ビックリした。今日は素麺だった。いきなりゴーヤが食卓からなくなるのもそれはそれでビビるって…と思った。素麵が美味しすぎて、ゴーヤ以外の食べ物の味を身体が忘れかけていたことに気づいた。

【26日目】
ここまで6日間、ゴーヤ料理は出てきていない。嬉しいけれど、ちょっと嫌な予感もする。

【30日目】
やられた。9日間のゴーヤなし生活を忘れるかのような食卓だった。ゴーヤチャンプルー、ゴーヤの炊き込みご飯、ゴーヤのナムル、ゴーヤシャーベット。とにかくゴーヤ祭りだった。いつかこんな日が来るんじゃないかと少し怖かったけれど、心の準備が出来ていたのはよかった。パクパク食べる母さんが「また来年が楽しみね」と言い、震えあがった。「ゴーヤ美味しかったです」とよく分からない電話をまたまた市役所の補助金課の人にしていた。

【担任からのコメント】
ゴーヤでいっぱいの夏休みでしたね!来年も少し怖いけれど、ちょっと楽しみですね。グッドラック♪

ほどよい苦味でした。
泣かなかったのでちいかわではないです。
宮崎県産 ゴーヤ
沖縄、宮崎、鹿児島あたりで
生産量が多いです♪

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