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『月の裏側のビデオゲーム』—未知のゲームを発掘する特集

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“ビデオゲームの可能性”を追求した、あらゆるゲームを取り上げる。あなたが知らないビデオゲームの世界がここにある。
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2024年4月の記事一覧

▼日常▼膨大な数があるシミュレーターの世界には、なんと電子レンジでマカロニが温められる2分半をただ待つシミュレーターもある。『microwave simulator』【月の裏側のビデオゲーム】

▲シーズンテーマ『日常』に参加しているテキストです 多種多様な要素から構成されるビデオゲームを「時間の体験」という尺度から捉えた際、ある種の極北とも呼べる作品がいくつか存在する。最低限のインタラクティブ性は担保しつつ、プレイヤーが操作可能なインタラクションを「電子レンジのボタンを押す」一点に絞った『microwave simulator』も、そんなゲームのひとつだ。 冷凍食品を温める間の2分半を眺めて過ごす行為がゲームプレイの大部分を占める本作は、長大なボリュームやリッチ

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『MapFriend』はGoogleストリートビューのいびつな風景が持つ恐ろしさを確認させる、批評的な短編ホラーADV。【月の裏側のビデオゲーム】

いまやGoogleマップは生活や仕事に欠かせないものだ。特にストリートビュー機能は行先を事前に確認するときに重宝している。東京のおいしいカレー屋のチェックから、ベルリンの旅行前に興味深いストリートアート美術館の場所を見ておくところまで頻繁に使っている。 ストリートビューは現実をシミュレーションしたマップとして優れているが、よく見ると違和感があるものを映し出してもいる。地球上の都市部のほとんどを、気づかないうちに路地裏まで360度カメラが撮影し、マップの情報にしている事実もそ

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英語圏を席巻するゲームエンジン「bitsy」のシーンについて——まるで日記や詩を作るみたいに、ゲームを作れるゲームエンジン

シーズンテーマ『日常』で特集しているテキストです bitsyとは、ミニマルなゲームエンジンです。ブラウザ上で動作し、プログラミングの知識もいらず、シンプルな操作でゲームを作れることを特徴としています。bitsyは開発の手軽さから、このエンジンのコミュニティが築かれていることも大きな特徴ですし、決められた期間にゲームを作って持ち寄るゲームジャムにおいてもしばしば利用されています。この記事では、bitsyを使って作られたゲームを「日常」というテーマからいくつか紹介します。 執

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▼日常▼ADHD当事者が生きる世界を、ゲームプレイすることで体験する『ADHDventure』【月の裏側のビデオゲーム】

▲シーズンテーマ『日常』に参加しているテキストです 発達障害の一種であるADHD(注意欠如・多動症)の当事者が生きる世界とは、果たしてどのようなものなのだろうか。『ADHDventure』は、言葉では伝えづらいそうした多様な脳とともにある人々の日常を、ミニゲーム形式のさまざまなタスクに取り組むことで体験するシミュレーションゲームだ。 本作はitch.ioの公式ページからウェブブラウザでプレイでき、クリアまでの時間は10〜15分ほど。日本語への翻訳には対応していないものの、

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▼日常▼ 謎の痛みの原因をいくら医者に聞いても診てもらえない……クリエイター・npckc氏の実話からゲームデザインされた難病診断ライフシム『気のせいだ』

シーズンテーマ『日常』で特集しているテキストです 『気のせいだ(原題:you're just imagining it)』は心をかき乱される一作である。というのも、僕自身が昨年2023年に、本作のクリエイターであるnpckcさんとゲームイベントなどでお話させていただくことが多かったからだ。 npckcさんはさまざまなジェンダーアイデンティティを持つ主人公を描いた『A YEAR OF SPRINGS』や、特殊な開放で切り抜けるホラーの『a pet shop after da