「子どもって死なないよね?」by息子

この質問をされた当時、3歳の息子は、ときどき、ベッドに逆さまに寝るのが好きでした。
ついでに、カーテンを開けて寝るのも好きだった。
(今はふとんに潜り込んでおもちゃで遊ぶのが好き)
なので、この話をした夜は、いつもは足を向けて寝る方向に頭を向けて寝て、窓から差し込む街灯と月明かりが、あ〜眩しいなぁ〜って、私は思っていました。

「子どもって死なないよね?」

二人でベッドでゴロゴロぎゅっぎゅして、眠りに落ちるちょっと前。突然の質問でした。
一瞬、うーんと迷って、答えました。

「子どもも死ぬよ。事故にあったり、病気になったり。子どもだって死ぬよ」

息子はどこか、納得のいかない様子で。う〜ん、なんで〜?と返事。
う〜ん、どうしてだろうねぇ〜。と私。
何をどう話せばいいのかな、そう思っていたらそのまま眠ってしまったので、それ以上の話はしませんでした。

そうだな、なんで子どもも死ぬんだろう? いや、生きとし生けるものはみな平等に死ぬからか。

私が一瞬、「うーん」と迷ったのは、なんていうか、
この子に死んでほしくないって、思ってしまったから。
別に「子どもだって死ぬよ」と話したところで、息子が今すぐ死んでしまうわけではないのですが、
ちょっとでも遠ざけたかったんだと思う。
「絶対死んでほしくない人」と「それでも君はいつか死ぬ」ということを。

そんな私ですが、いつかちゃんと、「人はみんな死ぬんだよ」「死ぬってどういうことなのかな」って、一緒に話したいなと思っています。
これまでもそう思っていましたが、より一層強く思ったのは、この本に出会ったから。

妹が死ぬ直前まで、妹が”死ぬかもしれない”と知らなかったお姉ちゃん

この本は、小児緩和ケアと、こどもホスピスの普及を目指している、NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事の田川尚登さんが書かれた本です。

一番心に残ったのは、田川さんの娘さんの言葉です。

田川さんの娘さん・はるかちゃんは、6歳のときに病気で亡くなっているのですが、一番心に残ったのははるかちゃんの言葉ではなく、そのお姉ちゃんの言葉です。

「なんで、もっと早く教えてくれなかったの?」

はるかちゃんが病気になって、治療をして入院をして…でも田川さんは、お姉ちゃんに「はるかちゃんが死んでしまうかもしれない」とは言わなかったそうです。むしろ悟られないようにしていたといいます。
だからお姉ちゃんは、はるかちゃんの自発呼吸が止まる事態に直面して初めて、“はるかちゃんが死んでしまうかもしれない”、ということを知りました。

そして発せられたのが、さっきの言葉です。
泣いて怒ったそうです。
これは、田川さんの深い後悔になっているといいます。

子どもだから何もわからない、全てに耐えられない、ってことはない。

私たちはつい、
「子どもだからわからない」
「子どもだから、こんな悲しい現実には耐えられないだろう」
「子どもには言わなくていい」
「子どもに聞かせられる話じゃない」
といって、こどもを蚊帳の外にしてしまうことがあります。

もちろんそれが、子どもを守ることも、きっとあると思います。
でも、「死」というテーマに関しては、もちろん慎重にならないといけないこともあるだろうけれど、決して蚊帳の外にしちゃいけないんだろうな。
と、思うようになりました。

いや、もしかしたら「死」だけじゃない。
子どもだから「タブー」なことなんて、ないのかもしれない。
私たち大人は知っていることも、勉強不足で知らないことも、同じフィールドで、お互いに拙い言葉を交わし合って、タブーなく一緒に語り合っていくべきなのかもしれない。

そんな関係性が、すごく、人として気持ちがいいのかもしれない。

…そんなことを、この本に気づかせてもらった気がしています。

ちなみにこの本、知り合いのライターさん、猪俣奈央子さんが編集協力されています。
彼女も、幼い娘さんを育てるママです。
泣きながら本書のお仕事をされたとおっしゃっていました。
猪俣さん、素敵な本をありがとうございます!

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