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フリーライターは稼げるのか?—働き方を見直して収入と労働のバランスを見極めよう—

ライター4人の実例も大公開!収支とバランス

フリーランスライターの通帳の中身を見てみたい、と思う人は多いだろう。駆け出しライターさんからよく聞かれるのも「どれくらい稼げますか」という質問だし、フリーライターですと言うと「へぇ、フリーランスのライターさんって年収どれくらいなの?」ともよく聞かれる。

だいたいは「いやぁ厳しくてアハハ」「なんだかねぇアハハ」と笑いながら曖昧に答える。

というわけで今回は、そうハッキリといくら稼いでますとはやっぱり言わないのだが(笑)ライターの稼ぎをちょっと違った視点から見てみようと思う。

「つまらん仕事でも受けねばならぬこともある」
「生きるためにする仕事もある」

ある種の悲壮感も漂うが、同時に「たいしたお金にならんかったが、こんな仕事が出来てよかった!」みたいなこともある、時々ある、たまにある、まれにある・・・。

では、大人の事情をかいつまんで説明していこう。

*後半ではICT教育マガジンメンバーの「働き方と収入バランス」も大公開!

■フリーライターの収入を3つのワークにわけてみよう

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① ライスワーク
みんな稼がなくては生きていけない。働かざる者食うべからずとも言う。好き嫌いを言っていられない、いわゆる生活費を稼ぐ仕事。

② ライクワーク
世の中に多いのが「割が合わない仕事」。仕方ない、それが現実。しかし割に合わなくてもぜひやってみたいと思う仕事もあるのも事実。要するに好きな仕事のこと。

③ ライフワーク
自分自身にとって「一生つきあっていきたい仕事」。時にはお金にもなるが、ならないかもしれない。コツコツと自分のテーマを追い続けるのは、将来への投資とも言えるし(やがて大きく育ち返ってくる可能性は常にある)、自分の夢とも言える。

・ライスワークが実は非常に重要なのである

ライスワークとは、米代を稼ぐ仕事ということだ(ここでの解釈)。

フリーランスは常に「来月はどうなるか」わからない不安がある。はっきり言えば、

雨露しのげる家と腹を満たせる米

この2つを支える金銭源がないとキツい。

ICT教育マガジン仲間の小澤さんは、駆け出しの頃は通帳ながめながら「心が病みそうになった」と言っていた。

誰もが来月の家賃が払えそうにないぞ、米びつはからっぽで「どうすりゃいいんだ」と頭を抱える事態が数ヶ月も続いたら心も体も病むだろう。

家賃と食費、現在「1ヶ月最低限必要なお金はいくらか」を計算し、その最低限のお金をなんとしても稼ぐための仕事がライスワークである。

逆に言うと、ここができないとかなりヤバい。だから声を大にして言いたい。これからライターになる人、駆け出しのライターさん、収入が不安定で毎月キリキリ胃が痛む方。

必要最低限の生活費=必ず毎月稼ぐ

これを基本にして仕事を入れていくことだ。

もし他のバイトはしない、実家に住んでるわけでもない、というのであれば、どんな安い単価の仕事でも請け負って、とにかく上記のお金だけは「月末に入金される」状態にしておくことだ。それが生活費ってもんである。

前述の小澤さんは「来月やばいぞと思ったら、たとえばテープ起こしとか、クラウドソーシングでもいろいろな仕事を探してどんどん受注していた」と言う。

多くのライターは(私自身も含めて)、ライスワークでは少々気に食わないことがあろうが、つまらん仕事だなと思おうが「こなしてナンボ」と割り切るしかないことが多々ある。

だって、ほんっとーにお金ないと困るから!!!

会社員のように少なくとも毎月一定の収入があるわけではない。

フリーライターになって、それで暮らすとなったら、なにはともあれ最低限の「ライスワーク」の収入を確保するのが大事なのだ。

・だから副業ライターっていいなとも思うが副業ライターにも苦労がある

最近では副業でライターをしている人も多いが、実はたいへん安心安全なワークスタイルでもある。

大変さはどちらと比較できないが、少なくとも「家賃と米代」を本業で稼げるとすれば、副業はプラスαであるから、仕事をある程度は選ぶこともできる。

と思っていたら知り合いの副業ライターが

「本業で米代は稼げるが、土日も仕事、平日も帰宅してからチョコチョコやったりで、オンオフがなくてきつい」

と言っていましたっけ。ラクな仕事なんてないんだな。

・だからパートタイムライターっていいなと思うがママさんライターにも苦労がある

子育てや介護をしながらライターをする人もいるだろう。

いわゆるママさんライターは生活費全体を稼ぐことが目標ではなく「とりあえず少しでも家計の足しになるように」「自分のお小遣いくらいは」あたりからスタートする場合も多い。

パートタイム的なイメージのライターさんである。

なんであれ生活費の基本源が夫やパートナーによって支えられているので、来月の米代を心配しなくていいのだから、こりゃけっこうですな、と思うがそうでもない。

ママライターのひとりは

「副業っていうか、つまりはわたしがパートとか内職している感じ?夫の給料だけで暮らすことはできるけど、子どもの塾代とか、たまには外食したいとか、そういう分と考えていて、だいたい月5万くらいの収入なんだけど、だけど最初の頃は5万あると助かるなと思っていたのが、あと2万くらい、あと1万は、みたいにふくれてきて、しかもけっこう時間とられるし、よくよく計算すると、普通に飲食店とかスーパーとかでパートで働いたほうが割がいいのかも!?って思うんだよね」

と息継ぎもせずに言っていた。よほど訴えたいものがあったのだろう。

「そんでもって、なんか好きなことしてお金もらってるね的な、そりゃ家にいるんだから家事はできるだろ視線バシバシで、締切なんだよ!と言うと、おや、すごいね、いつから小説家に?と(言ってはいないのだが)片方の眉毛をあげて、まあそこそこにして、家のこととかちゃんとやってくれよ、オレ外で大変なだんからって夫に言われたりするのムカつく」

とこれまた息継ぎなしで言っていた。

わたしもママさんライターだから、そこはよくわかる。外で働いていれば、家事分担とかもアピールしやすい。だのに在宅ワークなもんだから「いや、夕飯とか合間に作れるっしょ、掃除とかチョイチョイできるっしょ」みたいな考えの昭和的な男性も多いのである。

うちの夫だとは言っていない。

要するに、どんな形で働いても、働き方も稼ぎについても「バラ色の世界」なんていう人はほんのひと握りということ。ライターに限ったことではないけれど。

■ライクワークやライフワークは大切に考えていこう

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好きなことや興味のあることを書くのは楽しい。また違った分野であっても、やってみたいと思う仕事もある。

仕事をしているうちに、自分はこのテーマについて追っていきたいと思うこともあるだろう。好きなことを徹底して追求していきたいと思うかもしれない。

そういう仕事は心の潤いのためにも必要だ。ライターの矜持みたいなものかもしれない。

単純に「ライターをしているのは収入を得るため」と割り切っているのなら別だが、一般的にはフリーランスとして独立するのは、何かに縛られることなく、自分なりの働き方をめざしているからだろう。

だからこそ、ライクワークやライフワークは、それがなかなか叶わなかったとしても心の中で温めておくことも大事なのだ。

目標であったり、密かな夢であったり、単純に大好きなことであったり、それとライターという仕事を結びつけて、少しずつ実現できるように進んでいくことは、消費されるだけのライターにならないためにも必要なことかなぁと思っている。

■ライターはどれだけ稼げますか?は「どれだけ書けますか」だ!

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どれだけ稼げるかという問いには、結局、どれだけ書けるのかとしか答えようがない。

むろん、単価の問題はある。

確かに取材ライターは1件の単価が大きい。月に20本取材をいれて20本記事をかけたら、けっこうなものだが、その前に倒れるだろう。

第一、取材をきっちりやるとなれば、事前準備も時間がかかるし、アポとりからやれば単価は上がるがその分仕事量も増える。取材そのものだって、場所によっては半日どころか1日仕事である。

だからつまり、時給に換算してしまうと、ママさんライターじゃないが

「普通にバイトしたほうがいいんじゃないの?」

となってしまう。

安い単価の仕事でも、それがもし約2,000文字、30分で1本書けて、単価が1200円ならどうだろう。

1時間で2,400円だ。5時間で12,000円。週5日で6万円。1ヶ月で24万円となる。5時間労働で20,000文字書く、なんていうのは自分がライティングマシーンだと思い込まなくてはできないことではある、というのは横に置いておくとして。

要するに単価が低くて、やる気がおきない案件であっても、この倍働くとすれば、単純計算だが48万円の収入になる(1日10時間、20本の記事を書くという離れ業だ)。

ライスワークとしてはスピード重視でわんさか仕事をやっつけて、ひとまず「家賃と米代分」を稼ぐという方法は確かにある。が、それだけの量の仕事が常に毎月提供されるクライアントを持てるかどうかにもよる。

そしてライターといっても人それぞれで、こうした仕事をこなせるタイプもいれば、疲弊するタイプもいる。

疲弊は最初から感じるものではなく、積み重なってふいに重みに耐えがたくなる。だから、とりあえずチャレンジしてみて「やばいな」と思ったら、少し働き方を変えてみる。

しかしそうすると稼ぎはいったん減る。悩ましいところだが、そうして、なんとか自分なりのバランスを保ちつつ、実績をあげて「より良い仕事」を頂けるようにするしかない。

■フリーランスに言葉通りの自由はないが

わたしは「ワークライフバランス」という横文字はあまり好きではないのだが、ワークとライフを分けて考えるのは、まぁ基本的なことではある。

ライターの実際問題としては、ライスワークとライクワークとワイフワークをどうバランスよく配置し、ストレスなく、だが暮らすに充分事足りる収入を得られるか、だ。このバランスをとるのは、年収1,000万クラスのハイレベルなライターさん以外は常に苦労するところでもある。

フリーランスは言葉通りの自由さはない。むしろ、自由に働いていいよということが非常に働き方を縛るものがあるのだと思っていたほうがよいと思う。

さぁでは、私を含めたICT教育マガジン仲間の皆さんにご協力してもらった「みんなの働き方バランス」を見ていこう!

■みんなのライスワーク・ライクワーク・ライフワークのバランスは?

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・わたし【大橋 礼】はライクワークにシフト中

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ライスワーク:4割
ライクワーク:5.5割
ライフワーク:0.5割

コメント
私の場合、柱となるクライアントが2〜3社の状態を継続。ライスワークは、共働きで夫の収入で暮らしそのものは成り立っているものの、かさむ教育費のためにも(かさむ食費のためにも、だ。男子の食欲にはウンザリである)必須ではある。年齢と共にバランスは変わり、私はある時を境にライフワークは「かなり遠い小さな夢」だと考えるようになったので、割合としては非常に少ない。が、ライスワークはある程度の見切りをつけ、少なくとも心が多少なりとも動くライクワークに重点を置いているのが50歳になった現在のベストバランスである。下の子が独立する年齢になったら、ライフワークについて改めて考えるのかなと漠然と思ってはいるけれど。

・【ICT教育マガジンライター】小澤志穂さんの「5:3:2」の法則とは

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ライスワーク:5割
ライクワーク:3割
ライフワーク:2割

コメント:
おでかけライターになりたくてフリーランスになったものの、自分のスキルと効率の低さ、リアルな生活費の折り合いで、楽しいはずの仕事がつらくなることもありました。そこで、編み出したのが5・3・2の法則。今、自分が持っているスキルで執筆できる仕事を「ライスワーク」と位置付け、その他に自分が本来やりたかった仕事や今後のためのちょっと背伸びをした仕事などに分けました。生活費を稼げていることで、今まで執筆したことがない分野や企画にもチャレンジでき、心理的に余裕を持って働けるようになりました!

・【ICT教育マガジンライター】夏野かおるさんの「研究活動との両立で稼ぐのは大変だ!」

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ライスワーク:9割
ライクワーク:0割
ライフワーク:1割

コメント
研究活動は1円ももらえないため(むしろお金がかかる!)、強制的に「ライクワーク」になってしまいます。そのため、どうしても仕事のライティングは「ライスワーク」に近くなります。

とはいえ、悪いことばかりではなく、ビジネスライクに執筆できる姿勢がありがたがられることも。自分の記事に手を入れられることに抵抗がないので、「付き合いやすい」と編集者さんからは好評です。

そんな中でも、ときたま「私が知りたいから、取材行ってもいいですか?」と申し出るようにはしています。勉強になるし、ライティングに熱が入って、いい記事に仕上がることが多いんですよ!

・【ICT教育マガジンライター】原由希奈さんの「子育ても家事も仕事のひとつ」な働き方

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ライスワーク:7割
ライクワーク:0割
ライフワーク:3割

コメント
月によって変動が激しいですが、ライター初期のころから細く長くご依頼をくださっている企業様からのBtoB向けコラムや教材のレビュー記事が、現在のところ私のライスワークです。ライクワークは子育てと家事になると思いますが、それを含まないのであれば、仕事としては受けていない状況です。3割に入る教育関連のインタビュー記事は、なかなか仕事を獲得することが難しいものの、ずっと続けていきたいです。

■働き方をアップデートしていこう

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たった数人に聞いただけでも、まるで違う。それがフリーランスだ。働き方が決まっており、給与体系が定まっているのが会社員や公務員である。

いっぽうフリーライターには定まった働き方も定まった収入の基準もない。だから稼ぎを考えることは、自分の働き方を考えることでもある。

「もっと稼げるライターになりたい」

という声は多い。私もずっとそう思ってきた。ライターとして稼ぐにはどうしたらいいだろう、どうやって仕事を探せばいいんだろう(これだけで1記事になるだろう)と常に思っていた時期もある。

仕事が多少なりとも入ってくるようになると、とにかく手を広げた時期もある。チャンスがある時にやれるだけやる、追い込まれる経験はないよりはあったほうがいいのではと思う。

しかし、ずっと仕事が広がり続けるということは少ない。たぶん「もっと単価がよくて、自分の名前が載るような、良い仕事がしたい」「もっと割のいい仕事はないのか」と思うようになる。

が、仕事の内容や労働量と収入がきっちり見合うような仕事ばかりではないのが現実だ。

現実と夢。
収入と支出。
働くことと稼ぎ。

すべてはバランスであり、どのバランスが今の自分にとってベストか、それは見直してはやり直していくしかない。

あるいはシーソーのように、揺れてもいいのだと思う。どっちかにふりきれてしまい、すっ飛んでいってしまわないようにだけ気をつけてほしいなと思うけれど(すっ飛んでしまい、もうライターやめた!と言って、婚活に走った知り合いがいるが、それはそれで幸せななので振り切ったからといって人世が終わるわけでもないことは一応、記しておく)。

自分の稼ぎを一度しっかり見直してみるといいかもしれない。

そして、3つのワークに振り分けて、働き方を改めて考える時間をもつこともおすすめだ。収入はたいへん大切なことであるが、長くライターとしてやっていきたいのであれば、収入を含めた「自分の働き方」を時々、アップデートしていこう。

人はずっと、同じではないから。

考え方も変わる。年齢は確実に変わっていく。環境も変わる。やりたいことだって、好きだったことだって、変わっていくことは珍しくもない。

だから働き方も変わる。自由に変えていけるのがフリーランスの特権でもある。

フリーライターは、自由に働けるわけではないが、自由に変えていくことはできる。それは実は素晴らしいことだというのを最後に伝えておきたい。


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