あなたとの別れを考えはじめたのは、いついつからです、と明言することができません。

わたしたちには常に、別れがつきまとっていたように思います。別れなければならない、もう、会う約束をしてはならないと、神様がそう言っている気がしていました。

でも、私は他人に言わせれば「常識はずれの女」なので、あなたにためらいもなく会いました。夢中で恋をしました。


でも、いくら私が世間知らずの極楽とんぼでも、これだけははっきりわかっていました。孤独。あなたを愛するたびに、あなたに愛されるたびに、私が孤独になっていくことだけは。

満ち足りた生活でした。日々は淀みなく流れ、何をしても、何もしなくても許される。それでも孤独だった。恋は、世界でいちばんかなしいものだと思います。


私がイタリアを旅行したいと言ったら、あなたから「現実からにげないで」とたしなめられました。私にとっては、イタリアも東京もあなたも夫も恋も愛も、ぜんぶぜんぶ現実でした。愛してるといくら言葉にしても、なんにも伝わっていなかった。愛において、言葉なんて意味を持たない。あなたに教えられたことです。


私には私なりの、守りたい美学があります。他人に嗤われようと、けなされようと、それを貫き通したい。かわいそうな人、不幸な人と言われるかもしれない。それでも、わたしは美しいものしか信じられないのです。



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