滝壺
今日もお疲れ様です。
今日も小話を聞いてください。
「明日、滝を観に行くんです!」
私はその人の隣で爛々と話しかけた。
その人は興味深そうな顔をして、どこの滝に行くんですか?と質問を返してくれた。
その人は過去一番の滝を教えてくれた。
そこは前の奥さんと初めて行った思い出の場所だった。
その背後から、次の奥さん候補になるであろう女性が酔った眼差しで私を見つめていた。まどろんだその瞳の奥からは注意深い鋭さがあった。
私はその人が好きだった。
他人の感情は水の如く、私の胸の中を流れていく。
それは自らの感情と混じり合いながらまるで怒涛のように流れこみ、時には土壌を抉り出し、いつか滝のように落ちていく。
それでも止まない水の流れはいつか綺麗な滝壺を生み出し、滑稽な姿に変わるだろう。
そう思えばなんだっていいや。
最後に虹がかかるといいな。
その人のキレイに刈り込まれたうなじから一筋の汗が流れ落ちた。
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