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桜吹雪とエモ

4月、春の陽気とはどこへやら冬の忘れ物かの様な寒さの曇りの平日のこと
ここ数日家から全然出てないと思い少し離れた桜の名所まで歩こうと思い散歩に行くことにした。
まぁ誰に会うわけでもないしラフな格好でいいか、と厚めのパーカーとジーパンに最近お気に入りな寝ている猫のイラストのトートバッグにスマホと財布と鍵を放り込んで外に出た。
昨日夜遅くまで雨が降っていてまだ曇りのせいか、あたりは少し肌寒く、大通りに出ても人通りはまだらだった。

桜並木が有名な公園についても、テレビやネットで言われていたほど人はおらずまるで隠された名所にきたような気分で少し得をしたような気がして鼻歌を歌いながら上機嫌で桜を眺めていった。
その後、いい気分のまま文房具屋へ行き春っぽい薄ピンクのような使うタイミングがこの先くるかどうか微妙な色のボールペンを買った。

今だから思うがきっとこの色をチョイスした理由は桜並木をほぼ独占しながら歩けたという心理がすごく影響していたのではと思っている。
因みにだが、このボールペンは今部屋のペン立てに堂々鎮座している。おそらく今後も筆箱スタメンにはならずペン立ての守護神となっている事だろう。

話を戻そう。
文房具屋を出た私は、もう一度あの桜をゆっくり眺めようと思い来た道を戻ることにした。
その途中、ゆっくり見るなら少し寒いかな?と感じ某高級コーヒー店(私主観)でグランデサイズのホットのラテを買った。レジで代金を支払った時案外高くはないのか?と思ったりはしたがそれはまた別の話。なぜそう思ったかは謎である。

さて、公園へ着き桜を見ようと意気揚々と歩き出したが
私の中で、せっかく暇なのだし公園をぐるっと見てから最後に桜を見たら良いのでは?という思いが膨らんだ。
私はその欲望に従った。正直、後で書く出来事に記憶の大半を奪われたせいであまり覚えてはいなかったがうっすらと従って良かったと思えた事は書いておく。

そうして、大量に思えたラテが半分になったぐらいでメインディッシュとばかりに桜並木へと足を踏み入れた。
そうして、「うわー綺麗」だの「こいつら自分たちで増えられないのかぁ」など適当な独り言を唱えながら時々ラテを啜り、並木の先がだんだんと見えるようになってきたその瞬間
突然、一陣の風が吹きつけた。
その風に身を任せるかの如く、あたりの桜の花びらが私の周りを覆い尽くした。それはまるで急に猛吹雪の中に居るかのように思わせるほどだった。
その美しさは私の文才では書き表せないほど素晴らしく限りある脳で例えるならば、青春アニメやドラマでその花吹雪が晴れた後に運命の人と出逢うかのような、もしくはそこで前後不覚になりヒロインとぶつかることで物語が始まるかのような。
もし映像化するなら新海誠さんに作画監督をしてもらいたいそのような感じでもうとにかく「エモ」がこの世に降りたったかのようであった。
私の頭は常にロマンスを追い求めているのでその時も瞬時にその考えに至り、運命の人が桜吹雪の先で待つと信じて疑わず、晴れるのを今か今かと待ちわびていた。
もしその様子を見ている人がいたならば、きっと彼は忠犬ハチ公もかくやのレベルであったと語ることだろう。
さぁ、その桜吹雪も晴れかけ「運命の人いらっしゃい!!」と思いまばたきのあと晴れた先を見ると…………

勿論誰も居なかった。当たり前ではあるが隣にも誰も居なかった。辺りを見回してもさっきまでかの素晴らしい「エモ」を存在させていた花びらたちが地面を薄ピンク色に染め上げているだけであった。
まぁ、それも当たり前であろう。前述した想像はもちろん想像であり、あくまでフィクションである。そしてフィクションが現実に訪れることはほぼ、いや確実にない。ましてやその日は、雨の日の翌日でかつ曇りの肌寒い日であり外に出ている方が馬鹿らしいような気候である。そんなエモがあるはずもないのだ。

まぁしかしこれも一種の「エモ」であろう。そう思い、少し冷えたラテを啜り家へと足を向けた。

           -fin-


追記
例えがラブロマンスや青春系に毒されすぎでは?とお思いの方がいるかもしれないが当方生まれてこの方彼女なし、そういう出来事に憧れていて普段からそのような妄想をしているだけである。温かい目で見てやってください。

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