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祝祭【散文詩】

薄暗く寒い夕暮れ時
深い海の合間に掛かる
高い橋の向こう岸から
祝祭の声が聞こえる

神でも祀って祝っているのだろうか
私は独り木のベンチに腰掛けて
遠くからその声を見つめていた

神を何度呪ったか
どうして私など生まれたのかと
何度涙したか

着飾った微笑む乙女と一瞬目が合い
私は死にたくなって
劇薬を飲んで目を瞑った


あの日死に損なった私を
神は助けてくれなかった
私は自分の力だけで
呪われた血の鎖を断ち切って
人生を変えようと思った

けれど無駄だった
絶望はどこまでも追いかけてきて
どこに逃げても私を離さなかった

私の苦しみは
血の穢れ
その呪いは
血から血へ

海は紅い血潮に染まり
もがけばもがくほど
私は深く暗い海の底に
堕とされてーー


気づけば溺れて沈んだ私は
十年前のあの祝祭の日の
あの橋の前に再びいて
高い橋の上から
底の見えない暗い海を見下ろした

もういないあの日の乙女の幻影が
私の前に現れて嘲笑いながら
この世ならぬ声で言った
「神を呪った罰だ!
 救われることのない人間が
 愚かにも報われようとした罰だ!」


※予定説
ジャン・カルヴァンは、救われる人間と救われない人間は、生まれた時からすでに決められており、個人の努力によってはどうにもならないとする「予定説」を説きました。神の敬わずに地獄に落ちるような人間は、それが自由意思であるように見えても、実際には生まれた時からそうすることが宿命として定められている、ということです。科学の進歩により、人間には自由意思などというものは存在しないのではないかとする説がより有力になってきています。

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