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ヨーグルトとチーズは牛乳よりも食欲を減らす効果がある?

 2021年8月に雑誌「The Journal of Nutrition」に掲載された研究では、食事の前に乳製品を摂取すると食欲を減らすことができますが、さらに「ヨーグルトやチーズは牛乳よりも効果的である」ことが報告されました。

 私たちの空腹感や食事の量は、前の食事の内容や量など、さまざまな要因によって決まります。最近のメタアナリシスの報告では、乳製品の摂取が食欲を減少させ、もっと食べたいという意欲を低下させることが示唆されています(Onvani S, 2017)。
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 メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

 しかしながら、どの乳製品が食欲に影響するのか、その影響は男女で同じなのか、年齢にともなって変化するのかという疑問については明らかになっていませんでした。

 これらの疑問にひとつの答えを示したのがトロント大学のVienらです。

 Vienらは、28名の若年者(20~30歳)と30名の高齢者(60~70歳)を対象に、水、牛乳(全乳)、スキムミルク(脱脂粉乳)、ヨーグルト(ギリシャヨーグルト)、チーズ(チェダーチーズ)を摂取させ、その2時間後のピザの自由摂取量を計測しました。また血糖値、食欲調整ホルモンの反応を食前、食中、食後に測定した。得られたデータを年齢、性別により分析しました。

 その結果、水を摂取した場合と比較して、すべての乳製品の摂取で食欲、ピザを食べる量、ピザを食べた後の血糖値の上昇が抑えられました。

 食欲抑制効果は若年者ではヨーグルトがもっとも高く、高齢者ではヨーグルトとチーズがスキムミルクと全乳よりも高くなりました。また、食欲抑制効果は、男性よりも女性のほうが高くなりました。

 ピザの摂取量は、水摂取時と比較してヨーグルトとチーズの摂取時には175kcal,牛乳とスキムミルクの摂取時には82kcalの減少が見られました。

 これらの結果から、すべての乳製品は食後の血糖値、食前の食欲、食事摂取量を減少させますが、その効果はヨーグルトとチーズは牛乳よりも高く、若年者は高齢者より高く、女性は男性よりも高いことが示唆されました。

【乳製品による食欲の減少効果】
 ・ヨーグルトとチーズ > 牛乳とスキムミルク
 ・若年者 > 高齢者
 ・女性 > 男性

 乳製品による食欲の減少効果は「タンパク質」がおもな要因とされています。

 ケンブリッジ大学の研究では、同じエネルギー摂取量である高タンパク質食、高炭水化物食、高脂肪食を朝食で摂取したあとの食欲抑制ホルモン(CCK、GLP-1、PYY)の分泌量を計測した結果、高タンパク質食は他の食事に比べて、朝食から4時間後の昼食時でも食欲抑制ホルモンの濃度が高いことが報告されています(van der Klaauw A, 2013)。

 さらにオーストラリア科学産業研究機構の研究では、食事前にタンパク質を摂取させたところ、食事後3時間での食欲促進ホルモンであるグレリンの上昇が抑えられたことを報告しています(Bowen J, 2006a、2006b)。

 タンパク質の摂取は食欲抑制ホルモンの分泌を促し、食欲促進ホルモンの分泌を抑えることによって食欲をさせ減少させることが示唆されているのです。
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 また、乳製品の「形状」も食欲に影響を与えます。

 リーズ大学が報告した食品の形状が食事の摂取量に与える影響について解析したメタアナリシスでは、固体や粘度の高い食品は、液体および粘度の低い食品に比べて、空腹感を減少させることが示唆されています(Stribiţcaia E, 2020)。

 ヨーグルトやチーズは固形または粘性の高い食品であることから、液体である牛乳よりも空腹感を低減させたと推察されています。

 これらの知見を合わせて、Vienらはヨーグルトとチーズは牛乳よりも食欲を減らす効果が高いと結論づけています。

 また、乳製品による食欲減少の効果において、高齢者が若年者よりも低い理由として「高齢者は代謝の柔軟性が低下している」ことを挙げており、男性が女性よりも低い理由として「男性は身体のサイズが大きい」ことを挙げていますが、明らかな理由については今後のさらなる検証が必要であるとしています。
 
 ダイエットで食欲を減らしたいときには、ヨーグルトやチーズを食事のメニューに取り入れたり、おやつで摂取するのも良いかもしれません。とくにヨーグルトは体重減少の効果も示唆されているのでオススメです。
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◆ 参考文献

Onvani S, et al. Dairy products, satiety and food intake: A meta-analysis of clinical trials. Clin Nutr. 2017 Apr;36(2):389-398.

Vien S, et al. Age and Sex Interact to Determine the Effects of Commonly Consumed Dairy Products on Postmeal Glycemia, Satiety, and Later Meal Food Intake in Adults. J Nutr. 2021 Aug 7;151(8):2161-2174.

van der Klaauw A, et al. High protein intake stimulates postprandial GLP1 and PYY release. Obesity (Silver Spring). 2013 Aug;21(8):1602-7.

Bowen J, et al. Energy intake, ghrelin, and cholecystokinin after different carbohydrate and protein preloads in overweight men. J Clin Endocrinol Metab. 2006a Apr;91(4):1477-83.

Bowen J, et al. Appetite regulatory hormone responses to various dietary proteins differ by body mass index status despite similar reductions in ad libitum energy intake. J Clin Endocrinol Metab. 2006b Aug;91(8):2913-9.

Stribiţcaia E, et al. Food texture influences on satiety: systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2020 Jul 31;10(1):12929.

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