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2021年Lil Nas Xは次のアルバム大変そうだねえなど

The Weeknd - Save Your Tears

 ヒットチャートとかまだちゃんと指標になってるんやろか。そういう重み付けでランク作ったらいいんかもうわからんな。
 僕はもはや、YouTubeがすすめる音楽を「後で見る」に放り込み、勉強中とか作業中に垂れ流すのが中心の消化方法になってしまったので、基本大ヒット音楽しか耳に入らなくなってきました。そんな聴き方してるってのに、普通に億再生しているヒットソングが耳に入らないまま一年を過ごすことも多くなって、「ヒット」という言葉自体の意味を疑いつつあるところです。「ビルボード一位」はときどき聞くから、どういった形かでチャートはつくられてんだね。

 もともとストレートにR&Bって人でもありませんが、リズムはもはや単調に、80sのようなドラムとキーボードと揃った位置のベースが小節の間鳴り響き、「Save your tears for another day」という言葉に返ってくるたび、喉を絞めるような緊張感とメランコリアに包まれる、ただ邪魔になってるだけの性欲みたいな曲になってました。Weeknd格好いいです。
 MVでは、仮面をつけている観客たちの中で、特殊メイクをして醜くなったウィークエンドが、好きな人を見つけて自分を殺させることを願う、みたいな内容になってます。
 歌詞を検索しますと、昔振った子に会ったら、イヤな気分にさせちゃったみたいでメンゴメンゴみたいな曲です。てことは、「振っちゃってイヤな気分にさせた」という事自体が主人公の妄想、みたいな曲なんですかね?どっちにしても「恋的なものがうまくいってない」という曲でした。

Lil Nas X - MONTERO (Call Me By Your Name)

 2019年にゲイをCOし、2021年にファーストアルバム。タイトルは本名の「Montero」で、MVは神関係の取り扱いに神経質な本国で、自分がサタンとなるストーリーと、ストレートのラッパーがケツデカギャルダンサーに挟まれる感じで、ゲイの性欲表現がふんだんに用いられて、話題となっておりました。流石に今更ゲイに石投げる人おらんと思いますが、どこまでポップスとして消化するのか、口火切った人間が負けるチキンレースになりつつある感じです。
 トラックが攻撃的なら、本名を冠した曲の歌詞も「呼んでくれたらいつでもセックスやりまっせ」以外別に何も言ってないという、ある種のラップマナーに則った勢いのあるものになってます。勢いがあるってそれだけで抜群の価値ですよ。ポップスなんて何も言ってなくていいんだよ。
 アルバムにある「Sun Goes Down」という曲では、自らのセクシュアリティにまつわるこれまでの苦しみを、歌ものラップとアコースティックなトラックに乗せてセンチメンタルに歌っております。この曲などをもって、センセーショナルな言葉と映像表現で世間を挑発するだけでなく、エンタメをやりながら「ただ自分がそこにあるだけなのだ」という重み付けをアルバム全体で行っています。

 大体こういう「おおっぴらであること」で鮮烈デビューしたミュージシャンは、それ以外に語ることを見失ってやんわり滑落していくイメージで、実際Montero周りの表現は鮮烈であったことから、これ以降は、単にリリシストとして真価が問われることになるでしょう。名前の売れた「Old Town Road」は、売れることが計算づくで製作したと公言しているそうなので、すでにこの後、名声を確立していくためのプランがあるのかもしれませんね。ラッパー大変やなあ。

Bad Bunny - Yonaguni

キョウハセクースシタイ…(迫真)

 インチキ日本の曲は毎年100曲作りなさい。できるだけ聴くから。
 去年一番再生されたラッパーがバッド・バニーだそうな。

Dayglow - Close to You

 ホール&オーツ的なものが流行ることや、Rick Astleyがネットミームとしてこすられ続けることを鑑みるに、今は80sの41年目突入ということなのかもしれんです(てきとう)。
 10年時代ズレますが、外国発のシティポップフォロワーも山程サジェストで上がってきた気がする。わたせせいぞう的なタッチのアニメでMV作ってんのよ。もはやバブルが訪れない日本において、バブル勃興音楽が海外で盛り上がってる感じします。ちょうどアメリカ株のバブルも弾けそうだしな、そういうことなんでしょうね(てきとう)。
 若い人が古い音楽に影響されてたら、最新の音楽として古い音楽を楽しむ言い訳ができた気がするのよね。タイトルはバート・バカラックってことなんでしょうし、もうオールディーズの引き出しに入る幅が20代と30代じゃ大きく違ってくるのだろうな。

AC/DC - Realize

 こちらは1973年にデビューした新人バンドAC/DCです。まるで新曲みたいな顔で新曲出してますが、その前に出した新曲みたいな新曲とだいたい一緒です。ライブでは結局Back In Blackやります。よって最高です。和訳を読むこともしてませんが、多分「イエー!」って言ってるのと同じこと言ってます。ずっと新曲みたいな顔で前と同じ新曲を出し続けろ。
 数年前ほとんどメンバー離脱したり、フィルに関しては殺し屋を雇ってクビになったりしてたけど、シレっと同じメンツがお咎めなしで戻ってる。これからも離脱したり戻ったりして、大体同じアルバム作って同じセットリストでツアーして大金稼ぎながら暮らせ。

Måneskin - ZITTI E BUONI

 世界的ヒットのロックバンドって、どんどん少なくなってきてる。和訳を乗せたMVを日本のレコード会社が作ったら『相当売れてんだな』と思うようにしてるんですが、それがイタリアからやってくるとは思わなかったです。
 イントロからシンプルな太めの弦弄ったリフと、グランジと相性良さそうなクールさと熱のあるボーカルと、イタリアのスパゲッティーニな語尾(適当)がめちゃくちゃ格好いい。これは14歳少年が聴いて、うかつにパンクに目覚めるんじゃないでしょうか。世界進出にあたって英語詞も準備してて、実際「Beggin'」のほうがヒットしてる感じしますが、イタリア語曲のほうが格好いいです。
 ライブでは、トラックを重ねてないボーカルでも、ホイッスルやしゃがれの技術は全くブレてなくて、パフォーマンスも良かったですね。

Flamingosis - Cosmic Feeling

 シティ・ポップ(スが取れたのが主流らしい)フォロワーなんでしょうか。わたせせいぞう的なビジュアルイメージですし、カセットテープも登場するし、まあそうなんだと思います。僕にはスティーリー・ダンと区別できません。でも何か、山下達郎をいいと思う気持ちが、海を超えて普通に共有できるのは不思議だし嬉しいですね。
 わたせせいぞうは別に輸出しなくてもよかったです。

Hiatus Kaiyote - Mood Valiant

 6年ぶりのHiatus Kaiyote「Mood Valiant」が発表ありました。歌詞が具体性に欠けるものが多くて、結局どういうこと言ってんのか言葉ではよくわからないんですが、通しで聴いていると、特に「Get Sun」が始まったときのジャズとポップスにぐっと焦点が合わさって「太陽に着くまでの方法」という言葉が繰り返されるまでに、テーマとしての希望を感じました。そして、それがChoose Your Weponを聴いていたころに感じた、Hiatus Kaiyoteに持っていたイメージでもありました。
 実際、Get SunのMVでは、ネイパームがニヤニヤしながら外を歩き宇宙を車で旅する内容となっており、悲壮感は全くなく、自分たちが全身することに対する期待や、自然の力に対するメンバーの信頼を感じました。

 はち切れるようなこの世に対する期待を、時々は唾を飛ばしながら、時々はゆっくりと楽器を聴かせながら表現しています。蛇行する河のように、転がる石のように、複雑にリズムと階調を変えながら、「お前ら一つとして思い通りにいったことあるのか」「だから面白いよねえ」と、ニヤニヤしながらメンバーが演奏しているようでした。本当にあるのかどうかわからないような宙空に撒き散らす彼らの演奏から、頼もしいこの世の期待を見ることができます。最高のアルバムです。

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