見出し画像

『プリズム』/ ポルノグラフィティ を考察。


今回も、例によってポルノグラフィティのお話。
比較的新しい曲ながらも、"私的"ポルノグラフィティBEST5に入っている珠玉の一曲についてお話しします。

さて、ご紹介するのは『プリズム』という曲。
2019年7月31日に、通算50枚目のシングルとしてリリースされた「VS」に収録されているカップリング曲です。

(ポルノグラフィティ公式HPより抜粋)



以前の記事で取り上げた『海月』という曲もシングルのカップリング曲でした。そうなんです。ポルノグラフィティはカップリングも名曲の宝庫なのです。
シングル曲で有名な「アゲハ蝶」や「サウダージ」などといった面々にも引けを全くとらない、非常に強気で生き生きとした楽曲がつまっているのが、ポルノグラフィティのカップリング曲です。


そんなカップリング曲の中から、なぜ『プリズム』という曲を選んだのか、どんな魅力が詰まっているのか、というお話をしていきます。



『プリズム』を選んだワケ

書きたい、語りたい曲は沢山あるのですが、どうしてもこの曲を「いま」書かなければいけないきっかけがありました。

それは

18thライヴサーキット"暁"オーラスでの突然の披露

です。


これについて、もう少し詳述します。

ポルノグラフィティは、2022年9月~2023年1月の期間、Newアルバム「暁」を携えた全国ツアーを開催しました。そのオーラスとなる1月24日の日本武道館でのライヴに、私がオンライン配信で参戦した時のことです。

このライヴは、アルバムの収録曲を軸に、歴代人気曲も披露しつつ…と、非常にバランスの良い選曲がなされていたのですが、そのセットリストの中で特に異彩を放った選曲枠が、「過去のライヴでほとんど、あるいは一度も披露されたことがない」、通称 “稀(まれ)ポルノ” でした。私が実地参戦した福井のライヴでは、22枚目のシングル「リンク」に収録された「Stand for one`s wish」という曲が”稀枠”として披露されたのですが、レアな曲でありながら、ライヴにぴったりのアップチューンだったため、会場もすぐ一体となって手を振り上げるほどの盛り上がりを見せていました。
また、別の日程では同じ”稀枠”で「オニオンスープ」(これもレア!)という曲が披露された時もあり、基本どちらかの曲が選曲されているようでした。そのため、当然この日本武道館のライヴでもきっと、この2曲から選ばれるのだろうと予想していました。

今回話題に取り上げる『プリズム』もまさしく、この”稀枠”の条件を満たすライヴ未演奏曲の一つだったのですが、当時の私の頭からは、なぜか完全に抜け落ちてしまっていたのです。


(ここから少し、その瞬間を実況風に)

――――――

久しぶりの暁ツアー参戦に、自宅のテレビの前でも興奮が抑えられない。
楽しみにしていた”稀ポルノ”の曲順が迫ってくる。

と、その前にある異変に気付く。
”稀ポルノ”枠の直前に披露された曲が、別の選曲に変わっていた!
「ははーん、今回はここを変えてきたわけだ。」
なんとなく変えてくるだろうなと思っていた曲でもあったので、
それで私はすっかり油断をしてしまったわけです。

今回変えてくるのはここだけだろうと。


そしていよいよ、"稀ポルノ"の時間に。

…?聴き慣れないイントロのアレンジだな。
これ、何の曲だろう?自分が聴けていない「オニオンスープ」でもない気がする。




………!!!
え、これって、まさか………。



曲名の字幕に『プリズム』という文字が浮かび上がる。


刹那に押し寄せる感動と驚嘆に、
思わず息を止めてしまった。

―――――


…ということです。


全く予想だにしていなかったタイミングで、突然の爆弾投下。
これが、今回書こうと思ったきっかけでした。
少し期間が空いてしまいましたが…。


イントロで『プリズム』だと認識した瞬間、私は思考が完全にショートしてしまいました。すぐ立ち返った後は泣きながら手を振り上げ、力いっぱい歌ったことを覚えています。(自宅です)

それだけ、私が心から強く惹かれていた曲でもありましたし、いつもライヴ前に作成する”妄想セットリスト”にも必ずこの『プリズム』を選曲するほどに、自分にとっては「ライヴで絶対に聴きたい曲、聴かなければいけない曲」だったのです。


この曲は必ず、もっともっと眩しい光を浴びて輝くべきだ。
そんな風に、ずっとずっと考えていました。

それなのに…
何度ライヴを重ねても一向に演奏される気配がない…。

今日まで、20周年記念の東京ドームライヴや、コロナ禍の初オンラインライヴ、そしてポルノグラフィティを”続けていく”決意を表した「”続”ポルノグラフィティ」など、(後述しますが)”とある”テーマを掲げた『プリズム』が選ばれるにおあつらえ向きの舞台が、整えられていたはずなのに。
それでもやっぱり演奏されない…。
もう諦めかけたそんな折の、突然の披露だったのです。


このような過程があったからこそ、なぜ「いま」この曲が選曲されたのかを紐解いてみたくなったのです。そのために、まず『プリズム』という曲が持つ魅力を解剖しましょう。



『プリズム』の魅力

1.曲の魅力

1つは、なんといっても印象的なイントロでしょう。
独特で特徴的なギターアルペジオが開始直後からかき鳴らされ、以降楽曲全体の軸として展開されます。これについては、音楽ナタリー記事にてVo.の昭仁さんが以下のように言及していました。

この曲は2年くらい前からあって、それこそきらびやかでポップなアレンジだったんですけど、今回改めて田中くんにお願いしてみたんですよね。その結果、かなりの変態アレンジを上げてきてくれて(笑)。

音楽ナタリー(https://natalie.mu/music/pp/pornograffitti05/page/3)より一部抜粋

「田中くん」というのは、アレンジャーとしてポルノチームに参加している田中ユウスケさんのことです。
田中さんは、過去にもポルノグラフィティの人気曲のアレンジを数多く手がけてきました。各曲の説明は割愛しますが、「瞬く星の下で」や「君の愛読書がケルアックだった件」など、爽やかながら少しクセがあり、後味の良い感じのポップチューンが得意の印象でしたが、その真骨頂が、この『プリズム』にも活かされています。

そして2つ目は、サビのドラマチックな展開です。
Aメロ、Bメロと徐々に膨らみを持たせながら、サビで一気に駆け抜ける疾走感と、そのまま解放へと突き抜けるカタルシスが本当に気持ち良いです。
2番のサビ~壮大な間奏への繋がりも秀逸で、前述した変則的なリフが浮いてしまうことなく溶け込み混ざり合い、一筋の通った光のごとく輝くメロディラインを演出しています。
サビの直前にカットインする、細く点滅するウィンドチャイムのような音も、それを受け放たれる荘厳なストリングスも、すべてが『プリズム』というコンセプトにとってかけがえのない色彩になっています。



2.歌詞の魅力

さあ、ここからが本番です。
歌詞の魅力を語りながら、『プリズム』に込められたテーマに迫っていきます。

歌詞に込めた想いを、作詞作曲を担当したVo.昭仁さんは以下のように語っています。

デビュー以降、経験するすべてが新鮮なめくるめく世界の中で信じるものを追い続けてきたわけですけど、僕たちの進むべき道を指し示してくれるのはいつだってファンの皆さんやスタッフの方々だったんです。だからこそポルノグラフィティはここまで来ることができた。なので、そんな皆さんに対する今の思いを歌詞に集約して込めた感じですね。

音楽ナタリー(https://natalie.mu/music/pp/pornograffitti05/page/3)より一部抜粋

もう、なんなんですか。
この言葉を引用しているだけでもう泣きそうですよ、こちらは。

お分かりいただけたでしょうか。
これが『プリズム』の、そしてこの曲を愛し、この曲について書きたいと決めたすべての核心です。


そう、『プリズム』のテーマとは
「ファンや関わったすべての人達への感謝」
です。


一読すると、好きな人の姿を追い求める淡い恋愛を歌っているようにも思える表現も、ポルノグラフィティがファンや関係者に向けた愛情表現であり、感謝の言葉だったのです。


感謝をしたいのはこちら側なのに。

少し考えれば、ファンがそう思ったり感じていることも分かるはず。いや、もうそんなことは絶対に分かりきっているはずなのに。
それでもポルノグラフィティは、真っすぐに向かい合って、こうやって愛と感謝を届けてくれるのです。言葉だけでなく、歌にして届けてくれるのです。


少し前、「惑ワ不ノ森」と題されたライヴが開催された時も、本編最後の曲「青春花道」が披露される寸前に、彼らはこう告げてくれました。


「惑ワ不ノ森を抜けた先にあったのはそう、”君”なんです。”君”なんだ…!」

言わなくても分かっている、心では繋がっている気がする、そんなささいな感情まで、様々な手法を凝らし優しく掬い取ってくれて、そして力強く真正面から受け止めてくれる。その純粋な彼らの”好意”にあらためてハッと気づかされたのが、『プリズム』だったのです。


折角なので、『プリズム』の中で好きなフレーズをいくつか解説します。

まずはこの一節。

取り憑かれたような真っ白な恋だった
どこまでも追いかけていた

この「真っ白な恋」というのは、音楽や芸能活動に対する憧れに近い気持ちを表しているのだそう。前述の通り、目に映るもの、経験するものすべてが新鮮な世界の中でポルノグラフィティが信じて、追いかけ続けてきたものがあり、それらに対する純粋な気持ちを恋に例えて歌っている部分です。

次の一節。

眩しくて 遥か遠くて 目を逸らしてしまえば 見失いそうで
気付いたら指をさして示してくれたのは君だった

光輝く、まだ見ぬ先を信じ続ける彼らにも、順風満帆にはいかない時期や、悩み惑う時期があったそうです。
20周年記念ライヴで披露された初期の名曲「n.t.」でも、その心境がまざまざと綴られていました。そんな時に、進むべき方向を指さして示してくれていたのは、”君”。つまり、ファンやスタッフの人たちだったと、そう伝えてくれたのです。

また、ここの表現で読み取れるのは、やはり彼らの変わらない「横並び」で寄り添う姿勢です。
1年と少し前、暫くの充電期間を経て新始動したポルノグラフィティのNewシングル「テーマソング」は、ポルノでは珍しい直球の応援ソングとしてリリースされましたが、そこで描かれたのも決して「背中を強く押す」ような鼓舞ではなく、「君みたいなひともたくさんいるから、安心して。一緒に踏み出そうよ。」という優しい支えでした。
特にここ数年強く感じる、ポルノグラフィティのファンに対する寄り添い方がとても嬉しいです。


まだいきます。次の一節。

夢中になれるものに出会えたら
それだけで自分が少しだけ誇らしい
おんなじように思う誰かがどこかで
笑っているならそれでいい

何かを達成することを目的に頑張るのは、もちろん悪くない。でも、それを成し遂げられなかったとしても、責めなくてもいいんじゃないか。
そもそも夢中になれるものが出来た時点で素晴らしいことだし、同じ夢を共有できる人を想えば、それはもっと幸せなことだよね。

そんなメッセージと解釈しました。こんな風に想ってもらえるだけで、落ち込みそうなときも、また一歩踏み出せる力に変わると思いました。


さいごに、この一節。

止まらない時間のなかで探しているんだよ 重なる声を
それはきっと奇跡のようなめぐり合いなんだと思うんだ

私たちが過ごす時間は、決して巻き戻しも一時停止もできません。
自分の時だけ止めて、誰かを待っていることもできません。
あっと思う一瞬ですら、誰にも止めることはできないのです。

そんな中で、夢中になれる何かを見つけられたこと、愛する人と出会えたこと、そして、同じ時の中で言葉を交わし、想いを重ね合わせることができること、それらすべてがまさしく”奇跡”的な邂逅なのです。
その奇跡を愛おしく大切に温めることで、ポルノグラフィティがファンや関わる全ての人たちに感じるような優しい愛を、呼び寄せることが出来るのではないかと、そんな風に思いました。


なぜ「いま」披露されたのか


最後にあらためて、なぜ「いま」この曲が披露されたのか、私の考えをまとめて結びとします。





なぜ、『プリズム』はそのお披露目にふさわしい舞台を何度もスキップし、満を持して”暁ツアー”のオーラスに抜擢されたのか。

時系列で確認してみます。
おそらく、20周年記念の東京ドームライヴでは、これまでの大いなる感謝を「ポルノグラフィティ自身の物語」にスポットライトを当てることで表現されたのではないかと思います。

冒頭の「プッシュプレイ」~「VS」で締める構成は、まさしく彼らの成長物語とこれからの決意を表するにふさわしい構成でしたし、その間に選曲された「n.t.」では、成長過程の葛藤と不安も織り交ぜることで、まるでポルノグラフィティが辿ってきた軌跡を追体験できるような、そんな演出でファンを楽しませてくれたのだと感じています。

つまりここでは、”ポルノグラフィティとファンとの対話”というよりも、”ポルノグラフィティ自身の物語そのもの”を「ギフト」にしてデビュー20周年という記念すべき日に私たちへ届けてくれたのだろうと思います。

おかげで、このライヴの一時は、彼らと同じ目線からポルノグラフィティを体感することができました。




しかし、そのわずか半年後に、世界が一変する出来事が起きました。


そう、新型コロナウイルスによるパンデミックです。


コロナ禍によって、音楽シーンはかつてない混沌の渦に巻き込まれ、光の屈折すら許さない闇が交錯するようになりました。そして、奇しくもそれが、ポルノグラフィティが辿ってきた、あの眩しくて光が乱反射するような新鮮で目まぐるしい日々の記憶をよみがえらせたのではないか、と考えました。

暗闇が覆う中で、それでも強く反射する光。それは数えられる単位ではなく、無数にあったはずです。


「こんな状況でも、灯りを消さずに強く光を放ち続けてくれている。それこそがファンや支えてくれた人々の存在そのものなんだ。」


こんな風に、私たちファンの強い想いに気づいてくれたのではないか。


まぶしい光の中、行先を示すだけの存在じゃない。
その無数の光それ自体も、ファンからの”愛のかたち”だったのだと。
デビューして間もない頃、夢や憧れが放っていた光の中に確かに存在し、
彼らを優しく支え続けた光もあったのだと。
あらためて感じて頂けたのではないかと思いました。


だからこそ、彼らはその”アンサー”として「暁」をしたため、ようやく混とんとした世界の夜明けを、共に信じてくれたのではないかと考えました。

|
|
|


なぜ「いま」披露されたのか。
それは、彼らが世界を覆った暗闇の中で見た、『プリズム』の光の正体、その答え合わせだったのだと思います。

ポルノグラフィティが創造した「暁」に、一筋ではなく、今度は乱反射するほどのプリズムを。これからも届けていこうと思います。



今回の記事はこれで以上となります。
ここまで目を通して頂き、ありがとうございました。



【引用サイト】
https://natalie.mu/music/pp/pornograffitti05/page/3

【参照URL】
https://takara-asahi.com/pornograffitti-prism/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?