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アニメ背景マンが小学校で職業について色々しゃべった話

以前ツイッターで話したこれが無事終わりました。

お相手は小学校の漫画クラブの子たち。キャラ絵を描く子が多いと事前に聞いていました。(僕の専門は”背景”だと何度も伝えたのですが……)

なのでアニメーターの友人も誘ってみましたが多忙につきNG。
一人で小学校へ赴くことに。
キャラ絵は専門じゃありませんが技術よりも思考法について話したので何とかそれっぽいことを言えたと思います。

初めての経験でドキドキでしたが終わってみれば楽しかったです。

小学校で職業の話をした経験がある人は少ないんじゃないかと思い、報告も兼ねて感想をツラツラと書いていきます。

記事の内容の確認と掲載許可は頂いております。

持っていった本。
・カラー&ライト
・空想リアリズム
・男鹿和雄画集
・学校では教えてくれない風景スケッチの法則
・江口寿志 アニメーション背景原図集
・水彩 自然を描く(あべとしゆき)

小学生でこれらの本を読み模写、または実践し続けたら最強になるだろう書籍を持っていきました。
値段が高いものは親に頼んで買ってもらってくださいと伝えました。
いくつかの本は学校の図書室に置くか検討してもらえるそうです。感謝。

僕が仕事で描いた絵が載ってる「ヤマノススメ 公式設定資料集」も持っていきました。
「ヤマノススメ」を知ってる子はいませんでした。

あと僕が水彩で描いた風景画数点と学生時代のクロッキー帳(かなりでかい)も持っていきました。そのせいで大荷物に。

ここから当日の流れをざっくりと書き連ねます。

まず現地についたら正門前で知人の先生を待ちます。
「関係者以外立ち入り禁止」「監視カメラ作動中」の看板がついてる正門前で大荷物の男がうろついていたら通報されないか心配でした。

門を開けてもらい中へ。
来賓室で校長先生、教頭先生とあいさつして軽くプレゼン。
知人の先生は「本物(の絵のプロ)ですよ」と僕を校長先生たちに紹介してました。
その後、顧問の先生が来たので子供たちの待つ図書室へ向かいます。

漫画クラブに所属するのは4、5、6年生の子たち。
総勢30人ほど。実際に会ってみると数字より多く見える。
テンションが高い。先生は大変。

このとき顧問の先生も「本物(の絵のプロ)だぞ」と僕を生徒たちに紹介。
その後も何回か「本物」と言われて戸惑いましたが、もしかしたらそれが子供たちを真面目に話を聞くモードにさせるスイッチなんですかね。

「トトロ」、「鬼滅の刃」
は人気。両作品とも知ってて良かった。
好きな漫画、アニメの模写を鉛筆、ペンでしている子が大多数。
コピックで色付けしてる子は数人。風景を描いてる子はいない。

アナログ作業の子ばかりだったので「SS(スモールエス)イラストメイキングブック」「アナログ画材MIX」「水彩 vol.01、02」なども持っていけば良かった、と終わった後に思いました。後悔。

デジタル環境がある子は6年生2,3人。
フォトショップを知っている人は0人。
クリップスタジオは名前だけなら数人知っていました。

座談会の時間は1時間。
どう話せば子供たちに分かりやすいか、前日まで悩んでましたが「10教えて1覚えていれば良い方」の考えのもと、分かりやすく言おうと躍起になるよりとにかくたくさんしゃべって広く浅く伝えるようにしました。

子供たちは話を聞いているだけだと早々に飽きるだろうと色々対策も考えてましたが意外にみんな話題に興味津々だったので嬉しかったです。

当初の予定を変更して僕が40分ほどひたすらしゃべってました。

4年生らしき子は途中で飽きてましたが。
全身を揺らして飽きたアピール!!
話が長くて申し訳ない。

僕が持っていったアナログの風景画もテーブル上に並べて見せたら反応がかなり良かったので安心しました。
トトロの背景模写しといてよかった。

デジタル絵と違ってアナログ絵はズラッと並べて見せることができるのでこういうときに効果的ですね。

まず最初に話したのは職業の説明。よく混同されるアニメーターとの違い。
ざっくり言うと画面上で動いているものを描くのがアニメーター。
止まっているものを描くのが美術背景。

スタッフロール見てもらうと「美術・背景」などの表記で数人載っているのがそれ。
あんまりスタッフロールとか見ないと思うけど、と言ったら数人から「見てるー」という声。素晴らしい。将来有望。

アニメ背景の仕事を目指してる人はさすがにいなかった。
そもそも将来の仕事と言われてもピンと来てない子が多数。
6年生の中でイラストレーターになりたい子が数人。

質問はいつでも大歓迎です、と言っても最初の方はまだ無反応。

あらかじめ顧問の先生から頂いていた職業についての質問一覧を頼りに話を進める。

・どんな種類の背景を描くのが大変か?
「個人的には人工物が大変。自然物は精神的にかなり楽。
人工物はきちっと描かないといけない。生活感を出す工夫も考えないといけないから大変。
また、遠景や奥の空間を手前のもので隠して時間短縮を図りたい場合など、自然物は融通が利く。人工物は融通が利きづらい」

・背景を描くときは何から描くのか?
「最初に具体的な完成形がイメージ出来てるといい絵になりやすい。
なので風景画の場合は光源を決めて全体の光と影をざっくり決める。
メインになるものを決める。シルエットも大事。

キャラ絵も過程はほぼ同じ。
表情などの細部から描かずに全体のシルエットをざっくりと小さいサイズで描いてみる」
「単純化」と言えばよかった、とあとで後悔。言葉が出てこなかった。

カラーラフも勧めたかったですが色付きで描いてる子、デジタル環境の子が少ないので省きました。

・仕事ではどんな道具を使っているのか?
「仕事はパソコンとペンタブレット」
フォトショ、クリスタを知っている子が少ないので話を広げられず。

・普段どんな練習をしているのか?
「普段からしているわけではないが、模写は大事。
風景でもキャラでも各パーツの形、比率、色味の勉強になる。
集中してやるのが大事。また、できた絵を1日置いてから見ると間違いや不自然な部分に気づきやすい」

・今いる会社に入ったきっかけは?
「学生当時深夜に放送してた『たまゆら』というアニメの背景を見たのがきっかけ。広島の竹原がきれいだった。
最初からアニメ背景の道を志していたわけじゃなく、就活の時にそういう仕事もあると知って調べた」

・小学校、中学校の時は何をしていたか?
「絵に関しては何もしていなかった。絵を描き始めたのは高校2、3年生のとき。
ちゃんと勉強し始めたのは専門学校に入ってから。
なので小学生から絵を描いてる君たちの方が優秀

小学生のときに姉に絵を見せたら「下手クソ」と言われて心と筆が折れたエピソードを披露。ややウケた。

「絵はお互いほめ合うのが大事。やる気の維持が何より大事。
厳しくしても反骨心で上手くなるより先に心が折れる。
誰かに絵を見せられたらウソでもほめてあげて。
厳しいことを言ってくる人からはなるべく離れよう」

この辺りの話は見学に来ていた教頭先生も聞いていて後々「良い話でした」と言ってくれました。

・絵を描くのが好きな人、漫画が好きな人はどんな道に進んでいるか?
「多種多様。絵がうまくても絵に関係ない仕事に就いてる人もたくさんいる。
趣味で描くのは好きだけど仕事(他者の依頼)で描くのは好きじゃなかった、と就活のときに気づいた人もいる。自分はどういうタイプか、早めに気づいた方がいい」

一度だれかの依頼で描いてみるといいかも、と言い忘れた。後悔。

先生からの質問終了。

その後、生徒から出た質問は2つ。

・奥行きを出すにはどうしたらいいか。
5年生らしき女子から。
手前にあるものは大きく、遠くのものは小さく描く。
顧問の先生がプロジェクターで一点透視の道路の写真を写してくれました。
道は遠くに行くほど細くなる。写真を見てみると分かりやすい。

歩道の生垣に注目。ほぼ同じ大きさなはずの生垣が奥に行くほど小さくなっている。

パースについても軽く触れる。うまく説明できなくて申し訳ない。
空気遠近法も軽く触れる。

とりあえず「遠近法」、「パース」という単語を覚えておいて、と伝える。


・炎や煙の描き方。
男子から。
その子はワンピースに出てくるような絵が描きたいらしい。
ワンピースの単行本も持っているとのこと。なので実際に漫画内に出てくる炎や煙のコマを見ながら真似して描くのを勧める。

すでに出来上がった参考がある場合はドンドン真似をしまくるのが大事。

一つのものだけから真似るとパクリと言われる恐れがある。
複数から真似るとオリジナルになる。

(ここら辺で40分経過)

残りの時間は子供たちが描いた絵を見せてもらい色々アドバイスをすることに。

見せてもらった絵↓  全部6年生女子2人が描いたもの。
・鬼滅の刃19巻表紙(伊黒小芭内)の模写。
コピックで着色。かなり上手。
模写した絵をスマホで撮って印刷、またはパソコン上で重ねて見るとずれてるところが分かりやすいので勧める。
このまま頑張って、とエールを送る。

・禰豆子(アニメ版)の模写。
コピックで着色。
くわえてる竹筒の立体感が出せない、とのことだが十分出せてる。自信持って。
逆に竹以外がベタ塗りだからハイライト部分は白く残しておいた方が良いかも。
このまま心の筆が折れないように頑張って、とエールを送る。

・善逸(アニメ版)の模写。
コピックで着色。
顔に落ちる影のグラデーションがうまくいかないとのこと。
グラデは影色1色をぼかしてのばすより、濃い色から薄い色4色ぐらいで塗った方がきれいかも。
コピックは広い面を塗るのに適さない(個人談)と思うので透明水彩で塗ってみるのも勧める。

また、全体の影が黒やグレーで塗られていたから参考元の絵をよーく見てみて。もしかすると違う色かも、と伝える。
筆を折らずに頑張って、とエール。

・地縛少年花子くん3巻表紙の模写。
まだ下書きの状態。
左側のキャラがなんか元の絵と違う。どうすればいいか、という質問。
視線の確認、キャラとキャラの合間の形を見る(ネガティヴスペースだっけ?)、自分で同じポーズをとってみる、などを提案しました。
このまま頑張って。

(この辺りで終了時間に)

・終わってみて。

終わってからも色々質問をしに来てくれる子がいたのは嬉しかったですね。
先生いわく、一部の生徒は見たことないぐらいウキウキだったらしいです。不安なところもあったので救われた気分。

就活の話はさすがに早かったか、と反省してます。脱線も多かったので言いたいこと全部は言えませんでしたが楽しかったです。
終わってからドッと疲れましたが。

先生たちの反応もよく、来年度も呼ばれたら是非行きたいです。
絵を描くクラブは他にもあるそうなのでそちらでも話してみたいですね。

以上です。ここまで読んで頂きありがとうございました。