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西郷とアイパーと竹ぼうきと襟足#2
前回からの続きです。
まだの方は先にそちらをどうぞ
↓
西郷とアイパーと竹ぼうきと襟足#1
「現金で買うから」
え?現金で買う?
てか払えるの?
そう思った俺の思惑が顔に出たのか
「あ~俺こういう会社やっているから」
胸ポケットから皺だらけの名刺を出す西郷。
なんでこのジャンルの人たちは人に渡すための名刺を裸でポケットに入れて汗とか油とかでしわくちゃにしてエイジングを楽しむんだろうか。
名刺には木村興行 代表取締役会長とある。
その後ろでは誇らしげに俺を見るアイパー頭の旦那。
西郷が会長ってことはこいつが社長か?
「このくらいならすぐ出せるっしょ。余裕で」
おいアイパー。
言っとくけどお前が凄いんじゃないからな。
そこに居る西郷が頑張っただけでお前はただその息子だからな。
そしてその暴れているクソ餓鬼どもと何も注意しない竹ぼうきのせいでお前らの印象はがた落ちだからな。
一番手の買い付け。
現金。
案内当日の即買付。。。
本来ならこんなに嬉しい話はない。
目の前の現金客をまとめずに何が不動産営業か。
・・・・う~ん。でもね。
正直なところ貴方たちに売りたくないって僕の心が叫んでいるのよ。
不動産営業としての勘もあんたたちを相手にしちゃいけないってビンビン反応している。
あと売主さんもきっとあなた達には譲りたくないって言うと思うんだ。
そしてこのお家も貴方たちに買われたくないって言っている(はず)
さてどうしよう。
現金客を断るのは至難の業だ。
どんなトークで断ろうか。
「ん?この資料のコレに名前書けばいいの?」
チ・・・見つかったか。
アイパーが玄関に置いてあった物件資料を探って買付証明書に名前を書きだす。
「これって買った後に俺たちでリフォームするんだけど、その分の値段って下がるでしょ?」
できるわけねぇだろ〇カ!周りの盛況ぶりを見てみろwww
「すみません。見ての通り他のお客様も検討されてる物件なので減額の交渉はお受けできかねます」
「マジかよ。そんなにいい物件じゃねえのにお高くとまってんな」
さらっとムカつくことを言うアイパー。
ウザ。
こいつまじでウザ。。。
購入明細を見ながら西郷が割って入る
「じゃあこの仲介手数料っちゅうのは安くなるだろ?コレは絶対に満額じゃないといけないっていう法律じゃないもんな」
は?何言ってるの?仲手は確かに満額じゃなきゃいけないっていう法律はないけども・・・
「いえ。すみません。仲介手数料も満額頂いています」
「は?なんで?この物件を通りがかりに見つけたのはわしらだろ。
そちらさんの広告を経由しているわけでもない。つまり自分で見つけた物件だ。そしてわしがあんたに何かを依頼したわけでも無い。
つまりあんたのとこの広告も経由してないし、依頼もしていないのにこの仲介手数料っちゅうのを満額で請求するって言うのは納得いかんな」
西郷は長年商売をしているだけあって少しばかり口が立つようだ。
論点が合っているような無いようなとにかく腹の立つ言い分だ。
確かにうちはネットの広告も落としているし、現地に看板も付けていない。
そして勝手に入ってきただけだよ。お前らが。
招かれざる客としてな!!!!
「納得いただけないなら結構です。こちらの物件を仲介する事はできませんので。なのでその買い付けも受理できません」
淡々と西郷を相手にしているとアイパーが凄んできた。
「は?ふざけてんの?お前不動産屋だろ?買いたいって言っている客をお前に選ぶ権利あんのかよ!」
wwww
はい。あります。それが仲介の仕事です。
「はい、私たちの仕事は”ちゃんとした人”にちゃんとした報酬を支払ってもらってちゃんとした契約をして安心して取引ができるように努めるものです。その報酬を支払いたくないというなら取引を進めるわけにはいきません」
ちゃんとした人って協調したけど伝わったかな?w
アイパーが更に凄む
「は?ふざけんなお前、お前じゃ話にならん!社長呼べ!ここに!」
「私が代表です」
「ぐ・・・・」
一瞬アイパーが黙る。
「じゃあよ!○○××△□・・・!!!」
「なら◎▶××□◆!!!!」
そんなこんなでアイパーと西郷が食い下がってああだこうだの論争が始まった。。。
あまりにもくだらない言いがかりなので割愛する。
不毛な論争は10分ほど続き、アイパーと西郷が凄んでいる間に何組かのお客さんはそそくさと帰っていった。畜生。こいつらのせいで見込み客を逃した。クソが。
「あ?何?じゃあなに?結論は値下げもしないし手数料も下げないってこと?」
何度も言ってんじゃんw
「はい。それに納得がいかないならお帰り頂いて結構です。」
「じゃあコレはなしにできるよな?登記の手数料?」
「できません」
「じゃあコレは?火災保険」
「できません」
はぁ、、、いつまでこのやり取りをやるんだよこいつら。。。
もう諦めて帰れ。
そこで玄関から不意に入ってきたお客さんが一組。
他の来客はこれまでの騒動を遠巻きに見ていたが、俺とアイパー&西郷とのやり取りを聞いていないせいかこの人は普通に話しかけてきた。
「金城さん!朝見せていただいた水野です!ついさっき銀行の融資承認をもらってきました♪買い付け申込書も記入してきたんですけどこちらでいいですか?どうしても取られたくなくて急いで来ました!」
水野さんは昨日も一番に問い合わせをしてきて今日も一番目に案内をしてすぐに銀行に行ってもらった方だ。
融資担当者にお願いをして事前承認をスピーディに貰ってきたらしい。
まさか半日で承認を取ってくるとは。
そうとう個信がいいんだろうな。
そしてどうしてもこの物件を欲しいという意気込みが見て取れる。
ただ、仕事に戻らないといけないという事で水野さんは買い付けを出してすぐに出て行った。
「あ?なに今のヤツ?今うちらが現金で買うって交渉をしているんだから二番手ってヤツだろ?な?」
とアイパー。
「だな。うちは現金。この方は銀行融資。キャッシュを優先するのが商売の基本だ。」
と西郷。
いやね、あんたたちは一番手にもなっていないのよ。
ただただここで不毛な交渉をしているだけ。
「いや、木村さん達はさっきから減額だの手数料払わないだのごねてますよね?それで買い付けは受け付けれないって言ってるじゃないですか。だから一番手が木村さんとかそういう立場じゃないんですよ」
アイパーが叫ぶ
「は?でも後から来たさっきのやつは確実に二番手だろ!こっちが先だし現金だしよ!」
ふぅ。。。いい加減にしてくれよw
「じゃあ今もしも別の方がキャッシュで即満額で買うって来たらそちらを優先してもいいんですか?交渉も無しの人で」
「そんなヤツいねぇじゃねえか!」
「いや、もしかしたら今から来るかもしれないじゃないですか。木村さんたちみたいに」
西郷が割ってくる
「いや、じゃあよ。今日にでも現金用意して契約できるよ?すぐに卸してこようか?」
いやね。そういう問題じゃないのよ。
「では例えば木村さんが現金を卸しに行っている間に別の方が現金をお持ちで来場されてその場で契約するって言ったらそちらを優先しても構わないという事ですか?」
「は?そんな客いねぇだろ?何で見る前から現金を用意してくるヤツが居るんだよ!」
怒りでろれつが怪しくなってくるアイパー。
バタンバタン!ドタドタ!
相変わらずはしゃぐ餓鬼ども。
うるせぇな・・・。
「うっせぇな!お前ら外出てろ!お前も携帯ばかりいじってねぇで餓鬼ども追い出せ!」
お、アイパーまともな事言うじゃん。
竹ぼうきはアイパーを睨みながら襟足たちを連れ出す。
てか最初からずっとうるさいし、邪魔だってわかっていたらもっと早く注意しとけよwww
てかもう帰ってくれ!頼むからwww
西郷がどすの効いた声で話しかけてくる。
「ねえ、そういや兄ちゃん名前は?名刺も貰っていないけど?」
いや、お前らが勝手に入ってきてドタドタやって挨拶もしなかったんだろがw
「はい。こういうものです」
「金城さん。わかった。じゃあ満額で買うよ。交渉はなし。全部そっちの言い分を呑むよ。現金だから話が早いだろ?」
今さら遅ぇよwww
「いえ、現金でも銀行融資でも売主様と私たちが頂く金額に差は出ませんので。不動産仲介の取引において現金か融資かというのはお支払いが少し早いか遅いかの違いしかないので」
「わかったわかった。負けたよ。じゃあウチが今売られている金額より高い値段をつけるよ。100万プラスでどうだ?売主さんも喜ぶだろ?」
お前の息子はさっき値下げしろって言ってたじゃねぇかw
てか何目線で偉そうに喋ってんだよwww
「いえ、、、それも同じ事で別の方がさらに高い価格を付けてきた場合にそちらを優先しても構わないという事になってしまいますよ?」
「じゃあ金城さんに別で100万だすよ。仲介手数料と別で。それでどう?」
www100万の個人バックw
お前さっきは仲手払わんって言ってたやんwww
「申し訳ないです。それは信用にかかわる行為なので出来かねます」
アイパーがにらみを利かせながら大声を出す
「じゃあどうすれば俺たちが買えるんだよ!」
完全に本性を現したアイパー。
いや、最初から隠してもいないかw
もう終わろうよこの話。
「はい。先ほどの買い付けを持ってきてくれた方と木村さんとで同時という事で売主さんにお話は持っていって、番手は関係なしに売主さんに判断してもらいます」
これが最大の譲歩案だ。
これなら納得するだろ。
さあ帰れ。
売主さんには経緯を説明するからお前らが選ばれる可能性は限りなく低いけどな。
「あ?じゃあさっきのあの人が諦めたらいいってわけね?その人と直接交渉するから連絡先教えてよ」
www教えるわけねぇだろ!
「すみません。個人情報ですから」
「じゃあ○○××△◆×□・・・・!!!」
また始まったよ・・・。
その後もあの手この手で一番手に繰り上がろうとするアイパーと西郷。
残念ながら長年不動産をやっているとね、あんたたちみたいな強引に番手を上げて来ようとする輩の対応には慣れちゃってんのよ。
なんて言うのかな。
残念ながら食い下がれば食い下がるだけ俺の中での貴方の番手は下降していくのよ。
ふぅ。。。なかなか諦めないな。疲れてきた。
「あの~すみません金城さん。少しいいですか?」
後ろから女性に声をかけられた。
更に買い付けが入る事に焦ったアイパー。
「あ~!!!ダメダメ!今俺たちが交渉してるから!あんたはもう諦めな!俺たちが買うんだから!」
「え。ダメです。すみません」
「は?さっきから俺たちのやり取り見てただろ?なんかあんたが後ろからずっと見てたの気づいてたんだよ。なんか言いたそうにしているな~ってさ。買い付けはウチが先だから諦めな。な?金城さん」
あ、ずっと見てたんだ。人が多すぎて気が付かなかったw
じゃ、この場の説明も要らんか。
「私、この家の売主です。荷物を取りに来たらなんだか騒がしいのでお話聞かせてもらっていました」
「あ・・・。」
黙り込むアイパー。
取り繕うように低姿勢で話しかけてくる西郷。
「あ~売主様の奥様でしたか。騒がしくして申し訳ございません。私こういうものです」
これまたエイジングが効いた名刺を渡す
「とても素晴らしいご自宅なのですぐにでも現金で購入をさせていただきたいと思っていましてね・・・」
「すみません。あなた達に売り渡す気はありません。とても気に入っている物件なので。お断りさせていただきます」
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奥さんの一言ですべてが終わり無事に水野さんと契約に至りましたとさ。
めでたしめでたし。
~完~
沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!