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コラボ#2

前の続きです。
まだの方はそちらを先にどうぞ
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コラボ#1


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「そんでなに?お客さんが居るってこと?何度も電話してきてるけど」
「いや、まだ居ないんですが・・・」

居ないんかい!!!ww
はぁ・・・なんなんだお前は・・・

「お客さん居るなら紹介してもいいけど買いの分かれね」

紹介NGって言うと囲い込みだなんだと文句言うヤツ居るしな・・・

あと片手満額を狙っているならこれで引くだろ。



「わかれ。。。って何ですか?」


・・・。


「忙しいから自分で調べて。じゃ」


ツーーー・ツーーー・・・




なんだこいつ。
いつもニコニコ優しいと評判の俺が思わず地場二桁のおっさん並みの対応をしてしまったじゃないか。


セットバックや狭隘協議、隣地ブロックの老朽化、後見の手続きを絡めた売却。
古い物件だけにたくさんの重説事項がある。
こんな奴がお客さんに説明できるとも思えない。

まぁ、こんな奴に着いて来る買い客も居ないだろうからどうでもいいけど・・・

なんにしてもイライラした時間を返して欲しい。。。

はぁ・・・。


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解体前の古屋がある場合の多くは、素人さんには更地のイメージが付きにくくなかなか売却の話が進まない。
相場よりも高めの売り出しも相まってやはり長期化してしまいそうだ。
専任期間に売り切れるかな?少し不安がよぎる。

そんな時に上原さんからの着信。


「金城さん。実家の話ですが少し安くしてでも早く売れませんかね?」
「あ、ちょうどその話をしようと思っていました。」
「実は先日から父の容態がおかしくなっているみたいで、病院からも長く無さそうと言われてしまって・・・」


お父さんの容態か。
時間の問題だとは思っていたけど想定より早い。
相続が起きたらややこしい兄弟が出てきて売るに売れなくなってしまう。


「では一気に500万円くらい下げてみませんか?ちびちび下げても時間の無駄になりそうです。スピード優先で相続前に決めたいと思います」
「金城さんにお任せします。よろしくお願いします。」

うん。ものわかりのいい売主さんで助かる。
スピード重視でいくなら広告もガンガン変えていこう。

すぐに500万減額することを既存のお客さんに告知し追客、各種書類の価格を修正。
後はネットの広告と現地の看板を替えれば・・・


トゥルルルー・トゥルルルー・・・

着信画面は
【コラボバカ 小町産業】


ふぅ・・・なんだよこの忙しい時に。


「はい、REGATEです」
「あ、お客さん居ます」


いつものロートーン。イライラする。

はぁ、、、居ますじゃねえし。
こっち忙しいし。
あとな、まず名乗れ。
何度も言わすな。
そしてまだ物件が残っているか、こっちのお客さんで先行の申込が無いかの確認が先だからな。
いつまでど新人みたいなことを言わすねん。

お前まじでいい加減・・・・


え・・・?

お客さん居る?


「え?お客さんって?」
「はい。あの土地を買う人が見つかりました。僕の親戚です」

あ~なる。
親戚ならお前の拙いトークでも大丈夫か。

「親戚?融資とかは大丈夫なの?その人。」
「はい。軍用地とかアパートをたくさん持っている人で現金で買うそうです」


おお♪お金持ちで融資も無し。
最高じゃん♪

ここからは業者として接しようw

「わかりました。では一度売主さんに相談しますので買い付け申込書を出してもらえますか?」
「はい。後程送ります」

「あ、あと、手数料は買いの分かれだけど大丈夫だよね?」
「はい、大丈夫です。調べました」



おお~急展開。
分かれの事も知らんかったド素人だけどちゃんと調べたんだw
変なヤツだけどこうなると少しは見直してしまうw

まずは上原さんに連絡だ。


「実は例の小町産業がお客さんを連れてきたんです。」
「え?あ~あの人。でも500万下げるつもりだったのに満額で買ってもらえるならそれでお願いしたいです」
「ですよね。ではそれでまとめさせていただきます。お父さんの事もあるのでできるだけ早く契約まで持っていきますね。」
「はい。よろしくお願いします。」



ふぅ。
いい感じに進みだした。

だが相手は素人業者。
手数料を貰うならそれなりの仕事をしてもらわんとな。


「売主さんに買い付けのお話をさせていただきました。
今週末に契約の日程を組みますので重説はそちらで作ってもらうという事でお願いします。」
「え。あ~・・・はい。わかりました。いつまでに作ればいいですか?」


いつまでにじゃなくてすぐに作りますだよバカ。
買い付けでも今週末に契約希望ってお前んとこが指定してきたんじゃねえかバカ。

「今週末なので明日までにはタタキを作って欲しいですね。そこから内容を詰めていきますので」

「たたきってなんですか?」


・・・・・・・・。


「明日までにお願いね」

ガチャ。


ふぅ。。。w
ド素人め。
だが手数料貰うだけの仕事はしてもらわんと・・・


翌日やつから届いた重説は誤字脱字だらけ、ほぼ協会から出されたテンプレ。
売主の住所や漢字も違うし何よりも物件の重要な事項を一切拾っていないw
これなら白紙のテンプレの方がまだマシだと思えるレベル。


はぁ・・・想定内だよバカ。



こうなる事も想定してこっちで重説を作っててよかった。
こいつの低レベル重説をいちいち修正する手間はかけたくない。
自分とこの部下や従業員ならまだしも、こんな赤の他人の業者に一つ一つ教えるほどお人好しではない。


「いろいろと間違いとかがあるのでこちらで作ったものでお願いします。後程メールをしますので内容を確認しておいてください」
「ありがとうございます。最初からそうやってくれたら助かります」

最初からそうやってくれたら?

イラ。。。お前何様だよ。
ありがとうございます。だけでいいだろバカ。
日本語おかしいし、、、
それとも嫌味か?俺に嫌味を言いたくてその発言か?


「そっちで製本して週末の契約時に社判押したヤツ持ってきてね。」

せめて製本くらいはできるだろう。
というかそれくらいの仕事はやってくれ。


ガチャ。



********************


契約の日。

小町はいかにもお金持ちのおっちゃんと一緒に黒塗りのレクサスでやってきた。お客さんは小町の叔父さんらしい。

「こちらが金城さん。色々勉強させてもらっているんだよ」


勉強させてもらっている。。。か。
お前は買いに入ってる仲介の当事者だからそんな簡単なポジションじゃねえからな。
仲介責任が発生すんだよバカ。勉強させてもらうとかじゃねんだよバカ。

まあ満額で買ってくれるお客さんを連れてきたんだから今は何も言うまい。


「契約書と重説にウチの社判押すので確認させてもらってもいいですか?」
「あ、お願いします」

ヤツが取り出した重説と売契をざっと確認する。
すぐに違和感に気づく。

「これってウチが作ったヤツじゃなくて小町さんが最初に作ったヤツじゃない?」
「え?あ。本当だ。間違えてるwww」


いや、間違えてるwwwじゃねえよバカ。

チ・・・。

「すみません。ではこちらにデータがありますので今からプリントして製本しますので少しお待ちください」


イライラしながら製本準備をする。

デスクに戻り製本しているとテーブルに残してきた上原さんが小町達と話をしている内容が聞こえてくる。

「はじめまして。小町さん?以前にウチの母親に挨拶したと聞いていますが・・・あと、私の高校の同級生って聞いてますけど○○学園ですか?学科が違うんですかね?すみません覚えてなくて」

上原さんは実際に会っても顔を思い出せないらしい。

「あ、はい、学校は違いますよ」


???


「え?学校が違う?」
「はい。僕は○○商業でして、上原さんって○○学園で甲子園も行ってますよね?だから同級生だし知っていたんです。僕も野球やってましたから」


「・・・・あ、そうなんですね」



上原さんが黙る。

上原さんは高校時代に甲子園まで行って近所で有名な野球少年だったらしい。
それで小町のバカが同い年の有名人として認識していたということか。


おい小町。
それは同級生っていう言い方じゃなくて同学年な。
お母さんに高校の同級生って言ったらいかにも学校が同じで親交があるって思うじゃねえかバカ。

「お母さん!僕は息子さんの高校の同級生なんですけども〜」
って言えば誰でも友達って勘違いするだろうがバカ!


ていうか同い年ってだけで実家に直訪して専任捲ろうとすんなバカ。


小町のバカさ加減に呆れて上原さんとの会話が途切れたところで製本が終わる。


「お待たせしました。ご用意できました。重説の内容は事前に聞かれてますか?」

叔父さんに尋ねると首を横に振る。



やっぱりな。
おい。ばか。
お前重説は契約前に客付けの方で事前に済ませるのが当たり前だろ。
何から何まで何もやってねえじゃねえかバカ。


「・・・では一応買いの仲介業者さんという事なので小町さんから重説の説明をしてもらってもいいですか?」



製本もミス。
重説の作成もできない。
事前読み合わせもしていない。
せめて一つくらい仕事をしてくれ。。。。


だが・・・

小町は予想通り棒読みのお経みたいな重説。
しかも漢字が読めないらしく何度も引っ掛かってはスマホを取り出して調べる。
異様に長い地獄の重説の時間だ。



上原さんが時計を気にしだす。



畜生。
重説を読むのもできないんか。なんとなくわかってたけど・・・

居ても立っても居られず、小町から重説を取り上げ越境の解消や権利関係の論点をまとめて納得してもらえるように噛み砕いて説明する。

ヤツから取り上げて30分くらいで重説を終えた。

すると叔父さんから一言

「流石は金城さん。慣れているね。プロだな。今後もこの子の指導をよろしくお願いします。」


いや、お願いじゃないよ。まずこんなレベルで売買に携わるな。
こんなやつこの売買が終わったら二度と関わらないよ。
何で俺が指導しないといけないんだよ。
お断り申し上げます。



契約も無事に終え小町達が帰った後に上原さんから一言。

「同級生って意味、あれであってます?」
「ははは。」

日本語は難しい。

苦笑いで解散。


とにかく契約が終わり一息ついた。

ヴーーー・ヴーーー・ヴーーー・・・

【アホ小町】

「金城さん。今日はありがとうございました。
叔父さんが是非金城さんとお食事をしたいというんですけど、来週の土曜日とか大丈夫ですか?」

「あ~すみません。その日は姪っ子の誕生日のお祝いが入ってます」

ガチャ。

お前とお食事に行く気はない。

おかげ様で行く気の無い飲み会を断るためにウチの姪っ子は年中誕生日だらけだ。子供や嫁さんとかの誕生日って言っちゃうとSNSとかで嘘がバレる可能性があるからな。


あと、売買終わって決済までまだ何があるか分からんのに買い側のお前らと近くなってしまうと、トラブルが起きた時にやりにくいのよ。

こういう食事に行って奢られでもしたら思いっきり文句も言えなくなるし。。。



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契約から一か月。

お母さんの引っ越し段取り。
解体発注と施工指示。
確定測量で越境の解消。
後見人の売却許可の申し立て。
色々とやる事はあったが全て予定通りに完了。


小町を介さずに全部の段取りを仕切ったおかげで決済まではスムーズの一言。

流れるような決済で上原さんも買主の叔父さんも喜んでくれた。

ていうか小町はこの契約に介在する意味があったのだろうか?
なんであいつにイライラしながら契約を取り仕切って全てをまとめ上げて買いの分かれの手数料を取られなきゃいけないのか。

世の中は理不尽だな。納得いかん。


そんな事を考えて銀行を出ようとすると小町と叔父さんがやってきた。


「金城さん。ありがとうございました。前は残念でしたが是非お食事をしたいと思うのでご都合を調整できますか?」

またかよ。しつこい。いやだ。断る。

「あ、じゃあそちらで日程が決まったら連絡ください。”できるだけ”合わせますので」

相手から日程を聞いてまた何かの理由を付けて断ればいい。
今度は誰かの法事でも入れようか。


「いや、こちらが金城さんのご都合に合わせますのでよろしくお願いします。」


う・・・。そう来られると断る理由が難しい。


「じゃあいい日程があればこちらから連絡します」



畜生。こっちの日程を出させるのは卑怯じゃねえかバカ。
お前の方から日程だしたらいくらでも断れるのに・・・

2月30日なら空いてますって言おうかな。


クソみたいな客付けとの決済が終わってコレで縁が切れると思ったのに。


長くなりました。
いつもならこの辺で終わるところですこのクソバカコラボ物語はまだまだ先があります。


なので続きはまた次回。

では~

次回:コラボ#3


沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!