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ピュアとオーナーさん#1

新年あけましておめでとうございます。
(株)REGATEの金城です。

本年も皆様の心の拠り所になり得るnoteを書いていく所存ですのでよろしくお願いいたします。

年始めなので本日お届けする内容はとてもソフトな仕上がりになると思います。
また、年始めで売買案件の嫌な…変わったお客様が居ないので、管理をやっていた時のとあるオーナーさんをクローズアップします。

年始めなので私の初々しい新人時代の甘酸っぱい思い出のお話なので微笑ましく見守ってください。


ではど~ぞ~



松田さんは三カ月後に完成予定の新築物件のオーナーさんだ。
職業は市役所の総務課の職員。
50歳くらい。
本業では一切使わないのに趣味で宅建とCFPを取得している
とても細かい性格で神経質な人。

この松田さんは管理会社デビューをしてまだ間もない私が任された初めてのオーナーさん。

というか前任者が賃貸管理委任の契約をした後にバックレてしまって、社内でも誰も対応したがらなかったせいで、経験も浅く何も知らない私に丸投げされたという感じだ。

誰も対応したがらなかったわけはたった二戸の管理で実入りが少ないという事と、松田さんの人柄にあった。


「君、新人?何歳?宅建持ってる?ああ、持っている。そうか。私は宅建は10年前に取得したよ。宅建の経歴でいうと君はそういう意味では私の後輩だね。不動産経験は何年?君で大丈夫?君の今までの実績とか見れるエビデンスとかない?・・・くどくどくど・・・・・」

これが初めての挨拶の時の松田さんの言葉だ。
ネチネチと重箱の隅をつつくような人。
初対面の時点で私の中の嫌いな人ランキングの上位に食い込んだ。


「へ~東京で不動産の経験をしてきているんだ。でも沖縄の不動産は東京とは違うから。だから東京の経験とか自慢にもならないよ。FPも持っている?ふ~ん。でもまあ、所詮AFPでしょ?私はCFPも持っているからあらゆることに於いて君よりは詳しいはずだよ。
今回のアパート建築も私が設計から施工まで様々な勉強をして現場で実際に指示しているし、たくさんの完成見学会やショールームに行った上で選んだ最上の条件とクオリティを備えた物件だからね・・・くどくどくど・・・」


随所随所でマウントを取ってくるし、自慢話も長い。
こんな上司は嫌だ選手権では多分日本代表に選ばれるポテンシャルを秘めているだろう。いや、世界ランカーも夢ではないはずだ。

余談だが後日、建築現場に足を運んで建築中にお客さんの案内とかがある時に協力を仰ごうと現場の責任者に挨拶に行った。

『ああ、よろしくね。二階の部屋は先に仕上げていくから案内がある時はそこを見せたらいいよ。
あと、あのオーナーさん。ヤバいから気を付けてね。毎日現場を見に来てネットで聞きかじった施工の知識をひけらかせて、作業中の職人に指示してさ、現場の職人みんなから嫌われてるよw
ド素人が間違えた施工手順を延々と語るし、それを無視したら怒って現場を止めるし。おかげで施工期日がギリギリになってしまって、自分のせいなのに絶対完成は間に合わせろとか無茶言うし。・・・とにかく気を付けてねw』

という想像通りのコメントを貰えた。


さて場面を打ち合わせに戻そう。

「でね、新人で経験の浅い君にとっては荷が重いと思うけど私の自慢の物件を満室にしてもらう為にやって欲しい事がいくつかある。
ああ、君がメモを取る必要はないよ。ここに書いてきたから。ほら、新人君が私が言ったことをちゃんと理解してメモを取れるとは思えないからさ。
だから私の方で用意してきたよ。まさか新人君が私の担当になるとは思いもしなかったからね・・・くどくどくどくど・・・・」


そこで渡されたA4用紙一杯の松田さんの希望条件はこんな感じだった。


・入居者の年収は800万円以上希望
・勤め先は上場企業か国家公務員
・4年生大学を卒業している事
・偏差値が低い人は絶対NG
・子供は物件を汚されたくないので12歳以上
・非喫煙者限定
・40歳以上はできれば遠慮して欲しい。45くらいまでなら許容範囲
・50歳以上は申し込みの受付もしないように
・できれば若いご夫婦
・清潔感のある人
・男性の一人暮らしはNG。女性は応相談。

etc


沖縄の平均年収知ってる?
あと上場企業って沖縄少ないしw
偏差値って申し込みで分かるの?w
40歳以上NGで12歳以上の子供ってその時点でなかなか見つからんだろw

パッと見ただけでもツッコミどころが満載の条件。

ただでさえ家賃が高くて満室にするのが難しいと社内で言われているのに、こんな感じで入居者を選ぶタイプのクソ野・・・オーナーさんだった。

自慢気にA4用紙を指さしながら言う

「どう?コレがあれば新人の君でも分かりやすいでしょ?
君にはどんなお客さんなのか見極める力がまだないと思うからさ。
まあ、もちろんこれらの条件を全て満たしているのが理想だよ?でもそう理想ばかりを言ってられないから8割くらい条件を満たしていればいいかな。
うん。私も譲歩するべきところは譲歩するつもりだから遠慮なく相談していいから。
まあ、なんにせよその辺にあるような賃貸物件とは違ってクオリティも高いし、必然的に上質な人しか寄ってこないと思うよ。
あの物件を気に入るってことは私の感性と近いっていう事だからね。
そのハイクオリティなお客様に失礼なことをしないように最善の注意を払う事だね。まずは君の仕事はそこからスタートだ。
ああ、あと入居申し込みがあった時にはその都度私にお客様の詳細を連絡するように。よくわからない人を私の物件に入れたくないから。最終的には私の目で見極めたいからね。いい物件にはそれ相応の人が住んでくれないと物件が勿体ないでしょ・・・・くどくどくど・・・・」



この時は恥ずかしながら賃貸管理を始めたばかりで、変な人だとは思いながらもオーナーさんって一般的にこんなもんかとも思ったりしていた。お金持ちだし嫌な人にもなるよな~というくらいの感想だ。
若かりし俺のなんとピュアな事か。

更に幸いな事に募集物件は二戸。
各階一世帯の物件で最上階に松田さんが住んで、二階と三階が賃貸という感じだ。

ピュアな俺は立地がいいので二戸くらいならどうにか決めれる気がしていた。
とりあえず入居者を決めたらいいだろうという安易な考えだったが、今思うとこんなオーナーの場合、早々に賃貸管理契約を破棄して逃げるべきだ。
うぶな俺はそんな事に思い至らずに松田さんの言い分を全て受け止めていた。キチg・・・変なオーナーさんとの関係は入居者を入居させたら終わるわけでなく、オーナーと管理会社というずっと続く主従関係になるという事が・・・。




一週間後。

幸先がいい事に旦那さんは電力会社にお勤めで奥様はCAという松田さん好みのご夫婦が三階の部屋に申し込んでくれた。

「金城君やるじゃないか!よくやった!このご夫婦は私の理想に近いよ。
いや~新人なのに見直したよ。当初は不安しか無かったけどまさか君のような新人でも仕事ができるなんてね。あ、私の指示書が役に立ったという事か。そうか。そういう事か。それなら君みたいな新人でもできるはずだ。うん。この調子であと一部屋頼むよ。」


新人新人うっせえな。。。
嫌味たっぷりのお褒めの言葉を頂いたがピュアな俺はまだ怒らない。
ていうかお前いつから俺の上司みたいな口の聞き方してんの?くらいは思ったはず。
というか慣れない管理会社の業務に忙殺されていていちいち松田さんに腹をたてている暇もなかったというのが正直なところかもしれない。


・・・・だが、厳しい募集条件に相場よりも高額の家賃という事も相まってあと一部屋がなかなか決まらない。

とうとう物件の完成が近づいてきた頃

「あ~金城君?今のところ目ぼしい人は居るの?いない?やっぱり新人だとダメか~。いや~来月には完成してしまうし、そうなると銀行の返済が始まるんだよ。そうなると私の収支計画がズレてしまうんだよね~。君以外のスタッフは居ないの?え?いる?じゃあその人達にも手伝ってもらってさ~、うん?やっている?じゃあ何で決まらないの?賃貸物件の空室による損失は埋められないんだよ?一か月空いたからその分の家賃を上乗せするわけにはいかないじゃん?わかる?CFPを持っている私の収支計算によると・・・・くどくどくど・・・」


いや、いい感じの人をお前がNG出して何組か断ったじゃん。
「条件を満たしてないよね?私の物件にふさわしくないよ」ってさ。

という不満を持つくらいには成長した俺。

今ならこんなオーナーさんは自業自得だからずっと空室で破綻すればいいとさえ思うのだが。。。


それから一週間後・・・

「あ~金城君?私の知り合いの紹介で物件に興味があるという人が居るからその人を案内してあげてよ。杉田さんという人らしくて、金城君の携帯番号を伝えておいたから。完成前には埋めたいからその人で決めてくれるかな。
ん?例の条件?とりあえず背に腹は替えられないから50%くらい当てはまるんじゃないかな?それでいいから。一応私の知人の紹介だから大丈夫だと思うよ。私の知り合いは京都大学を出ててとても優秀な人で・・・・・くどくどくど・・・・」


変なマウントと知人の高学歴自慢話を聞き流し、その紹介されたという杉田さんからの連絡を待つ。


後日案内に訪れた杉田さんは無口な女性で、案内時に詳細はあまり探れなかったが勤め先は沖縄では比較的大手の量販店。結婚はしていないが時期結婚予定の婚約者と同棲をするとのこと。松田さんの個人審査も京都大学を出たという知人の信用力からかあっさりとスルー。その後、保証会社の審査にパスし、無事に入居契約が完了した。


「いや~新人が付いた時にはどうなるかと思ったけどとりあえず満室だ。コレで損をしないで済むよ!ありがとね!お疲れさん!」


松田さんからの労いの言葉もそこそこに多忙な賃貸管理業務に戻る俺。


とにかく空室が埋まったという事でしばらくは松田さんの嫌味もマウントも自慢話も聞かなくて済むので仕事がはかどる事は間違いないだろう。


あとは粛々と完成を待って入居を終えたらひと段落だ。




新築物件は施主確認という引渡し前の細かいチェックがある。
完成したばかりのフローリングに傷は無いか、ねじの締め忘れが無いか、ドアの開閉はスムーズか、クロスの剥がれや貼り忘れは無いか。など細かい所を現場監督や施工担当者と立ち会って確認をする。

本来であれば施主確認とその補修が終わってから賃貸の入居者を入れるための入居前チェックをするのだが、前述のとおり松田さんが現場に口出しをしまくったせいで完成が遅れてしまい、施主確認と入居前チェックを同日にやらないといけないくらいにタイトなスケジュールになった。

その日は10時から現場監督と松田さんと俺とで入居前チェックと施主の確認をする予定・・・だったが。


午前9時、松田さんが激昂して電話をしてきた


「おい!どうなってるんだ!二階の部屋に荷物が運び込まれているぞ!」


二階は京都大学を出た知人お墨付きの杉田さんの部屋だ。
杉田さんはその日の夕方に引っ越してくるという話で、
施主確認と入居前チェックを終えてそのまま入居立ち合いをする予定だったが。。。

鍵の引き渡しもまだなのにどうやって・・・・


新年一発目も長くなりましたので続きは次回。


では~

続き:ピュアとオーナーさん#2


沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!