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買い付けの順番#1

こんにちは!
株式会社REGATEの金城です。

本日は大人気物件の同時案内と同時買い付けの対応をご紹介♪

不動産あるあるのほっこりした内容です^^

では張り切ってど〜ぞ〜♪


◆長期案件実る


これは3年ほど前から追いかけている案件。
亡くなったお父様の代から相続対策などの不動産のご相談を受けていた。

幸いなことにお子さん達にも気に入ってもらえて、お父様の遺言通りに3回忌を終えた後にご実家を売却するという話を持ち込んでもらえた。

実家は古いが躯体もしっかりしていて、解体するのは勿体無い状態。
こだわりの無垢材のフローリングなんて研磨すれば新品同様になるだろうと思えるくらいに状態がいい。
リフォームして利用したいという声が高そうな物件なので、現状で案内をしてリフォームや解体は購入者さんに判断してもらうことに。


状態のいい物件ではあるが価格は相場より若干安めの設定。

亡き父の教えであった
「高く売る必要はない。いい人に買ってもらうことを優先してほしい」
という声を子供達みんなが守るという流れだ。


もう少し安ければ買取してもいいかな?と思える価格ではあったが、買取をして自社で転売益を出すよりは、お父様のご意向を呑んでくれたお子様達に少しでも利益を残してあげることで、今後のご紹介をいただける方が得策と判断。

お子様達とはいえ、年代は私と同年代。
みんなそれぞれに立派な仕事で議員さんやお医者さんをされていていろんな方面に顔が広いご兄弟。
今後の人脈を作るためにもこのご実家の案件で欲張る必要はないと考えた。
地域の名士たちとは末長くお付き合いするのが正しい不動産仕草だ。

「金城さん。父の代からたくさんご相談に乗ってくれてありがとうございます。父の希望通りにいい人に購入いただけるよう動いてもらえたら嬉しいです」


よし。ご期待に応えてお子さん達の信頼を勝ち取ろうじゃないか。


相続登記などの権利関係や後々の税金の算出などもお手伝いをし、売り出しを開始したらすぐ売れるだろうというとこまで準備をした。


◆販売開始



トゥルルーー・トゥルルーー・トゥルルーー・・・

「はい!株式会社REGATEの金城です!」
「あの〜朝早くに申し訳ありません。小林と言います。ネットに出ている〇〇市の一戸建てを見たいんですけど」


やっぱりね。あの価格ならすぐ動くよね。

でもネットに出して数分ですぐに食いつくってかなりアツいね♪

※売り出ししてすぐの問い合わせのお客様は成約率が高い。
ずっとこのエリアで探していて毎日チェックしているような人が多いからだ


「はい!今朝出したばかりのやつですね!内覧も可能ですよ!」
「あ、そうです。新着のやつ。ずっとこのエリアで探していたんですよ。今日見れたりしますか?」

いよっしゃ♪やっぱりね♪一発目のアツい反響!
関係ないけど『ずっと探していた』って昭和の恋愛ソングの歌詞みたいだな♪
不動産屋にとってこんなに心が躍るワードはないよな♪
『ずっと探しているけどなかなか見つからない』ってのもなんかいいな♪
昭和の歌謡曲は不動産屋が作ったのかな?


うし!テンション上がってきた!

「大丈夫ですよ!何時ごろをご希望でしょうか?」
「できればすぐに見たいんです。前にも他の人に取られたことがあって・・・この物件もすぐに無くなりそうで。。。」

おお♪前に取られた経験がある人サイコーです♪


「大丈夫ですよ!小林様のお問合せが一番目ですし、すぐのご案内も可能です!一時間後に現地でいかがですか?」
「ちょっと待ってもらえますか・・・・(一時間後だって。大丈夫?)・・・・
あ、はいお願いします。印鑑とか持っていけばいいですか?」

後ろで誰かに聞いている。旦那さんかな?
小林さんは若くて可愛らしい声の持ち主。
しかも印鑑持参♪問い合わせの感じからもかなり前向きに購入しそうだ。
旦那さんも一緒なら話も早い♪

うっし!絶対決める!

「はい!買い付け申込書の捺印用の印鑑だけで大丈夫です!」
「はい。ではよろしくお願いします」



◆案内準備



すぐに準備をして現地に無向かう。

30分前に到着し部屋の換気を済ませ、フローリングにモップをかける。窓際の埃や小さい虫の死骸などもちゃんと処理。

駐車場や家の周りの道路に落ちているゴミも片付ける。
少しでもいい印象を持ってもらえたら申込確率が上がる。
こういう時は徹底して申込が潰れる要因を潰していく。


万全。

今日で決まる気がする。うん。
いや、絶対決める。

現地で準備をしていると事務所に待機しているスタッフからメッセージ。
『3組問い合わせがあって3組ともすぐに見たいとのこと。対応可能ですか?』

いいねいいね〜♪案内中に他の人が外で待機しているとか競争心を掻き立てるじゃん♪今日で決まるなこれ♪

『大丈夫です!ガンガン現地に送ってください!案内中の場合は中にいるので声をかけてくださいって伝言もお願いします!』

送信っと。


お♪あと5分で待ち合わせの約束の時間だ。
駐車場で小林さんの到着を待つ。

小林さんの声の感じだと30代前半くらいかな?
平日のこの時間に旦那さんも動けるってことはシフト勤務の人なのかも。
警察とか消防とかかな?

あの喋り方だとすごくキチッとした人だろうな〜

この後の様子を妄想する
〜〜〜〜
小林さんの案内中に別の方が案内待ちで外で待機する。
小林さんは更に取られたくないという気持ちが煽られる。
後に待っていた人も先に中を見ている人がいることで焦る。
どちらからも買い付けゲット♪
減額交渉とかをしない条件のいい方で話を進める。
満額買い付けで成約。
〜〜〜〜

今日の流れはこれでイケるな。
ニヤニヤしながら家の周りを掃き掃除する。


◆マジかよ



一通り掃き掃除を終えて小林さんの到着を待つ。

一台の軽自動車がノロノロと向かってくるのが見える。

フロントガラスが太陽光の反射で中がよく見えないが助手席のダッシュボードに両足を載せているのだけは遠目にも確認できた。

近所の人かな?
うわ、窓からタバコのポイ捨てをしやがった。せっかく道を掃き掃除したのに・・・

はぁ。このダッシュボードに足乗せるタイプのやつってほんとどうしようもないよな。タバコ吸うのはいいけどポイ捨てはすんなや!

ま、いいや。小林さんが来る前にさっさと通り過ぎてくれ。

軽自動車は目の前で停車する。
運転席の女性は眉毛がないすっぴん。ピンクの生地に金色ラメのキティちゃんのスウェットを着用。キティちゃんって全国共通でヤンキーに好まれているよね・・・なんでだろ?

目の前の事象を脳みそが把握できなくて全く関係ないことを考えてしまう。


助手席の男はいかにもなやつ。


まさにこんな感じのカップル。


え・・・?車庫入れ?ここに?


事務所のスタッフが言っていた3組のうちのどちらかかな?


ま、いっか。小林さんが来る前にチャチャっと中を見せよう。
小林さんとしても先着の人が中を見ていると更に焦ってくれるはずだ。

すっぴん彼女が声をかけてくる。

「車はここでいいですか?」


「はい。。。お待ちしておりました」

あぁ。。。あの電話の可愛い声の主だ。。。
すっぴんキティはまさかの小林さんだ。

今日のいい流れの妄想が早速ブレ始める・・・



助手席の男はまだ足を下げる気配がない。足の日光浴でもしているのだろうか?
男の足の裏は真っ黒に汚れている。。。





しばらくしてノソノソとくわえタバコで出てくる。
そのまま駐車場にポイ捨てをする。

こいつ。。。まじかよ。


◆小林さん?



「う〜ん。これ少し高いんじゃん?古いし。ねえ。お兄さん。これ安くなるよね?」

おい。第一声で値下げ交渉かよ・・・はい、可愛い小林さんアウト〜〜〜

売主さんのご意向もあるけど俺の個人的な審査でアウトね。

さて、この後の残り三組に期待しましょう・・・


だがその場で帰すわけにもいかずテンション激下がりの状態で中に案内する。

男はこちらが用意したスリッパを履かずに素足でズカズカと入っていく。
男が歩いた後には黒い足跡がたくさん残っている。

ピキ・・・さっき拭き掃除したのに。。。
こいつが帰ったら次の人が来る前に拭き掃除をしよう。さっさと帰れ。


すっぴんキティと黒い足の男は室内を見ながら会話が盛り上がっている。


「ね~~。これいいじゃん!いいじゃん~~!買おうよ~~~」
「そうか〜?この古さだぜ?ぼったくりだよ絶対。お前は先走りすぎるからな〜」
「え〜〜〜。絶対買った方がいいよ〜。値段も交渉すればいいしさ~~~」

あの。。。すみません。勝手に値段下げて買うつもりにならないでもらえますか・・・てか帰ってもらえますか・・・


不意に玄関から声がかかる。

「あの〜。すみません。電話した小林ですが。」



◆小林さん




玄関を振り返ると綺麗な格好をした女性とがっしりとした体格の男性。

声は電話の可愛らしい人。


「あ。金城さんですか?朝電話した小林です」


頭がバグる。

あれ?
今、中で見ているのも小林さんじゃ。。。??

同時に小林さん?珍しい苗字でもないからあり得なくはないけど・・・

小林さんは一人だけと決めつけてしまっていた。
あれ?ていうか中のヤンキーは名乗ったっけ??
とにかく声だけで判断してしまった俺が悪い。


激下がりのテンションが戻ってくる。

「お待ちしておりました!先に別のお客様が入ってますが同時にご案内となりますがよろしいでしょうか?」
「あ、はい。ありがとうございます。あ、こちらは主人です。」
「初めまして。よろしくお願いします」

予想通りものすごくしっかりとしたご夫婦。
聞くとやはり旦那さんは警察官とのこと。奥さんも警察官で今日は二人とも非番らしい。
めちゃくちゃ好印象で超超高属性。

中のカップルとの高低差が凄すぎて耳がキーーーンてなる。

小林さんが入ってから数分後にもう1組のお客さんが来場。
ヤンキーカップルと小林さんと新しい方と3組が同時に内覧。
まるで完成見学会w

人気物件の同時案内は買い付けの順番とかでトラブることが多いからここからが腕の見せ所だな。
気合をいれっか!うし!今日で決める!


◆人気物件の取り扱い



「やっぱり人気なんですね。朝早いのにこんなに人が来ている」

小林さんは物件を気に入ってもらえたらしくすぐに買い付け証明書を書いてくれることに。先日逃してしまった物件の時に事前の融資審査も通っているらしい。警察官ご夫婦なら審査に通らない方がおかしい。

色々と説明しながら買い付けと今後の流れを説明する。


それを見ていたヤンキーの男が声をかけてきた。

「ねえ、兄ちゃん。これ、俺たちが買うからさ。その紙ちょうだい」


玄関先に置いてある買い付けの申し込み用紙を勝手に取って記入し始める男。

え?買うの?てか買えるの?ローン大丈夫?
こいつがうろついたあたりのフローリングが黒ずんでいる。
トトロのめいちゃんかよ・・・


「あ、あとさ、俺たちが先に来たからもちろん俺たちの方が優先度高いっしょ?あと、いくら安くなる?」


は?

「あ、あ、まってまって~~~。あとさ~~~、仲介手数料って安くなるんだよね~~~?ネットで見たし~~。仲介手数料って半分以上取ったら違法だって言ってたし~~~。ガイドラインって言えば不動産屋は黙るってよ~~~。意味わかんないけどね~~www」

小林さんと同じ声のすっぴんキティも変なことを聞いてくる。
こっちはマーブルさん系統のおかしな知識を仕入れているようだ・・・

よく聞くと少し声がカスれているが改めて小林さんと似ている声質だと思う。紛らわしいから喋らないでほしい・・・


「いや、内覧をした順番ではなくて、融資の事前承認を取っている方が優先されます。また、事前承認を取っている方が同時になった場合は交渉条件等がない方が優先になりますね。減額交渉とか。もちろん現金で払う方も優先されますが、その場合は売主様にもご相談させていただいて・・・」

「え?ちょちょ。難しい言葉よくわかんない〜~~。ひらがなで喋ってよ~~~」
「あのさ、兄ちゃん。俺たち素人じゃん?よくわからんからちゃんと説明してくれや」


いやいや。。。よくわかんないのはこっちの方なんだけど・・・なんなのお前らのマナーの無さ・・・ひらがなで喋るとか意味わかんないし~~~


不安そうにこちらのやりとりを見つめる小林夫婦。
3組目の方もだいぶ気に入った様子で買い付けを入れたいと声をかけてきた。

事務所に電話をして広告を止めてもらう。
もうこれ以上人が来たらややこしくなる。

だが、このわずか30分の間に追加の問い合わせがあり残り2組見にくるとのこと。
流石は人気物件。もう今日で決まらんとおかしい勢いだ。


電話を切り3組目の方にも同様に買い付けの順番の説明をする。

ヤンキーはこの3組目への説明を聞かずに隣の部屋で黒い足跡を広げながらはしゃいでる。

おいおい、流れがわからないなら同時に聞くとかしろよな。

こっちの説明が終わった頃にはしゃぎ終わったカップルが戻ってきた。


「あ、兄ちゃん。ちゃんと説明聞くからちょまってな」


おもむろにアイコスを取り出し室内で吸い出すヤンキー男。

室内にいる全員が怪訝な表情を浮かべる。

フゥ〜〜〜。。。
アイコスとはいえさすがに臭い。


「はい。お待たせ。説明どうぞ」


マジかこいつ。。。。


長くなったので続きは次回!


次回予告
・オラに元気を分けてくれ
・ついにフリーザとの決着
・サザエ、マスオの竿を間違える


乞うご期待!
では〜

次回:買い付けの順番#2


沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!