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管理会社#1

こんにちは~。
株式会社REGATEの金城です。

年末に差し掛かり忙しい毎日を送っていますか?
このnoteの読者の多くは不動産売買ゴリラの方々らしいのでこんなのを読んでないで一件でも多く架電して一円でも多く売り上げを伸ばして年末を生き延びてください。

今日は忙しい売買ゴリラ達とはジャンルが違う管理会社の頃の思い出を皆さんにお裾分けしたいと思います。

年末なのでサクッと読めてほっこりするような内容になります。

ではど~ぞ~


******************


管理移行。
皆さんはこの言葉をご存じだろうか?

読んで字のごとく賃貸管理会社を替える事。
すなわちオーナー様の意向で既存物件の管理を新たな管理会社に替えるという行為を指します。

自分が管理をしている優良物件を管理移行で他社に抜かれようもんなら舌を噛み切るくらい発狂しますし、上司や社長から鬼の激詰めを喰らう事になります。

また、入居者の属性が悪くてクレーム三昧の物件の場合は抜かれて一安心ですがその逆も然り。悪質入居者が居る物件の管理を受けようものなら仕事の量は何倍にも膨らんで後悔しか残りません。

つまるところ管理移行とは賃貸管理会社さん達の壮絶な目隠しババ抜きバトルといえます。

本日は私が経験したとある管理移行のお話をお伝えします。




あれはちょうど今と同じようにタンクトップと短パンで過ごせそうなクリスマスの気配を感じられる年末の頃。
とある物件のオーナー様から連絡。

「君が金城君か。実はね私の物件を君のところで管理して欲しいんだ」

管理会社の営業として日々ババ抜き営業をしていた私には朗報だ。

「はいよろこんで!」

二つ返事で答える。


実際は管理物件や管理棟数が増えて管理料が多くなって喜ぶのは会社の社長だけなのだが、当時の私はあまりにも不動産情弱だったため管理を取る事で貰える歩合が嬉しくそのためだけに動いていた。

ちなみに管理取得で貰える歩合はひと月の管理料。
管理料は5%が相場の沖縄のアパートでは平均して3~5万の家賃で8世帯くらいが多い。


なので一部屋5万円で8世帯の物件の管理を貰えたとして歩合は

5万円 × 5% × 8戸 =2万円

という計算。


それが歩合として毎月入るわけでは無く取得したその月一回きり。

20代でまだまだ若く手取りの給与も20万に届かない基本給で働いていた私としては2万円一回こっきりの歩合でも嬉しかった。

この計算で行くと私が居た管理会社では一戸5万円の物件から得られる歩合は2500円という事になる。
その歩合の2500円のために真夜中にお湯が出ないと呼び出されたり、入居引渡し前の清掃中の物件で鍵が開いていたからといって勝手に荷物を入れた外国人夫婦と喧嘩をしたり、オーナーさんが入居者の部屋を覗き見したという事で警察に呼ばれてあくまでもオーナーとして入居者の監視をしていたという弁明を手伝わされたり、秘密結社に命を狙われているという奥さんに真っ暗なろうそくだけの部屋で8時間も軟禁されたり、室内がペットの猫の糞だらけ(もしかしたら人糞も混ざってた)になった部屋の住人から出される得体のしれないお茶を飲まされたり、人が何人か流されたのかと思うくらいの毛髪をヘドロだらけの排水管から素手で引っ張り出したり、上階の人がトイレに流したおむつが下階の入居者の排水菅を詰まらせて逆流したことにより部屋中に溢れた汚水を処理しないといけなくなって汚物だらけになりながら汚水を汲み上げたり2500円ではとてもじゃないが割に合わない仕事だと知るのはそれからしばらく経ってからのこと・・・

おっと本題から逸れてしまった。


なんにせよお金も経験もない当時の私には管理移行を貰えるのは嬉しい出来事だったことには違いが無い。


早速新オーナーさんから管理契約書を預かっていざ旧管理会社へ。

管理物件を引っこ抜かれた会社は売り上げが下がるので管理移行に積極的に協力してくれないところも多い。
通常は既存の契約や保証会社の内容、連帯保証人の有無や入居時の室内の状態などたくさんの資料を引き継ぐのだが、新たな管理会社に嫌がらせをしたければそれらの資料を渡さなかったりすればいい。
そんな細かい嫌がらせは管理ババ抜きには付き物の伝統芸能のようなものだ。

そんな臨戦態勢の中で粛々と管理移行の作業を進めるのも管理営業の仕事の一つと言える。


今回の旧管理会社は古い地場の会社で社長とその息子の二人でやっているような小さな会社だった。昔からの管理物件を引っこ抜かれたという事でさぞかし攻撃的な対応をされるだろうと身構えていた。

「金城さん。では今後はよろしくお願いいたします。とてもいい物件で入居者さんの属性もいいですよ」


ニコニコと腰低い担当者の名前は上地さんというおっさん。
隣に座るおじいちゃん社長もニコニコしている。
攻撃的な態度を覚悟していただけに拍子抜けだが、もしや管理ババ抜きの最悪の物件を引き抜いてしまったのかという不安もよぎる。
入居者の中にクレーマーが居るのか・・・

普通ならいい物件の管理を抜かれて笑顔でいれるわけがない。

「ちなみに何か今まで問題とかありませんでした?」
「いや。トラブルを起こす入居者も居ないし、設備の故障とかもほとんどないですよ」


う~ん。
俺が怪しみすぎなのか?
疑心暗鬼が過ぎるのか?
上地さん本当か?


「今週中には私の方で各入居者に管理会社変更のお知らせを送るので、口座引き落とし変更の手続きとかは来週から金城さんの方で動いてください。入居者さんもいきなり新規管理会社ですって口座振替の通知持って行っても困惑するでしょうから。あ、一部屋だけ今月末の退去なのでこの部屋は退去までウチでやりましょうか?」


うん。すごくまともなことを言っている。
スタートラインで警戒しすぎただけになんだか居心地が悪いw
しかも退去清算も受けてくれるとか神かよ。


「あと、過去に退去清算が済んでいる部屋の契約書とか重説も取っておいてあるんですが持っていきますか?」
「え?過去の分?今入居している人だけじゃなくて?」
「はい。もしもの時にと思って残しているんです。おかげで資料が溜まりまくっちゃってw」
「あ~でも過去の退去者さんはうちは全く面識もないし、後々個人情報だなんだと言われるのも嫌なんで大丈夫ですw今の入居者の分だけでいいですよ」
「そうですよね。わかりました。では今の入居者の分だけお渡ししておきます」


過去の退去者の分も全部保管するとか偉いな。
めちゃしっかりしてるじゃん。
こんなしっかりした管理担当がいい物件って言うってことは信用してもいいかもな。


いや、だがしかしここではいい物件ですよと言っていても実際に入居者に会ったらとんでもないモンスターハウスだという事もあり得ない話ではない。

とりあえず警戒は緩めないでおこう。


翌週。
上地さんから連絡がある。

「先週で各入居者さんに通知を送り終えているので今後はよろしくお願いいたします。退去予定の方は私の方で直接連絡とっていますので。」

おぉう。。。どこまでも丁寧だ。
地場の不動産屋さんにありがちなあの嫌な対応が一つもない。
ホウレンソウのすべてが遅かったり、やってくれとお願いしたことを遅々としてやらなかったり。。。
上地さん。何でこんなにいい人なの?まじで大丈夫?地場の不動産屋さんは何かもうもっと陰湿で横暴で横柄な態度で・・・

なんか調子狂うな。


とりあえず各入居者に新管理会社の通知をしながら新しい担当として顔を合わせておくか。

こういう場合は日曜日の午前中か平日の夕方で在宅が多い時間帯を狙っての直訪が一番だ。
ちなみに今回取得したアパートの一戸当たりの家賃は45000円。
一戸当たりの歩合は2250円。

日曜返上や平日の18時から残業をするには見合わない歩合だが、若かりし俺はそれに気が付かない。


クレーマー入居者が居るかもしれないと警戒しながら退去予定の部屋を除く入居中の方への挨拶を終わらせたのは19時前。一時間もかからなかった。
上地さんが言うようにとてもいい感じの入居者さんばかりでクレーマー要素は皆無だった。
翌週までには退去予定の一部屋を残しすべての入居者の口座振替依頼書も手元に届き順調に管理移行が完了した。


あまりにも順調だ。



それから一週間。
上地さんから着信。

「金城さん。申し訳ないんだけど退去予定の例の部屋の重説とかって手元にありますか?前に一式お渡しした気がするんです。」

ん?何かあったか?

「実は退去予定の方が条件が違うって言ってて、重説に書いてある内容と違うって言うんですよ」

・・・退去トラブルね。はいはい。
リ〇大とかの信者さんかな?

「そうなんですね。確認してみます」

今も昔も退去でいちゃもんを付けて退去費用を抑えようとする人は一定数いる。
最近はネットとかで【不動産屋に騙されるな】みたいなことを書くインフルエンサーが居るおかげで、それを鵜呑みにして自分は情弱じゃないと思って踊らされている情弱退去クレーマーも増えてきている。

上地さん。最後に変な仕事増やしてメンゴだよ。
でも俺の身代わりになってくれてありがとう。とてもうれしいよ。

協力的な人が相手だからこっちも気持ちよく協力してあげよう。
てか本来は俺がやるはずだった退去清算だしなw

以前に貰った物件のフォルダを取り出して該当の部屋の重説と契約書を探す。

あ。そういえば退去の部屋のヤツは上地さんがやるって言ったからそのまま受け取らなかったんじゃなかったっけか・・・。


「上地さん。前回資料を頂いた際にその退去の部屋の分は御社で預かっておくという事で話が終わった気がしますけど・・・」
「あ~やっぱりそうでした?すみません。どこを探しても無くて、もしかしたらと思いまして。」
「そうですよ。確かあの時その部屋の分はそのまま抜いてお渡ししましたもん」
「ではもう一度探してみます」


上地さん。大丈夫?

いい人なのは分かる。
とても穏やかで人当たりもいい。
何なら俺の方が人当たりもキツイしいい人ではないw

でも契約書と重説は無くしちゃいかんでしょwww


しばらくして着信が鳴る


「あ、金城さん。思い出したんですが私、管理移行が終わったと思って安心して手元にあったヤツ全部シュレッダーかけちゃったかもしれません。
既に退去が終わった部屋の分の契約書とかがまとめてあったので、一緒に・・・」


wwwwマジかw
ダメじゃん!


「はぁ。困ったな。どうすればいいと思います?」


いやどうすればってこっちに聞かれてもwww


「では金城さん。一緒に来てくれませんか?」


は?www
何で俺が?www


いや、そうか、もともとは俺が相手にするはずだったしな。



今回も長くなってしまったのでまた次回。

では~

次回:管理会社#2





沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!