齧り続ける人＃1

こんにちは〜。
株式会社REGATEの金城です。

今回はとある親子の物件購入をご覧いただきます。
私たち不動産屋っていろんなお客様のいろんな部分を見ることになるんですが、今回ほど親子関係について考えさせられた案件は他に類を見ません。。。

旦那さんが残してくれた大切な遺産。
これを息子に譲ろうとした奥さんが大失敗したというお話。

旦那さんが資産をたくさん残してお子さんがいらっしゃって相続対策が必要な奥様には必見の内容です♪

ではど〜ぞ〜

◆これ、買います。

とある冬の夕方。
外もだんだん暗くなり始めている頃。

カランコロ〜ン♪

事務所のエントランスには60歳くらいの女性とスーツ姿でサングラスの若い男性。
締め切っていた室内に外の冷気が一気に入ってくる。
外気と一緒に室内はすぐに香水の香りに包まれた。

「いらっしゃいませ！」
接客ブースに着席を促し、お茶を出す。

にしても香水がキツい。
この人達、香水の一升瓶かぶってきたんじゃね？
という感じのキツさ。。。

名刺を差し出して挨拶する。
女性はペコペコと腰が低いが男性はサングラスを取る気配はない。
事務所のガラスなどに映る自分を見ては髪型を直してキメ顔をしている。
髪の毛の毛先をちょいちょい触るたびに香水の匂いが増す。
この強烈な匂いはこいつか・・・

というかたまに居酒屋とかのトイレでこう言う男見るけど、毛先をチョンチョン触ってなんの変化もないけど決まったぜって顔してるのなんなん？ｗ

室内でも外さないサングラスはシャネル。
スーツには細かいグッチの柄がびっしり。
ネクタイには大きなD&Gのロゴ。
ベルトのバックルは大きなエルメスのロゴ。
靴はグッチの柄がたくさん刻印されている。
時計はロレックス。
セカンドバッグはボッテガ。
机に置かれた財布はヴィトン。

統一感のない全身ブランドの男性。なんかオシャレをかなり履き違えているｗｗｗ

だんだんと外が暗くなってきた。
するといくつものガラスに男性が映るようになる。
いろんな角度で映る自分が気になって仕方ないらしくこちらと話す気はなさそうだ。

60歳くらいの女性はいたってシンプルな格好。
普通のどこにでもいるような主婦という感じ。

主婦が喋り出す。

「あの〜ネットに出ていた〇〇市のアパートですが、買いたいと思っています」

問い合わせのアパートはとあるオーナーさんとのお付き合いで預かってきてネットに出して放置していた物件だ。
立地も悪く利回りも厳しい。
担保評価も低く銀行の融資も通りにくい物件。
売り出して半年以上経つが問い合わせもほぼない。
たまに購入を検討する人が出るが、ほとんどの銀行に5000万円は自己資金を持ってきてと言われてしまい断られている物件だ。
管理体制も悪く、正直なところ売れる見込みが全くない物件。

本当に買ってもらえるならラッキーだが。。。。

「はい。まだございますがこちら融資の関係で5000万円ほど現金をお持ちでないと銀行の審査が通らないんです。もしくは別の物件を共同担保に入れてもらう・・・」
「現金で買うので銀行は大丈夫です。」

おお♪まじ？
なら話は早いけど、築年数とか立地とか利回りとか色々と説明したら断られるかもな。銀行の融資が引っ張れないということはそれなりに理由があるんですよね〜。。。

「あの〜これだけあれば足りると思うんです」
おもむろに通帳を見せる主婦。
残高は数億ある。。。
失礼だがお金を持っているようには見えないが。。。（隣で髪をきめている香水男性含め）

「あ。では融資は問題無さそうですね。ちなみに投資物件って他にもお持ちですか？」
「いえ、今回が初めてです。不動産は売ったことはあるけど、買うのは初めてです。。。初めてだと買えませんか？」
ん？なんだこの質問。
不動産についてど素人って感じだな。。。
なのにいきなり来店して億越えの物件を即決？資料も見ないで？嬉しいけど大丈夫？少し不安だな。。。

少し説明してあげようかな。
「いえ。ご購入は誰でもできます。ただ、アパートのような投資物件って購入後の運用とリスクとかを考慮して・・・」

すると隣の香水がガラスに映る自分を見ながら喋る
「大丈夫。これ買うよ。いつ契約できる？」
息子の横柄な態度。
母親もすぐに呼応する。
「はい。では、これ買います」

ちょっとお二人さん話早すぎｗ
家電買うんじゃないんだからさｗｗｗ

◆俺、全部わかるから

「え〜と。まず資料をお見せして詳細を把握してもらってから話を進めてもいいですか？管理の状態とか現在の入居状況とかを説明したいんですね。電気水道ガスの名義変更とか敷金の引き継ぎとか火災保険の説明とかもありますし。
高額の買い物なので後になって聞いていないとか言われると困るので・・・」
すぐに香水が言葉を遮る
「大丈夫って。俺、不動産投資の勉強してるし、問題ない。それとも何？売りたくないの？俺客だよ？」

でた！私のnoteによく出てくる俺客だぜマン！

てことは今回も何癖もある取引になりそうだ・・・ふぅ。
香水め。でもそこまでいうなら買ってもらいましょう。

「はい、でしたら重要事項説明書を読み合わせさせてもらって、売主様とのスケジュール調整をしてから契約となりますが・・・」
香水はこちらの言葉にかぶせながら喋ってくる
「あ〜重説ってやつ？あれ俺が聞くの？母親に説明しといてくんない？金出すの母ちゃんだし。俺さっきも行ったけど勉強してるから大丈夫だし。投資の本読んでるし」

あ、親子なんだ。
そして母ちゃんが金出して息子の名義にするってことね。
なるほどね〜。お金持ちのボンボン息子ってこと？
てか投資の勉強している人が買うような物件じゃないけど？ｗｗｗ

「でも所有される方にも説明を・・・」
「大丈夫って言ってんのｗｗｗ心配性だな〜。客がいいっていうんだからいうこと聞けばいいじゃんｗｗｗ面倒なこと言わないで早くしてよ。
あんた不動産屋なんだからさ。買うって言う俺に指図しない方がいいんじゃない？俺、全部わかっているから。その辺の不動産屋より詳しいと思うよ」

カチン・・・じゃあ後で絶対文句言うなよ。
売ってやるよ。ネットに出てて誰にも見向きされない物件は絶対に売れ残る理由があるんだからな。しらねぇぞ。

「お母様もそれでよろしいですか？」
「はい。この子がいいって言っているなら大丈夫です」

「うし！じゃあ母ちゃん後よろしく♪」

ガラスに映る自分にキメ顔をしながら颯爽と出ていく香水。
エントランスが開くと一段と匂いが広がった。
数秒後に黒塗りのレクサスが駐車場から出て行く。

最後までサングラス取らなかったがもう周りは暗くなっている。
事故らなければいいけど・・・

「あれ？ご一緒じゃないんですか？」
「あ、一緒でしたけど大丈夫です、いつもこうなんで。一人っ子だから甘やかしすぎたかな。私はバスで帰りますので大丈夫です。。。」

・・・・なんか本当に大丈夫なのか？一人っ子だからって甘やかしすぎじゃない？ｗｗｗ

その日は母親をバス停まで送り届けて解散となった。

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長くなったので続きは次回へ持ち越します♪
なぜ母親は息子にアパートを買うのか？
大金を持っている理由とは？
息子が異常にダサいのはなぜか？

次回。これらの謎が全て解けるかもしれません・・・

では〜

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齧り続ける人＃2

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