お前誰だよ!#1
こんにちは!
株式会社REGATEの金城です。
本日は昔賃貸仲介で動いていた時のいい思い出話。
ふと思い出して当時の記憶が戻れば戻るほどに腹が立ってしまうという話にとても好感のもてるお客様とのひと時のラブロマンスを添えて。。。
売買仲介の奮闘記と同じようにいつも通りにみなさんのお腹を満足させて吐き気を催すことはできると思います。
ではど〜ぞ〜♪
◆好印象のお客様
むか〜しむかし。新人としての教育期間を終え新規の反響をもらえるようになり、地域の裏道や地場の業者さんの場所や鍵預かりのルートなどが頭に入ってきて自由に動けるようになった頃のお客様とのお話。
お客様の名前は上田さん。
20代女性。
新卒。
希望エリアは都心部の築浅物件。
できれば女性専用物件でオートロック希望。
新卒で今のところ収入は無いが、都内の某大企業に内定をもらっていて内定書類には確約された年収も記載されている。
お父さんも有名企業の役員で連帯保証人になってくれると言っている。賃貸の審査は全く問題なさそう。
たくさんの物件を一緒に見て周り打ち解けてきたころ
「物件を決めるときは絶対に金城さんにお願いします」
という嬉しい告白もされた。
いい物件を見つければほぼ契約となる激アツの見込み客だ。
あと、何よりもなかなかの美人さん。
案内の時はいい匂いがするし、とても愛想がよくてほとんどの男性が思わず振り返るような人。案内中に一緒に歩いていると少し鼻が高くなる。
たくさんの物件を案内して、2件ある新築物件のどちらかで決めようと絞れてきた頃。
「物件を決めちゃったら金城さんとこうやってドライブできないんですね。寂しいです」
って言われたもんだから完全に好きになってしまいますよね。
私もまだ20代半ば。
血気盛んな時期です。
一歩間違えればお客さんと業者という関係が崩れてしまいかねない状況。
でも残念ながらそうならなかったんです。
その理由は案内の時に毎回お母さんが同行してくれるのでお食事に誘うこともできないし、お母さんはぺちゃくちゃおしゃべり好きな感じだが上田さんと雑談するばかりでこっちと話をすることはほとんどない。
私が変な気を起こさないようにガードを固めているようなそぶりさえ見せる。そんな感じでした。
あ、ちなみにこのお話は私が独身の時の思い出ですよ。
あとお客様を見る時に毎回そんなやましい感情は持ち込みませんって。
いやいや。本当です。本当本当。
嘘じゃ無いです。本当だってば。
神に誓います誓います。
はい誓いますアーメンアーメン。南無阿弥陀仏。コップンカ〜。タンディガータンディ。
これだけ誓えば信じてくれますよね?
◆最終決断
さて、絞った二つの物件のメリットとデメリットを比べながらいよいよ申し込みの最終段階。
どちらも新築で今週完成したばかりの女性専用マンション。
完成するまではまばらだった問い合わせも完成後は数倍に増えている人気物件。
上田さんとお別れになるのももう時間の問題か。
寂しいながらどちらの物件もAD200というとてもいい条件。
上田さんとデートを楽しみながらAD200もいただけるなんて堪りません。上田さんもADも大好きです。
そんなこんなで最後の詰め作業に移行しながら第一候補の物件を再度内覧することに。
この後部座席のいい匂いももうすぐ嗅げなくなると思い寂しくなりながらもAD200だ。
煩悩と煩悩を打ち消し合いながら粛々と進めていく。
◆やっぱり気になる
今までもたくさんの物件を見てきた上田さんはとうとう心を決めたらしく
「ここにします!」
って言ってくれた。
決めてくれた部屋は残り1戸となっていて他社からの問い合わせも多い物件。
いざ申し込みと契約の段取りを進めて・・・
「ちょっとまって。あいちゃん(上田さんのこと)。この物件、新築でいいけど駅からの距離が気になるわ。少し裏道を通らないといけないのも危ないわよ」
は??
今更になってお母さんの横やり・・・
「ねえ金城さん。あいちゃんはこんなに美人さんなんだから危ないわよね〜。やっぱりもう一つのとこにした方がいいんじゃ無いかしら?あ。でもそっちも危ない気もするわね」
そのもう一つは少し駅に近いが裏道を通るのは変わらない。
しかもそっちも残り1戸となっていた。
上田さんもたくさんの物件の中からどうにか決心した矢先にいきなりの横槍で明らかに戸惑っている。
いやこうなったらスピード勝負!
「ではすぐにそっちと見て比べましょう!いまから手配するので他社が案内していなければすぐに見れるはずですから・・・」
「あ〜今日はこのあとボランティア活動に参加しないといけないのよ。だからまた来週に見せてもらいましょう。ね?あいちゃん?」
上田さんは何も言い返せないらしく渋々頷く。
あ、なんかボランティア活動もしているって言っていたな。
上田さん、美人で愛想も良くてボランティア活動もするなんて。
やっぱり好きです。お味噌汁作ってください。
いやそんなこと言っている時間はない。
どっちも誰かに取られてしまう可能性が高い。
「物件は近くなので一時間だけでもいただけませんか?人気物件なので来週だと両方とも決まってしまうかもしれません」
不動産営業マンの煽り文句ではなく来週までの間に残っていないと確信できる。急いでもらわねば。
「え〜でもこの前『不動産ってご縁です』って金城さん言ってくれたじゃない?もし来週までに他で決まったらご縁がないってことじゃないかしら?
そういえば『ご縁があれば物件が待っていてくれますよ』っても言っていたわよね?まだ新生活まで時間もあるしこっちはそんなに急いで決めなくてもいいわよね?」
「・・・はい」
上田さんが消えそうな声で返事をする。
・・・ちくしょう。過去の俺のバカ。余計なこと言いやがって。俺のフィアンセが悲しんでいるじゃないか!上田さんに辛そうな顔をさせてしまったことを心底悔やむ。
でもマジで来週までなんて待ってられない。
こっちが何か言おうとするや否やお母さんは荷物をまとめて出る準備を始める。
「あ!じゃあそういうことで。次の電車に乗らないと遅れちゃうわ!私みんなから頼りにされているから私が遅刻するわけにはいかないのよね〜。はい!いくわよ!」
バタン!
申込書を片手に一人新築物件に取り残された私。
鍵を返しに行くと管理会社さんが聞いてくる。
「お疲れ様でした。どうでした?」
これまでの経緯を説明する。
「あちゃ〜これ、この後に案内する人で決まりますよ多分。」
ですよね・・・あと一歩のとこで契約が逃げていった・・・
ちくしょう。
もう一つは来週まで残っている可能性はあるのか?無理だよな。
念の為電話してみる。
一縷の望みに期待を寄せたが管理会社からの返答は「満室になりました」という返答。
・・・ちくしょう。やっぱりな。
また一からやり直しだ。
AD200が・・・ああ・・・
◆やり直し
上田さんには候補の二つはどれも多決したと連絡。
「そうですか。。。残念ですが来週からまたよろしくお願いします」
ふぅ。目先の契約は消えたが上田さんが付いてきてくれている。
契約が後に伸びただけだもんな・・・
AD200は惜しいが上田さんとまだデートができるじゃないか。前向きに考えよう♪なんなら結婚を前提に部屋探しだ!
落ちた気持ちを上げながら次の週末に向けてブツ出し(空き物件を検索すること)に励む。
だが逃してしまった新築の物件に未練があるらしく翌週の案内では決まらなかった。
その翌週も同じ結果。
そりゃな、たくさんある中からあれだけ絞って検討したんだもん。
すぐに次の物件が出てくるなんてなかなか無いよな。。。
目前で他の女に取られてしまった前の彼氏(物件)を忘れさせるのは至難の業だ。
あいちゃん!俺がいるじゃないか!昔の男なんて忘れさせてやるよ!
それから二週間が経ち、なかなか元カレを諦めきれない上田さんとの案内の日。
朝イチで新着物件を漁っていると出てきた情報に電撃が走る。
奇跡的に前回と同じハウスメーカーの築一年の物件に空きが出た。
間取りも設備も同じ。賃料も新築より3000円安い。
しかも前回逃した物件よりも駅に近く裏路地などを通る必要がない。
お母さんが気にしていたネックも解消されている。
きた来たキターーーーーーー!!!!
このタイミングで出てくるなんて『ご縁』きたーーーー!!!
結婚まっしぐらやーーー!
急いで上田さんにメールをする。
上田さんからはすぐに電話が来て
「これに決めたいです!お願いします!すぐに伺います!」
と言ってくれた。
退去届が出たばかりで中を見れないが上田さんはすぐに申込書を書きに来てくれるということになった。
念の為管理会社にも確認したが情報をアップしたばかりでまだ問い合わせが無いとのこと。
しかもADはまたもや200。もうみんな大好きです!
完全に風が吹いている!この風をものにして見せる!
先週こちらと同じく新築を逃した人たちがこぞって取りに来るだろうから急がねば!
あいちゃん!幸せな家庭をつくろうな!
管理会社に入居申込書をもらって上田さんのサインさえ貰えばすぐに送れるようにスタンバイ!
急げ急げ!!
いっけーーーー!!
早く来い!早くこ〜〜〜い!!!!
ご縁こいーーー!
◆急転直下
興奮気味に上田さんの到着を待つ。
急いでくるという割にはなかなか現れない・・・
まだか?まだか?
時計の針と睨めっこをしながらはやる気持ちを抑えつつ、他社に取られないことを願う。
カランコロ〜ン
きた!!!!嫁よ!待ってました!
・・・。
あれ?
来店した上田さんの顔は浮かない。
嫌な予感。。。
「上田さん?どうしました?」
「あら金城さん。中も見ないで決めるなんてダメでしょ?って言ったのよ。あいちゃんたらもう先走っちゃって。説得するのに時間が掛かっちゃったわ〜。金城さんからもあいちゃんに言ってもらえるかしら?」
またもやお母さんの邪魔が入る・・・
遅かったのはお前のせいか・・・
上田さんは俯いて顔をあげない。
おい、マジかよ。
女性専用マンションだし同じ建築メーカーで築年数も一年しか違わない。
間取りもほぼ一緒。
条件もほとんど一緒。
外観も一緒。
なんなら駅も近くなっているし明るい道沿いで女性一人の通勤路としての危険性も極めて低い。
中を見なくても前回逃した物件と一緒じゃ!むしろ前よりいいわ!!
思わず怒りが込み上げてくる。
「ほら、築一年っていっても誰かが一度住んだんでしょ?それが前回の新築と3000円しか違わないのも納得いかないのよ。ねえあいちゃん?」
上田さんは死んだ魚の目をして一言も発しない・・・
お母さんは上田さんとこっちの表情を全く意に介さずに続ける。
「中を見てからもう少し値下げをしてもらえるように交渉してもらえるかしら?」
「いや・・・退去は来月なのですが中を見れる頃にはもう決まっている可能性が高いです。前回のよりも好条件なので多分今日決まります・・・」
「あら。じゃ、今住んでいる人に言って今から中を見せてもらいましょうよ。ねえ?あいちゃんそれなら安心よね?」
「え・・・でもそんなこと無理ですよね?」
来店後上田さんが初めて口を開くが無茶なお願いだ。
ここはこっちでキッパリと断ろう。
「売買物件の時は稀に居住中の案内という物件がありますが、賃貸物件の場合は基本的に無理です。」
「あら、金城さんすぐに無理っていうのはよくないわよ。まずはお願いしてみたらどう?決めつけないで聞いてみてよ。」
イラ・・・
「いや、管理会社に聞いたとしてもまず無理って答えますよ。今居住中の方も嫌がりますし、女性の単身用マンションですよ?つまり住んでいる方も単身の女性です。逆に自分が住んでいる時にいきなり中を見せてくれって言われたら嫌じゃないですか?」
「う〜ん。そうかしら。私なら見せるわよ?だって見たいと言って困っている人がいるのよ?喜んで見せるわよ。ほら私って困っている人をみたら放っておけないのよ。ねえあいちゃん?」
イラ・・・
うるせ・・・静かにしろよ。
おばさんの部屋と独身の女性の部屋は違うんだよ。
おばさんの部屋なんて見たくないわ。。。
困っている人を放っておけない?
俺もあいちゃんも困っているじゃん。
見てわからん?この表情が伝わらない?
こっちの迷惑は気にならないのかよ。。。
ふぅ。。。
お母さんに嫌われるかもしれないけどキッパリいうか。
「いやお母さん。居住中の物件を見せてくれとか不動産賃貸の常識としてあり得ないんですよ。例えばですけどお嬢さんのお住まいに見ず知らずの人が中を見にくるとかあり得なく無いですか?一人暮らしの物件に知らない業者と知らないお客さんが入ってくるんですよ?危ないと思いませんか?あとこんなんじゃいつまで経ってもお嬢さんの希望の物件なんて出てきませんよ」
言ってやった。
気を悪くして出ていくかもしれんな。
でもこういう空気を読まない親御さんにははっきり言わんとわからんしな・・・
「え?私お母さんじゃ無いわよ?娘も居ないし」
上田さんも小さく頷く・・・
え?
・・・・え?
じゃお前誰だよ!!!!
長くなったので次回に続きます。
次回予告
・じゃあこのおばさんは誰?
・上田さんは物件を決めれるのか?
・サザエ、ノリスケさんと一線を超える
お楽しみに〜♪
では〜
沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!