見出し画像

実際にあった相続未登記案件#1

◆反社組織?の中からの書類奪還作戦


こんにちは。
(株)REGATEの金城です。

本日は過去に掲載したHPコラムの
不動産実務~相続未登記物件の売却~
の特殊な事例を更に深堀して最近ハマっているnoteにリバイバルをしました。

だいぶ長いので2~3編に分けてお送りします。

私が対応した相続未登記案件で一番大変だったケースをご紹介。かなりレアケースです。。。


◆未登記物件の概略

画像1

~~~~~~~~~~~~~~
古屋付きの土地の売却依頼(建物解体前提)

土地上の建物に賃借人が居住中

依頼者はAさんとBさんでEさんは行方不明

物件の名義人はAの祖母C

Cは前妻の後に嫁いできてもともとはこの土地の地縁者ではないし、夫婦間で子供は生まれなかったらしい。
亡旦那の嫡出子はおらず子供は全員Cの連れ子。。。

ハイ。分かります。この時点でこんがらがります。

略図を作ったので概要図を参照ください。
この図の関係者くらいなら相続登記は簡単に終わりますし、問題点はあまりありません。
ただし、今回のケースは相続登記の相談から売却に至るまでの壮大なストーリー。。。

しつこいですがもう一度概略を貼っておきますwww

画像2

◆難易度高めの問題点だらけ


この物件立地が良くて、権利関係がまとまれば即売れるような案件。
意気揚々とテンション上げて取り組み始めました。

物件の売却依頼を受けて、AさんとBさんと面談。
相続登記と遺産分割協議などの概略を説明。

「絶対売れます!任せてください!」
と鼻息荒く大見えを切る私。。。

まずは数日間に分けてヒアリングをしながら物件の詳細を分解します。
司法書士も交えながら相続の名義人などの法的な整備を進めていたんですね。
さっきも言ったように最初は
「相続登記を済ませて、建物を解体すればOKじゃね?」
「場所いいしサイコーじゃん♪」
という楽観的な感じでした。

でも掘り下げていくうちに少しづつ雲行きが怪しくなってきたんです。。。

問題点1.(今回の記事)
権利者のEが20年以上連絡が取れなくなっている。親戚の話では横浜で生活保護を受けている?

問題点2.(次回の記事)
土地上の建物の賃借人が生活保護世帯の80代夫婦と50代の無職息子

問題点3.(もう書くのが嫌になってきた・・・)
登記名義人のCが嫁いできて地縁者でないので売却をすることに反対している親戚がいる血縁者(相続人)かどうか不明。

どれか一つでも解決できずにこけたら全てが水の泡。

成功確率が低い段階ではお金の支出も最低限に抑えないといけません。
(退去費用や解体費用など)

こういう時はセオリーとして難易度の高い順に解決を目指します。

その前にまずは依頼者AさんとBさんに
「楽勝と思ってすみませんでした。撤回します!!」
と土下座をするところからスタートwww


お二人には売却が成功するにはたくさんのハードルがある事。
万が一どこかでこけたらそれまでかけたお金も戻ってこない事など全てのリスクをお話して全面的にご協力いただくことで話を進めることになりました。

・・・前置きが長くなりました。では数々の困難と奇跡の軌跡をご覧ください。


問題1.権利者のEが20年以上連絡が取れなくなっている。親戚の話では横浜で生活保護を受けている?


今回の案件の一番の山場。
まずはこのEが見つからないと相続登記ができませんし、遺産分割協議もまとまらず売却なんて無理。。。

万が一このEが内地で子供を作って死亡していたりしたら、、、、見ず知らずの子供たちを相手に話を進めないといけないし、、、お金が絡んでくると目の色変える見ず知らずの相続人をたくさん見てきたし、、、
もしも子供が海外に居たりしたらもう絶望・・・


どうしても消息がつかめない時は「不在者財産管理人選任の申立書」などのややこしい手順が必要になるし、財産管理人も選出。そのあとの財産管理も面倒だし。。。

海外に子供がいた場合は裁判所と現地の大使館に協力をしてもらって遺産分割協議書と印鑑証明書に代わる宣誓証書を・・・




(嫌だな~・・・いやだな~・・・怖いな~こわいな~)
など稲川淳二になりながら最悪の事態を想定します。。。

まずはCとEがつながる戸籍謄本を取得。


幸いにもEの死亡届けは出ていないようだが生存しているかは不明。
Eには婚姻歴も無く子供もいないことが分かり少しだけホッとする。。。

さて、ここからが本番。
Eに連絡を取る手段はないモノか?探偵?弁護士?
正直なところまだ売却の成功確率が低い状態であまりお金をかけたくない。。。

住所もちゃんと住民票通りになっているか?
何でもこのEはかなりのギャンブル好きでいろいろあって親戚から逃げるように沖縄を飛び出したらしい・・・
借金から逃れるために住民票も移さない人も多いっていうし。。。

というか借金がある人と遺産相続のお話がまともにできるだろうか???


様々な不安要素が入り組んでいるのでAとBとも相談した結果、今の段階で探偵や弁護士などに依頼をしてお金をかけるのは選択肢から外すことに。。。

◆お手紙送付大作戦


もうお金をかけずにアプローチする方法は手紙を書くというアナログな作戦しか思いつかない!やってみよう!
完全にダメ元でした。サッカーやったことない人にメッシからボールを奪ってくれってお願いするくらいダメ元です。

他にいい方法があれば誰か教えてください。


手紙の準備に取り掛かり戸籍謄本を見てみる。
Eの住所は横浜のとある住所と変な屋号。。。

親戚の横浜にいるという情報は正しそうだ。

???

「横浜市○○3丁目△× (屋号)」という感じで明らかにアパート名じゃない。。。。

???なんだ?会社かな?寮??


ネットで調べてみると何やらよくわからないペーパーカンパニー。。。
会社名では電話番号も見つからないしもちろん会社謄本も出てこない。

(借金で逃げた人だし、変な会社とかだと嫌だな・・・)

でも送るしかない。
コチラが不動産屋という事は伏せて、反社さんだった場合に
「間違えました~」って逃げ切れるくらいの最低限の情報を記載。

沖縄に残された不動産の遺産分割で困っている旨の内容と連絡をくださいという簡単な手紙。。。
協力してくれたら持ち分に応じた遺産を分割する旨もしたため投函。。。

。。

。。。

一週間経っても音沙汰なし。
反社さんからも誰からの連絡も無し。
手紙が戻ってくる気配も無し。。。という事は届いたってことだよな?
でも返事が無い。。。

半ば手紙作戦はあきらめながら他にも手段が無いか考えながら、やっぱりこれしかないかな〜と探偵や弁護士などを検索していると・・・


奇跡が起きました!


なんと生存しているEから私の携帯に公衆電話から連絡があって
「不動産の売却に協力する。遺産も要らない」
とのこと。

めちゃくちゃラッキー!!光明がサンサンと降り注いできた♪
遺産分割協議書の説明と必要書類一覧などを送る旨を伝えて通話終了・・・

(あ!借金あるのになんでお金要らないっていうのか聞き忘れた!あとその怪しい組織はなんですか?っていうのも!!まいっかwww)

お手紙大作戦が上手くいったので気分は上々でした。


◆遺産分割協議書送付


早速AとBにはEは遺産が要らないという内容を伝えて
意気揚々と遺産分割協議書と遺産放棄の合意書を送付したところまた音信不通に。。。

あれ?なんで??

仕方ない。また手紙を書こうかな。

二週間も音信不通になって困っています。どうされましたか?再度電話をくださいという内容の手紙を送る・・・


音信不通の期間に並行してこのペーパーカンパニーを検索。

「屋号 横浜市○○  生活保護」検索!

お!出てきた♪やるじゃん俺♪

調べていたらホームレスなどの生活保護受給者を集めて一つの物件に詰め込んで生活させて、
毎月の生活保護費をピンハネしている業者らしい。。。(やっぱり反社??)
むろん中に確保されている人は携帯電話なども無く自由に電話もできないし外出もできないとのこと。。。

ただし、親族からの手紙などを無視して返事をしないと捜索願を出されるので、小銭を渡されて公衆電話で折り返すことができるらしい。。。
なるほど。捜索願とかで警察が動くのが嫌なんでしょうね。


そうこうしているとEから着信♪

Eから聞くと電話の際も電話をしたいという届けを提出して本部?から毎回許可を取らないといけないとのこと。
幸いにも公衆電話での会話は傍受されていないという事でしたがほんとかな。。。。


さらに話を聞くと遺産分割協議書の返送ができない理由が発覚!!

Eはペーパーカンパニーから抜けられないし、資産が手に入ってしまうと生活保護を打ち切られるので遺産放棄をしたいとのこと。
↑ここまでは問題ない。いや、抜けられないのは問題かもしれないけど・・・

問題点は遺産分割協議書に添付する印鑑証明書を発行するために役所に行く外出許可が出ないという事。。。

印鑑証明書を作るための身分証明書や生活保護受給者証もペーパーカンパニーが保管している。。。生活保護受給日以外の外出はほぼできないらしい・・・公衆電話は組織のエントランス?に設置されているみたいです。

「もうアウトじゃん?」
光明が一気に暗雲に変わりました。。。

◆一難去って。。。


ここで万事休すか。。。と諦めそうになってAさんとBさんと面談。。。

そこでAさんが「私が横浜の現地に行って面会してきます」と申し出てくれた。

話し合いの中で出た作戦がこんな感じ。

まず、電話などを律義に返させる業者なので親族の面会を断ることはしないという読み。
もし面会ができない場合はどうするか?
生活保護の需給は本人が受給者証を持って役所に行くのが通例なので予め需給日を確認し、役所内でEと落ち合いそのまま印鑑登録をさせ印鑑証明書を取得。

その印鑑で遺産分割協議書に署名押印させる。
そもそも印鑑証明書を当日に発行しないタイプの行政だったら。。。という不安は無視!www


というやや強引なミッション。成功確率はどのくらいだろ?

需給の窓口ではペーパーカンパニーの輩もうろうろ出来ないだろうというこっち都合の希望的観測に一縷の望みをかけての作戦。時間をかけすぎて怪しまれるのも怖い。。。
事前に公衆電話で折り返しが来たときにこの作戦をEに伝えてから当日はぶっつけ本番。

また、何度も手紙を送っているし、電話連絡もできているにも関わらず面会を依頼してしまって、反社さんに警戒されるのが一番怖い。
まずは市役所で一発勝負をかけようという事に。。。
役所で会えなかったら面会を申し込む作戦という二段構えのミッション。

上手くいくかな?

◆運命の当日。


事前に何度もシミュレーション。
念のためAさんにも印鑑証明書と住民票。Eさんとつながる戸籍謄本。また、送付している遺産分割協議書と同じ書面を持参してもらっていざ横浜へ・・・


そろそろ決行の時間帯だな。無事にできるかな。。。

ドキドキしながらAさんからの連絡を待つ。

Aさんから着信!
「どうでしたか?」




なんと市役所ぶっつけ本番作戦が功を奏しどうにかEの遺産放棄の分割協議書を手に入れることができた。

Aさんは生活保護受給者の窓口付近で待機していたところ叔父さんの顔はすぐにわかり、需給後すぐに印鑑証明書の発行手続きへ。
ペーパーカンパニーの輩も市役所の入り口で待機しているので中までは来なかったとのこと。


また、私の提案で持たせたAさんの印鑑証明書などの書類を持参したのがビンゴだったとのこと。
役所の人はすぐに本人確認で印鑑証明書を求めますからね(なんか役所に勝った気分w)

あと、予想通りEさんは遺産分割協議書を持ってこなかった。(というか不必要な書類は持たされないらしい)

そんなこんなでいくつもの奇跡が重なって無事に書類が手元に用意できた。
これで相続登記ができる♪


今思うとこのペーパーカンパニーは遺産分割協議に協力してEに放棄させない方が儲かったんでは?と疑問が出てきます。


協議書に金額などは一切記載しなかったのがよかったのか、沖縄の田舎の土地の持ち分なんて大したことがないという判断だったのかもしれません。


小さな額の遺産を狙うよりも定期的に需給金をピンハネした方が得と考えたんでしょう。
実際にEの相続持ち分は1000万円くらいの大金になる予定でしたから、結果的にこちら側が得したのは言うまでもありませんwww
(ま、私の取り分は仲介手数料だけでしたが・・・)

Eがこの組織から抜け出そうとしない理由や組織側が遺産分割協議に参加してこなかった理由は未だに闇の中・・・

とりあえず相続登記ができる事に一安心♪


さて、忘れている方もいると思いますがまだ一つしか問題は解決していませんwww


問題点2.(次回の記事)
土地上の建物の賃借人が生活保護世帯の80代夫婦と50代の無職息子

問題点3.(もう書くのが嫌になってきた・・・)
登記名義人のCが嫁いできて地縁者でないので売却をすることに反対している親戚がいる血縁者(相続人)かどうか不明。

この二つは次回の記事で・・・

果たして売却は上手くいくのか?
にしても専門的な内容と不動産仲介業者しか面白いと思わない内容だなwww

とりあえず今回はここまで。

では~


HPでは不動産に関することとか沖縄の不動産あるあるについてのコラムを公開しています!
ご興味がある方はそちらもお読みください♪
沖縄不動産あるある→REGATEコラム
不動産テックのこととかそんな感じ→REGATEコラム

沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!