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【ショートSFコント】蟻地獄




私は、突如として蟻地獄と呼ばれるホール(穴)に落とされてしまった

ヤバいっ!と思った瞬間もうダメだった

もがけば、もがくほど、どんどんすり鉢状の流砂に飲まれていき、脱出できなくなってしまった。

そして、気がつくと私は穴の中にいた。だが、私以外、他にも落とされた人達がいたのだ。その人達に話しを聞いてみたところ、なんとゲラと呼ばれる主がいるらしい。

だが、その主から呼び出されると、もうここに戻ってきた者は、いないという。

つまり、なぜ落とされなのかは謎のままに、一人またひとりと消えていくのだ…。ただ、私が落とされように、次々と穴に落とされやってくるのだ。

そして、またこの蟻地獄の主ゲラからの呼び出しが来るらしい。もちろんそれを拒否する事は出来ない。

そろそろ私の番がやってくる、もうここには戻っては来れない。しかしここも所詮は穴倉、居心地が良い訳ではない、早く出たい気持ちはあるが、どうなるかが問題だ。

もしかしたら、呼び出された後に出られるかもしれない…。

そして、ついに私の番が来てしまった。

私は奥の洞穴から入った、ゲラとは一体何なのか、人間かモンスターなのか…。

殺されるのか、食べられてしまうのか。

私は蟻で、もうすぐウスバカゲロウの幼虫に体液を吸われてしまうのだろうか…。


ゲラ「おい!そこのお前!こっちへ来い!」

私は「はい」と返事をして、奥へと入っていった。

まるで面接のようだ…。

まさかウスバカゲロウに面接を受けるのではあるまいな、と一瞬思ってしまった。


奥へ入ると巨大なウスバカゲロウの幼虫が待ち構えていた。

「ヤバっ!」


そのバカでかいアリジゴクのグロテスクさと恐ろしさに圧倒されてしまったが、とりあえず写メしようと思ってしまった。

コーダーは目をギラギラさせながら巨大なハサミをシャキシャキと音を立てながらこう言った。

ゲラ「おい、お前、俺が怖いか?」

俺「はい、でも迫力ありますね」

コーダー「そうだろう、アリジゴクと呼ばれ、地中のライオンの異名を持つんだぜ」

俺「そうなんですか、それは凄いですね、あの写真撮ってもいいですか?」

コーダー「ヤメロっ!それだけはやめてくれ」

俺「あっ、すみません」

いや、普通に写真撮るだろうこれは…。

ゲラ「実はなお前を呼んだのは他でもないんだ、俺の話しを聞いてくれぬか?」

そのバカでっかいウスバカゲロウは真顔でそう言ってきたのである。

俺「お話しですか、ええ…まあ…、私でよければ…どうぞ」

ゲラ「そうか、話しというのは相談でな、俺の作った蟻地獄は昆虫の専門家や学者たちからは、見事な仕掛けで獲物を得る事で定評があってな、主にアリを捕食してきたんだ」

「ところがだ、その強さというのはこの蟻地獄だけの話しなんだ、一旦蟻地獄から抜け出ると、アリからは逆にボコられる始末だ」

「私はすっかり自信をなくしてしまった。あれだけ強さを誇示してきたのに、世間に出たら無力だったんだ。もうプライドがズタボロになってしまった」

「そこで相談なんだが、その事で最近鬱っぽくなってしまってな、立ち直るにはどうしたらいいかお前に聞きたくてな、色々な人達に聞いてきたんだが、君はどう思うかね?」


私「…………。」

面接じゃなくて人生相談だった…。

まさかウスバカゲロウの幼虫のアリジゴクに人生相談を受けるとは思いもしなかった

私はアリジゴクの相談を真摯に受け止め返答した。

私「そうですね…、いやあの別にそのままでいいかと思いますよ。私もそうなんですが、コーダーさんは、コーダーさんの得意分野、そのフィールドというか、ステージの土俵で勝負すればいいのではないでしょうか…ですので、無理に不利なポジションでやるより自分らしさを出して、精一杯やればいいかと思いますね、現にこの蟻地獄の仕掛けは完璧に近いですし、私もここへ来る時、落とされましたが、もうどうする事も出来なかった。今後もこの装置と仕掛けに自信を持って捕食し、成虫し、ウスバカゲロウとしての人生を歩めばいい、ですが正直ウスバカゲロウよりアリジゴク時代の方が知名度があるし、人生のピークが幼虫時代というのも虚しさあるかもしれませんが、もう、これは悠々自適な隠居生活と割り切って余生を楽しめばいいんですよ!だからそのままでいいんです!だからこれからも変わらない姿で活躍を願ってますので、応援してますよ、ほんと…。」

私はそう返答するとアリジゴク、コーダーは目を瞑って聞いていた、そしてこう言った。

ゲラ「そうか、分かった。そう言ってもらえると嬉しい。私はアリにやられてすっかり自信をなくして、自暴自棄になっていただけなんだな、アリジゴクという最大の武器を活かして私はこれからも地中のライオンとして生きていく事にします、今日はありがとうございました」

「気持ちが落ち着きましたし、気分も良くなりました、鬱治ったような気がします」

私「いえいえ、こんな返答で役に立てて頂いて私も嬉しいです」

ゲラ「気分も良くなり腹も減ってきたので、その命私に下さい、体液吸わせて下さい」



「えっ〜結局、殺されるんかいっ!」


「そう俺は地中のライオン、アリジゴクだからな」


「えげつなっ…」




        終










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