恐怖の帰り道#3
これまでのストーリー
ミステリー作家が、山奥にあるアトリエを目指していると、執拗に追いかけてくる車に先回りされ、待ち伏せされてしまう。
今度は、相手の方からこちらへ向かってきたので、作家は身の危険を感じ警察へ通報することにしたのだが…。
本編
M田は、スマホを取り出しハンズフリーに切り替え、110番した。
そうしている間にも相手の車は徐々に迫ってくるが、眩しさと恐怖に怯えながらも警察へ電話する。
トゥルルル…、トゥル、ボツっ
警察「はい、こちら警察です。事件ですか、事故ですか?」
M田「事件です!」
警察「どうされました?今、身の危険はありませんか?」
M「急いで来て下さい!キチガイな車が私の方へ向かってくるんです」
相手はスピードを上げこちらに突進してきたのである。
M田「こっちへ向かってきました、助けて下さい!場所は…うわっ〜!」
警察「どうされました、大丈夫ですか!」
相手車のハイ目ライトは最光に達し、ぶつかる寸前にギリギリ交わしそのまま下り去っていった。
M田「あっ〜危なかった、何とか助かりました…、でも相手の車はいなくなりました」
警察「本当に大丈夫ですか?話せる状態ですか?その車は近くにいませんね?」
M田「はい、完全にいなくなりましたが…、怖い思いをしました」
警察「その場所は安全ですか?とりあえずそのまま電話は切らずに、安全な場所へ移動して下さい」
M田は路肩に車を寄せ、ハザードを点灯させた。
警察は、作家の名前や自宅住所、電話番号など、現在の場所も位置情報を携帯電話から掴み、これまでの経緯などを聞いてきた。
警察署にて。電話ごしにメモをとりながら対応する警官
警察「……ええ、別荘のアトリエへ向かっていた、ええ…、それで、こんなにも夜遅く…、それまでどちらにいましたか?……物書きというと、作家さんとかですか…ええ、講演会のあと、ええ、交流会で遅くなってしまった、という訳ですね…ええ…、ちなみにその講演会の会場は何処でしたか?何人くらい参加でしたか?…その後の交流会の会場はどちらでした?何人くらい?…ええ、あっ、そうですか、その時、何か変わった様子はありましたか?それでその主催者の方はどういった団体さんだとか法人さんだとか…ええ、あ〜そうですか…」
警察とのやり取りは20分以上続いた。
警察「いいですか、M田さん、ひとまずその別荘というかそのアトリエへ帰っても大丈夫かと思われますので、そのままお帰り下さい…ええ、あおり運転を受けての被害届けは出されない、という事でしたので、ええ…、お怪我なども特にないという事ですし、警察が対応できるのはここまでですので…えぇ、…もし何か不審を感じて、被害届けを出されるのであれば、ドライブレコーダーの記録も一緒に提出していただきますので、消去しないで保管しておいて下さい。えぇ…、また何か危険を感じましたら警察の方へお電話下さい、ええ、道中もお気をつけてお帰り下さい、それでは…。」
ガチャんっ(電話を切る音)
M田は何とか危機を脱したが、胸騒ぎが止まらなかった。
警察署にて。
警官・A野「またあおり運転ですか?」
電話対応した警官・S島「うん、今回はちょっと悪質だったな」
「だけどな、ちょっと気になるんだよ」
「おい、この街出身の作家のM田O広って知ってるか?」
A野「いいえ、知りませんね」
S島「アトリエを持ってるくらいだから相当売れてる作家先生なんだろうけどな」
「じゃ摩天楼コミュニティホールって、どこだっけ?」
A野「この町にあるんですか?」
S島「ならskyscraperって居酒屋は知ってるか?」
A野「この町の飲み屋は、巡回でほぼ回ってますけど、そんな店は聞いたことないですね」
S島「……そっか、一応調べておいてくれないか、なんでも講演会場と交流会で行った居酒屋なんだと…、俺は作家先生のアトリエの場所を調べるから」
A野「はい」
その頃M田は、警察の言う通りに、アトリエ別荘へと恐る恐る向かったのである。
つづく
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