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【音楽の進化と衰退】それでも人間は音楽の楽しさを忘れない

 人間はいつから音楽を楽しんでいるのだろう。骨の笛を奏で、生物の皮を張った太鼓を打ち鳴らし、狩の獲物や豊作を祝い、踊りながら神に感謝したのであろうか。動物には歌を歌うという能力ははないと言われている。鳥の囀りとかは歌ってるように聞こえなくもないが。
 やがて宗教的な儀式、村のお祭り、労働作業など音楽は人間の生活にどんどん入り込んでくる。赤ちゃんが音楽に興味深く反応することはよく知られており、子供をあやしたり、寝かしつけるにも大事な役割を果たす。西洋では宗教や宮廷と深く結びつき大衆も巻き込んで、数々の名曲、偉大な作曲家を生み出し、多岐多様化してクラシック音楽文化を育んできた。
 そして近代にはメディアの発展とともに一大産業にのし上がる。ラジオやテレビから毎日音楽が流れ、レコードの登場により個人でいつでも気に入った音楽を楽しめるようになる。
 エルヴィスやビートルズは音楽を超えて、若者のファッション、ライフスタイルにまで大きな影響を与えることになる。若者はギターをかき鳴らして政治批判を行い、ロックやパンクなどは自己主張の手段にもなる。一方で音楽業界は多種のメディアを通じてアイドルを生み出し、巨大な富を生み出すことで社会をも席巻してきた。
 しかしパソコンの出現はこの発展の波に一石を投じることとなる。作曲や編曲、演奏までもパソコンが入り込んでくる。昔はどんな短なCMソングもスタジオでミュージシャンが実際に演奏していた。それがパソコンに置き換わるとコストは激減する。
 加えてネットによる楽曲配信はそれまでの楽曲販売の構造を破壊し、動くお金のスケールにも大いに影響を与えた。
 そこに生身の音楽を発信できるライブはコロナにより一時的に消滅する。随分回復はしてきたが爪痕は未だ大きい。
 最近の業界の特徴として過去の楽曲のカバーや過去の楽曲そのものに注目が集まるという現象もよく見かける。音楽はメロディ、ハーモニー、リズムから成るが、これらの組み合わせの物理的な限界を懸念する人たちもいる。

 音楽のない世界は考えられない。美しい音楽が琴線を震わせてくるような感覚、現状から瞬時に別の世界に連れてってくれる感覚、昔の自分や今の自分の気持ちをしっかりなぞってくれる感覚、生の演奏のグルーヴに何もかも忘れ酔いしれる感覚、世の中の環境がどんなに変わっても、いつまでもこの感覚を人は忘れない。
 【REG’s Diary    たぶれ落窪草紙  1月12日(金)】


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