見出し画像

落ち葉、ぬかみそ、森の土。アイデアは経験と記憶の切り抜きと切り貼りから生まれる。

加速する考察


植物が育つ上で必要なものは土、水、栄養素だけでなく、
土中の微生物もどうやら必須条件らしいと、とりあえず結論づけた。

ただ、この時私が何とかしたかったのは
あくまで超極薄切干しを作る際に出る野菜くずの有効利用で、
その方法の模索でしかありませんでした。

井の頭公園

年末近い土曜日。
吉祥寺に年末年始の買い物に出かけましたが、そこはコロナ1年目の冬。
そんなにのんびり出歩くことはできません。
ただ、やはり運動不足気味でもあり、
コロナ下でも外を歩きたい衝動はあったので、
買い物の前に井の頭公園へと足を向けました。

井の頭公園は我が家からは決して近くはないけれど、
公共交通を使ってそれでも一番近い自然を感じられる公園で、
園内には大きな池や、江戸の頃から通っている隧道。
ひらけた散歩道、広場、公園、こんもりとした森があり、
育っている紅葉樹も太く大きいものが多く、
人気のデートスポット、癒しスポットとして愛されている場所です。
一角にはジブリ美術館もありますしね。

もっとも私がいつも歩くのは
公園の中でもあまり人が歩かない落ち葉たっぷりの裏道とか脇道で、
こういったあまり知られていない景色もよくない道の方が
森特有の湿った落ち葉の甘い香りが楽しめるのがお気に入り。

コロナ禍の井の頭公園は普段よりは少ないものの
思ったより人出は多かった。
すれ違うひとみんなマスク姿でおのおのが適度に距離を保っている。
この頃の心のありようは、
きっとどの人も等しく同じ不安を抱き僅かな希望を探す
そんな毎日だったろうと思う。

人気のない木立の間でマスクをずらし、
思いっきり鼻から森の香りを吸い込み、樹と土の香りを味わう。

このさわやかで懐かしく芳しい空気の
どこに人の命を奪うほどのウィルスが隠れているのだろう。

もう一度、思いっきり鼻からこの地の香りを嗅ぐ。
湿った落ち葉の香り、発酵する植物の甘い香り、キノコの香り……

腐葉土の下の下の世界

ん?キノコの香り?
そうだ、そうだよ。
「落ち葉堆肥とか腐葉土は土じゃない。」土じゃないじゃん!
この香りは全て土の香りじゃないじゃん!

いやいやちょっと待て、そもそも土ってなんだっけ?
土をとことんまで細かく考えると、
そうよ、石よ。細かい砂よ。
砂だけでは植物は育たないけど、そこに何かが混ざれば「土」になる。
「何か」っていうのは「腐葉土」?
ちがうちがう、植物の形が残らないほど細かくなった「有機物」。
その有機物が風や雨やその他の自然現象で
細かな鉱物と混じって堆積したのが土。ってことじゃないの?

もう少し想像してみよう。
秋から冬にかけて紅葉樹から枯れ葉が地面に落ちました。
落ちたままの枯葉を食べう生き物はほぼいません。
雨が降って落ち葉が湿ります。
湿った落ち葉の繊維は柔らかくなります。
柔らかくなった落ち葉はダンゴムシ、のような虫が喰みます。
水分があれば、菌類が移動しやすくなるので、
菌類が自分たちの好きなとこだけ食べ散らかします。
そうだ、植物の繊維って、棒ではなくて網目構造だから、
きっと、網目の中の部分を菌は食べるんだろう。
菌類が落ち葉をはむ時、発熱するし、虫のふんも発酵して発熱するから
その熱でも葉は柔らかくなるかもしれない。

そうして主に菌類が枯葉を喰んでいる最中の状態のものが
「腐葉土」なのじゃないだろうか。
そうすると、腐葉土は「土」と名がついているけど、土じゃない。
「完熟腐葉土」も「土」ではないってことなのかも。
実際、植物は腐葉土だけの中に根は張らない。
それは土じゃないから。
厳密にいえば、腐葉土の中で発芽しても、
根はその下に伸ばず。
なぜなら腐葉土だけの部分は柔らかすぎるから根が安定しないもの。

それなら、土になるところまで想像してみよう。
黒く変色して堆積した腐葉土の下には、
葉の形は残っていないけど植物の繊維の残骸みたいなものが
堆積している。
この残骸の部分はほんのり温かく柔らかで、
黄金虫とか、カブトムシとかの幼虫やミミズがよくいる層で
そういえば、まだ土より植物片の方が多かった。

もっと下まで掘ると植物片がほぼない「土」の層が出てくるんだっけ。
この部分にいるのはモグラ、セミの幼虫、山芋、木の根
だったと思った。
そういえば、山芋を掘った時に出た土は
掘ってしばらく、数日間は表面が白っぽかった。
そして時間が経つと土の匂いが弱くなる。
今思うと、白っぽい色、土の香りというのは微生物のものかもしれない。

旧満州、黒竜江省の土はこの腐葉土の下の下の土が堆積したものだとしたら
植物が育つ土を作っているのは腐葉土の下と、
その下の層ってことじゃないだろうか?
微細な微生物が、目視できないほど細かくなった植物片を
時間をかけて喰んでいる。
それが、腐葉土の下の下の土。

ぬかみそ

公園の裏道での考察に若干興奮気味で、
でも、吉祥寺での買い物目的はしないわけにいかないので
ちょっと自分を落ち着かせて商店街へ足を向けます。

腐葉土の下の下の土のことがわかっても、
だからって野菜くずをどうにかできる答えがわかったわけじゃない。
この考察は、単なる自然科学ってやつで、
博物館の展示物の理解を深くした程度のものでしかない。
まぁ、それはそれで楽しいし、有意義だけども。

時々足をむける商店街の乾物屋で干し椎茸を買い。
冷静になってさっきまでの興奮がおさまった時、
路地のどこからか懐かしいかぎ慣れた匂いがすうっと鼻先を横切ります。
これは、「ぬかみそ!」

そうだ、ぬかみそって微生物で、
ぬか漬けはぬか床に生野菜入れてつくるんだわよ!
そういえば、子供の頃糠味噌からきゅうりを取り出し忘れて
ものすごく酸っぱい古漬けになっちゃって、
でもそれを薄く切って生姜と醤油であえて炊き立ての白いご飯といっしょに
かき込むとその酸っぱさが醤油のうまさとあいまって
おいしかったんだよねー。

ちょっと待て、微生物の中に野菜を入れるのがありなら、
微生物の中に野菜を突っ込むのもありなんじゃない?
ぬか床の微生物の住処がぬかなら、
土の微生物の住処は土ってことでいいよね。
それなら土に野菜くずを入れて土ごと改良すればいいんじゃない。
だとすれば、うちには園芸残土もあるわけで
残土と野菜くず同時に使えて、問題解決できる!

お手本がないのなら

私如きが大した知識もなくここまで考えられるのだから、
すでに誰かこの方法を試しているに違いない。

そう考え、揚々と自宅に帰りネットで検索。
コンポストで土を使った方法。…….ない。
でも、土を使った分解方法でキエーロというのはあった。
ただあ、キエーロは黒ぼく土という土の中に生ゴミを入れて土の中で
堆肥を作る方法で、1つ当たりの規模が大きく、
分解までの時間もかかるそう。

それに、当たり前だけど、ベランダでの土改良とか、
そういうコンテンツも情報も見当たらない。

今まではここで諦めていたけど、今は違う。
散々考察したので、めざす「状態」は見えている。
誰かが同じ方法を考えたことはあるかもしれない。
けど、少なくともその方法を試した人はいない。
なら、いちから自分で「それ」を作ってみよう。

うまくいくかどうかはわからないけど、
森の腐葉土の下の下の土の仕組みで
コンポストでも、キエーロでもない新しい方法を!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?