小説 ある夜の移動

あなたは、全面がコンクリート壁に覆われた部屋にいます。
ひとつドアがあります。
フチには右上に少し錆があり、ドアの表面は厚く塗られた塗料の凸凹が見えます。
ノブは金属でできてピカピカしています。

そこから外に出ると夜の草原で、道がスーッと奥まで伸びています。
あたりを見回すと、月明りで風景がよくみえます。その道をゆっくり歩いていきます。

二つの分かれ道にあたり、右に曲がります。

さらに歩くと、道の真ん中がボゥ…と光っています。
あなたがその光の上に乗ると、エスカレーターに乗ったように体が前にどんどん進みます。

どんどん、どんどん加速して、景色がすごい勢いで前から後ろに流れます。
どんどん、どんどん加速して、体は宙に浮き、雲の間を抜けてます。

全身で風を受けながら、ふりかえると街が小さな小さな明かりに見えます。

宇宙に出て月の横を通ります。間近で見る月はとても巨大でおどろくほどです。

星々の明かりが徐々に強くなり、あたりがどんどんまぶしくなります。
体のまわりを光が包みます。
目の前がまっしろに光り、まぶしい!と思った瞬間、あなたはコンクリートの部屋の扉の前に戻りました。
そこから家に帰り、ゆっくりしてから眠りにつきました。


解説 https://note.com/reeeznd/n/n683d98fe303a

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