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夜明け前に見る夢は鳥たちの歌声を聞く 【終章】

 サラは落ち着きのいいソファーに腰を下ろして、おしゃべりを楽しんでいる。35歳になっていた。テーブルの上には、シンプルな白い磁器のカップや銀食器が並び、食器の触れ合う音やさざめき声が少し高い天井に響いている。窓の外を2階建てバスが通り過ぎた。向かいに座っているのは、10年来の友人のyumi。ロンドンの街角にあるクラシックなカフェで、二人は久しぶりに再会した。yumiは数年前に、夫の仕事の都合でロンドンに移住し、サラが休暇を使って会いに来たのだ。

「お砂糖はいくつにする?」
とyumiが尋ねる。サラは茶色いお砂糖をひとつだけ自分のカップに取ると、yumiが自分のカップに銀のピッチャーからミルクを注いで静かにひと口飲むのをぼんやりと見つめる。
「ねえ、yumi。私ね、この光景を前にも知っているような気がするの。」
とサラは口にする。yumiは静かに微笑んで、
「そう?」
と答える。
「もしかしたら知っているのかもね。」
とyumiがつぶやいた。