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長靴狂想曲。

今回は「長靴」について。


先日、買ったばかりの長靴が壊れた。かかとの少し上の辺りが破れて水が入ってきてしまった。しかも左右両方。長靴がダメになることは、就農以来、何度も起きていることなのだけど、これほど悲しい事件はない。しかも買って間もないものなら、その悲しみはとてもとても深い。

「買ったばかり」というのは、今年の3月に買ったもので使用期間約2ヶ月。これが長いか短いか、感覚の個人差はあるかもしれないが、もっと長く使うつもりでいた身としては、早すぎる終焉だった。「そんなもんだろう」とか「使い方が悪い」と言われてしまったらそれまでなのだけど、いったいどんな長靴を使えば満足できるのか?農家は誰しもがこういった「長靴との戦い」を日々繰り広げているといっても過言ではないだろう。いや、過言かもしれないが。僕は就農以来、だからもうじき8年にもなろうかという年月の間、ずっとこの戦いを続けている気がしている。

僕は個人的に長靴を主に価格帯を基準に3段階に分類している。

①1,000円以下のリーズナブル長靴。
②3,000円程度の、ちょっといい長靴。
③3000円以上の、高級・高性能長靴。

これまで、基本的には②の「ちょっといいやつ」を主に買って使ってきた。①の安いものではさすがに心許ない気もするし、実際素材がペラペラだったりして、履き心地はもちろん、耐久性もそれなり。とはいえ、上を見たらキリがなく、③の長靴は果てしなく高い。1万円近くするものも中にはある。そういったタイプは、もれなく付加価値がついていて、特殊な素材や特殊な製法などで、コストパフォーマンスは必ずしも悪くはないのかもしれない。ただ、高い長靴は怖い。もし、期待値よりも低い感想を持ってしまったらどうしよう、と思ってしまうし、何が起こるか分からないこの時代、高い長靴を買ってもすぐさま壊れてしまったりしたら、そのショックからきっと僕はもう立ち直れないかもしれない…。

そうしてこの8年の間、いろんな長靴を試してきた。価格帯以外にもいろんな特徴の長靴が、各店舗の売り場には無数にある。安いの買ってみたり、おしゃれなやつや、知り合いに勧められたメーカーのもの、最先端っぽい技術を駆使したもの、奮発して高いのを時には買ってみたこともあった。あれこれ試してはみたが、いまだに「これだ!」というものには出会えていない。「軽いです!」というものは本当に軽いけどすぐ穴が開いてしまったり、「丈夫です!」というものも今回のようにあっさりやられてしまったり…比べたことはないが、結構頻繁に買い替えせざるを得ない状況に陥ってるかもしれない。そんな僕は買うたびに、スマホで撮影して、どれくらいの期間使えたかを調べているのだけど、こんなんだから、スマホには長靴の写真が増えていく一方だ。





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農家同士でもよくその話が出る。「高いやつを買えば結構持つ」や「安いものを次々履きつぶしていく」など、その考え方は十人十色。それは各農家ごとの経営タイプによっても変わってくるからだ。畑作業がメインなら、短い長靴でも構わないが、水田作業があると、ある程度の長さ(膝上とは言わないまでも、膝下くらいまで)がないと怖い。これは、田んぼの状況(深くぬかるむのかどうか)によっても変わってくる。うちの田んぼは基本的にむかるむので、一度、膝上まであるような「ザ・田植用長靴」みたいのを買ったことがあった。これは「田植え」には確かに持ってこいだったけど、田植え以外ではそこまでの長さは必要なくて、暑いし脱ぎずらいし、だからといって、1年間しまい込んで、次のシーズンに履いてみたらすでに劣化して浸水してきた…という悲しい過去もある。そこに加えて考慮する必要があるのが、作業性や季節。立って歩くだけか、頻繁にしゃがんだりするのか、長い時間履くのか、よく履き替えるのか、とか。そして夏は暑いから涼しいやつ、冬は寒いから暖かいやつが当然いい。こうなってくると、必然的に、一足を通年で使用するのではなく、用途に合わせて複数の長靴を使い分ける、ということが求められることが分かってきた。

これを受けて、夏場は「安い・短い・涼しい」もので、冬場は「高い・長い・暖かい」もので乗り越え、この冬用で「田んぼのぬかるみ」に対抗しながら使う、という方式をこれまでとってきた。その「冬用(兼水田用)」にと見込んでこないだ買った長靴に、早すぎる別れが訪れてしまったのだ。そうは言っても悲しみに暮れている暇はない。季節は待ってはくれない。代掻きを終えたらすぐさま田植が始まる。この急場を乗り越えるためには、涙を拭いて新しい長靴を手に入れないといけない。そして僕はまたいつものように悩みまくり、ネットの波や近所のホームセンターを駆け巡り、先日新しい「相棒」を、意を決して迎えた。

今度のはいつもとは違う…と毎回思うのだけど今回は本当にそう。何と「ウエットスーツ」の生地のような長靴!ネットで見かけて、前にも探したことがあったけど、その時はサイズが合うのが無くて購入を見送ったもので、ちょうどいいサイズのものを今回見つけることが出来た。ユーザーの評判は上々のようだけど、実際はどうかなのか。そして「安いのでいいんじゃないのか?」「もっと高いものを覚悟を決めて買えば?」という自問を振り切り、いつものようにどっちつかずのお求めやすい範囲の価格で結局手を打ってしまったが…果たして?こうして、スマホに「長靴コレクション」の写真がまた一つ増え、思い出もまた一つ増えた、そんな2020年春。本日始まった田植えで早速出番となったわけだけど、初日はまぁ、無難にこなした感。ここから「彼」の真価をじっくり見極めていかないといけないが、無下に扱って壊したりしないように…と、最低限の優しさも大切。何事もそう、そのバランスを見極めながら、ウェットスーツを履きこなし、春の繁忙期のクライマックスへ向けて、僕はぬかるみを越えて駆け出していく…!

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とりあえず今回はこの辺で。おニューの長靴の感想も併せて、またそのうちに。


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