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実験作

3
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#小説

実験作3

「何すれば良いんだっけ」

窓の外見ながら、私はそんな独り言を言い始めた。

雨だった。二階の自室から眺める景色は、薄暗い雨の街。その一端に、小さなブリキの玩具が見えた。瓦屋根に囲まれた細い路地の側溝の上。濡れているのは、ロボットだろうか?丸い眼が二つ、四角い口が一つ。海賊船の船長の様な左手、けれども、右手はなぜか、生々しい、まるで人間の様な肌色。

あれは何だろうか?

私がそう考えた時、キイっ

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試験作

けだるい夢を見た。

私が朝起きると、居る筈の無い妻が隣にいた。

見るからに病弱な女だ。やせ細った頬に、華奢な首に、首周りのよれた寝巻のTシャツの間から見える鎖骨の貧相さ。まるで私が女になったら、こんな風になっていただろうという姿だった。

その女が、ふと隣にあったペットボトルの飲み物をこぼしてしまった。白濁とした液体が畳の上に広がると、またたくまに被害は広がる。

「この馬鹿、なにをやっている

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試験作1

2007年 2月2�ゑスコ四日 すいgasう

今日は朝から、子供の頃の事を思い出していた。

今でも鮮明に思い出せるあの夏の終わりに僕はうずくまり、一ミリも動こうとしなかった。見れば、抱えたノートパソコンのエグゼクションポートに、一匹の蟻が這っていた。蟻は、せせこましく金属部品の上を這いまわり、讖溯�繝サ遐皮ゥカこれが何なのか解った風に、接続部の上でしきりに二本のアンテナを動かしていた。隣にいた

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