「それ、〇〇(職業)じゃなきゃできないの?」
中高生ぐらいだと " 職業 " を「将来」の目標にする人は、そこそこいます。弁護士や医師や看護師など資格が必要なお仕事は「学び」や「学校」との相性も良く、志望理由書に書く人は多いです。ただ、注意が必要。
職業はツール 職業はツール 職業はツール
大事なことなので3回書く。
職業は「手段」です。決して「目的」ではありません。なって終わりではなく、なってからが始まりです。その職業に就いて「それから」「どうする」が大事なのです。
職業を志望理由書に書くことはもちろん全く問題ありません。ただ職業を書いて満足するな、とお伝えしたいのです。
受験生「将来は医師になりたいんです」
れどぺん「ふむふむ医師になりたいんだ。どんな医師になりたいの?」
受験生「病気で苦しむ人の力になりたい。寄り添えるお医者さんになりたいんです」
れどぺん「”寄り添う”って具体的にどういうことをするの?」
受験生「患者さんの話をじっくり聞いて、何が苦しいかとかどうすれば解決するかとか考えます」
れどぺん「うーん…それ,医者の仕事じゃないよね。それは看護師さんや医療コーディネータの仕事だよ」
受験生「……」
これは毎回おなじみの会話でした。皆ここからスタートします。
中高生で、憧れの職業について詳しく知っている人は少ないでしょう。ドラマで描かれた世界や物語に憧れて志望する人もたくさんいます。でもドラマはドラマ。現実ではありません。素敵なドラマにどんなに心が動かされたとしても、「ドラマの世界に憧れて目指した」はきっかけとして良くても、そこで立ち止まってしまえば「私は現実のその仕事を知ろうとしていません」と言っているようなものです。そして実際、勉強にばかり集中して、立ち止まっている人が多い。
その職業は、社会の中でどのような役割を果たしているか
先ほどの会話からスタートしたら、すぐにその職業について調べてもらいます。関係する周辺のお仕事も同時に調べてもらいます。どこで、誰に対して、何をするお仕事なのか、徹底的に知ってもらうのです。
ここでは、看護師と弁護士を例にとってどんなことを調べるのか挙げてみます。
例1:看護師の場合
看護師の仕事とは具体的に何をしているのか
看護師の業務上における「限界」とは何か
看護師にも種類(専門資格)があるのか
病院以外に勤務先はあるのか
担当する患者さんはどのような人がいるのか
医師以外にも連携する専門職の人はいるのか
そもそも「看護」とはなんなのか
例2:弁護士の場合
弁護士の仕事とは具体的に何をしているのか
弁護士の顧客とは誰なのか
どのような案件が多いのか
日本における弁護士や法に関するトラブルなど社会問題はあるのか
弁護士のキャリア形成はどのような流れか
弁護士以外の法律に関係する職業はあるのか
それらは弁護士とはどのように異なるのか
弁護士の社会的意義とは何か
そもそも法律とは何か
特に、周辺のお仕事との比較は大事な観点です。よく「看護師は医療行為が制限される。だから医師になりたい」という理由を挙げてくる人がいますすが、看護師の仕事を知らないがゆえに出てくる大変不遜な理由です。また「すべての医療行為がしたいから医師になりたい」と言っているようなものです。これでは危ない人認定されてしまいますね。
たしかに医師と看護師という職責において医療行為の制限は事実です。
しかし「AがダメだからBが良い」というのは、「私にとってAがダメな理由」を述べているに過ぎず、「私にとってBを選ぶ理由」としては不十分です。
「医療行為がしたいだけの人」ではないはずです。
・・・余談・・・
いわゆる「〇〇士/師」のつく「士業」というお仕事は、相対的な年収はいいのですが、時間換算すると割は良くないです。社会的地位が欲しいっていうのも、「なんで?」って感じ。ちやほやされたい? 憧れ的な夢だけ見られても困るのですが、別に「キラキラ」してなくてもいいので「社会と自分」を考える発達段階に差し掛かっていますよね。
その仕事でしかできないことって、なに?
じゃあ「そのお仕事って結局なにをしているの?」「そのお仕事にしかできないことってなに?」というエッセンスが、とても大事になります。
さっきの会話の続きは、時によってすごく意地悪に「病気を治すのは医者じゃない。患者だよ。医者は " 診断 "と " 処方 " が仕事。それだけ! 君は " 診断 "と " 処方 " がしたいんだね?」と言います(もちろんそれだけではないのですが…)。その上で、それは自分のやりたいことなのか、と改めて考えてもらうのです。
小綺麗で耳障りの良い言葉に頼って中身のない夢を語るのではなく、可能なかぎり知識を増やしてその職業に就いた自分を妄想し、選択し(絞り込み)、具体化するのです。そうでなければ、他人にはなんにも伝わりません。
調べて考えた末、もしかしたら「それってその職業じゃなくてもできるかも…」となるかもしれません。職業のことを調べ尽くしたら「自分のやりたいこと(心惹かれること)って、この職業じゃなくて、近いこっちだった」となるかもしれません。
そうやってアタマを抱える時間は、苦しいですが貴重な時間です。(おそらく10代・20代前半にしかできないことです。働きはじめてしまえば、そんなことあまり大事になりません)
あくまで、職業は「ツール(手段)」なのです。
ツールを使ってどうするかです。苦しいですが、うーんと唸った先に、かけがえのないものが得られるのは間違いありません。そのためにも伴走してくれる良きメンターを見つけてください。
それでは、今日はこのへんで!
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