見出し画像

世界の人魚について調べてみた

映画『リトル・マーメイド』非常に好調だそうで、
日本国内でも20億円の興行収入を超えたそうですね。
色々と賛否両論ある映画ではありますが、
本作の人魚のように様々な逸話があります。
「歌声で船乗りを誘惑して海に引きずり込んでしまう」というお話で出てきますが、
人魚伝説はいろんな時代、世界各国に存在します。
これほどまでに様々存在するのはなぜでしょうか?
偶然、様々な世界で生み出された幻なのでしょうか、
それとも、伝搬してきた話なのでしょうか?
いろいろ気になったので、調べてまとめてみました。

1.ヨーロッパ

今作の原作に当たる、アンデルセン童話にも出てくる人魚姫。
こちらの人魚がみなさんも一番ご存知の人魚ではないでしょうか?
元々はセイレーンという、古代ギリシャ神話に登場する海の怪物が変わったものとされています。
航海中の船乗りを美しい歌声で誘惑し、船を遭難させたり難破させる、
そして、歌声に誘惑された船乗りたちは、
セイレーンに食い殺されてしまうという神話です。
内容は先程の人魚の話と同じですが、
こちらの見た目は下半身が魚ではなく、
下半身が鳥の姿とされています。
しかし、時代が移り変わるにつれて鳥→魚へ変化していったそうです。
最古の記録としては7世紀から8世紀にかけて成立した『怪物の書』にその記載がありますので、
その頃からだんだんと、鳥→魚へと変わっていったのでしょう。
確かに、魚は歌を歌わないですが、鳥はさえずり歌を歌うので、
その名残から、海というワードで魚へと変化していったのでしょうね。
また、古代は海岸を目印に航海をして、あまり海洋に出る事は無かった、
そのため、岩礁に停まるセイレーンたちを見たのでしょうが、
ルネサンス以降、羅針盤が発明されてから、
陸地を必要としない航海が可能となったため、
大海から惑わす人魚へと変わっていったのではないかという説もあります。

派生として、ライン川に住んで歌声で誘惑する「ローレライ」、
嵐が起こる予兆とされるアイルランドに伝わる人魚「メロウ」、
未来を予言すると言われている、北欧に伝わる「ハウフル」、
などが伝えられています。

2.日本

日本にも人魚の伝説があります。
日本では、古来より不吉な事を予言する生き物として知られており、
人魚が漂着すると、なにか良くない事が起きる前触れではないかと言われています。
特に、鎌倉時代に現在の東北地域にて、人魚が打ち上げられる事が度々あったと、
同時代の文献によく見られます。
基本的には、人魚が目撃される=戦や有力者の死去など、といった予言とされており、
『北条五代記』に記されています。
さらに鎌倉幕府の歴史書、『吾妻鏡』にも記載がありますが、
そちらは、人魚ではなく、大魚・怪魚の扱いとされています。
他にも、人魚=アザラシ・アシカなどの生き物と思われていた説などもあります。

また、有名な伝説として、八百比丘尼の伝説があります。
人魚の肉を食べた事で1000年の寿命を得た女性の話が、日本各地で残っています。
1500年ごろに、600年ごろから生存している、や、
800歳生きているなど、様々な説がありますが、
人魚の肉を食べて、1000歳の寿命を手に入れたが、見た目は10代後半だった、
というところは類似点があります。
日本では、不吉な事が起こる象徴、
また、食べると不老不死になるといった話があり、
欧州であった歌声で人を誘惑する美女、といったイメージはないみたいです。

3.中国

中国で人魚とは、秦・漢の時代にはサンショウウオの事を指しており、
現在よく見られるサンショウウオの見た目ですが、
子供の鳴き声そっくりの音を出すと言われていました。
名称もサンショウウオでなく、四足のナマズと呼ばれていたり、
この人魚を食べると痴呆症にならないとされていました。

また、普段我々が想像する人魚に近い人々は、蛟人と呼ばれており、
海に住んでいて、流す涙は真珠となり、
機織りが得意な民族だと言います。
また、蛟人は機織りが得意で、彼らが作った織物は、
水に入っても濡れる事は無かったのだと言います。

4.東南アジアの人魚

東南アジアの人魚は、記録に残るものとしては、
欧米諸国が植民地として東南アジアを支配していた頃から言及されます。
フィリピン近海や、インドネシアなどで人魚は見られ、
実際に捕獲されたという記録も残っています。
東南アジアで捕獲された女性の人魚を「へいしむれる」といい、
日本でも江戸時代に薬として入ってきています。
骨を粉末にして酒などに混ぜれば止血作用があると言われており、
長寿伝説がある日本だからというのもあるのでしょうか、
薬として、信じられてきました。

5.その他の地域の人魚

イプピアーラという男性のみの魚人で、漁師を水の中に引きずり込み、
口、鼻、指先、性器などを食べると言われています。
そのイプピアーラと西洋の文化が融合したのか、
イアーラという人魚が、ブラジルでは有名です。
また、ジャマイカにはリバーマンマと呼ばれ、
全ての魚はリバーマンマの子であり、長い黒髪を溶かしている姿が目撃されるが、
川へ引きずり込もうとしてくるので近づいてはならないと言い伝えられています。
コロンブスも現ドミニカ共和国で目撃しており、
「3匹のセイレーンが河川で海から這い上がっているのを目撃した」
と航海日誌に記しています。


人魚の正体とは???

よく言われる、人魚=ジュゴンの見間違いという説ですが、
完全にすべてそれというわけではありません。
日本でジュゴンが見られるのは沖縄までで、
到底日本の本土では見かける事のできない生き物だからです。
しかし日本の伝説では死体が上がる事であり、
生きた姿で目撃される事は少ないので、
もしかしたら沖縄から海流に乗って(もしくは迷子になって)
流れてきた説もありえなくはないのではないか?とも思います。
(専門家ではないので、その説も信憑性がかなり低そうですが)
また、似た生き物として、現代では絶滅してしまったステラーカイギュウは
ベーリング海(北海道の北、ロシアとアラスカの間)に生息していたので、
日本でも見ることができた可能性はあるとの事です。
しかし、日本で見られたのはおそらくイルカやアザラシなどだったのだろうという見解が一般的で、
更に文献の特徴から、リュウグウノツカイではないかとの考察もあります。
イルカや、クジラの仲間なら、世界中どこの海でも生息していますし、
それらを見間違えた説が多いにあるのではと、私も思います。
実際に映画『リトル・マーメイド』ではイルカと間違えられてましたしね。

こんな感じで世界各国の人魚伝説をまとめてみました。
大型の海洋生物を見間違えたというのが各国で起きたという可能性もありますが、
地域柄によっても違いますが、けっこう似た要素があるので、
どこかでお話が伝わって世界中に広がったのかもしれませんね!
概ね、
・美女で船乗りを誘惑する
・食べると長生きする(病気が治る)
・人前に姿を現す時は吉凶を予言する
といったところがけっこう似通っていると思います。
大航海時代以降、ヨーロッパが持ち込んだかと思いきや、
けっこう原住民の民話などにも残っているので、
どこの世界の人々も思いつく話なのか、
(それとも本当に実在したけど絶滅してしまったのか・・・)

中国の蛟人はそのどの特徴にも当てはまりませんが、
日本の童話にもある、浦島太郎の世界のような、
海底で優雅な生活を送っているかのような雰囲気を感じますね!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?