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運命か、嗅覚か、偶然か。

240201 (Thu.)

解放。やらなければならないことが、今何もない。こんな状況は何年ぶりだろうか。嬉しい嬉しいと、口に出してみる。想像していたほどは嬉しくないなと独りごつ。
ラボでダラダラとメールを更新しコアタイムを消化する。ダメ大学院生の鑑である。そのまま大学院生らしくUbuntuを立ち上げる。二ヶ月ぶりとかに電源を入れたからか、wifiが繋がらない。セーフブートをかけるも、解消する気配がない。多分、色んなパッケージをアップロードしたりすればいいんだろうけど、今日やるべきことでもないから後輩にエラー報告だけして私はバドミントンへと意気揚々に向かう。運動したという実感と、明日の筋肉痛への喜びを獲得した。そのままイオンで鶏肉と白菜としめじを買って、フライパンに放り込む。作っているうちにおなかがいっぱいになってきたから、焼酎をお湯で割る。また明日。

240202 (Fri.)

『サージウスの死神』を読んだ。佐藤究のデビュー作。精神が退廃すると日常が鮮やかになるのが印象的だった。特に赤色が煌めく。喫煙所を出て、外を見ると薄い緑色の木々が目に付いた。私の色彩はまだ生きているみたいだ。最近、血の色を見ることが減ったなと思う。社会が、優しくなってるのか。気が付かない間にwatch meを導入されているのかも。さて、次は何を読もうか。

240203 (Sat.)

大阪へ。大学からの友人2人と時たまに開催している同窓会。今回は、結婚式で会ったのを除けばちょうど一年部り。道頓堀の川沿いでたこ焼きを食べ、串カツだるまで酒を飲んだ。串といえば二度付禁止の印象だったけれど、壺での提供ではなくて、市販ソースみたいに串に対してかける形式が取られていた。ニュースで色々事件があったからだろうか。アイスの串がとてもよかった。アイスに衣をつけてあげる遊び、小さい頃に家でよくやっていたことを思い出した。
以前、好きな作家が、揚げ物とは茹でる行為の媒体を変えただけだと主張していた。
「茹でる」という行為は、つまり溶媒である水の沸点が100度であり、その温度でもって材料に変質を加えるということ。溶媒が水である必然性は汎用性以外に存在しない。本来、煮物と同じ立ち位置に来るはずだったものなのに、結構違う位置に立って見下ろしているのは不思議だ。たとえば40度くらいが沸点になる溶媒を使った料理とか、油以上に沸点が圧倒的に高いものを使った料理があったとして、それが何ら特権的な立ち位置を占有する気がしない。

240204 (Sun.)

後輩が本を貰ってくれるというから、家の本棚に積まれた書籍をひたすら段ボールに詰める。と言っても、今家に残っているのはほとんどが森博嗣。よく集めたな、といっぱいになっていく段ボールを眺めながらため息をつく。私が森博嗣を読み始めた一番最初は『封印再度』だった。その発端は『聖女の救済(東野圭吾)』のタイトル回収があまりに綺麗で類似のお洒落タイトル本を募集したところ、大好きな先輩が勧めてくれたのが『封印再度』だった。シリーズものの途中を教えてくるなと言いたいが、森博嗣自信がどれから読み始めてくれても構わないと言っているので、それに準じたんだろうと思う。
段ボール一箱と、少しはみ出たぶんを紙袋に詰めて準備が終わる。そして、少し考えてから『四季』シリーズだけ取り出した。なんだか、光っていたから。車で家まで来てくれた後輩と、本を渡すついでにモーニングに行く。Google Mapで目指したカフェはあいにく満席だったけれど、すぐ先にも似たようなカフェがありそちらに入る「こっちの方が明るいから」と窓際の席に通された。あんまり経験したことがない指標だったけれど、合理的ではある。

夕方、伏見のミリオン座で『コット、はじまりの夏』を観た。王道すぎんか?という気持ちはありつつ、こういう映画がまだ作られ続けること自体には意味があるなと思う。あんまり私には刺さらなかったけれど。
観終わってから、東山公園のON READINGに移動する。目的は、大学の先輩が出したZineを買うこと。初めて行った書店だったけれど、”カルチャー”っていう感じのところで少し居心地が悪かった。

店員さんが「こないだ来たお客さんが、夜眠れる本を探してるって言っててxxxを勧めたんだ〜」みたいな会話をしていた。
居心地の悪さが少し増した。肩が少し重い。書店にシステマチックであることを求めていたんだと気が付く。

2周ほどフラフラしていたけれど見つけられなくて、仕方がないから聞いて見たら在庫がはけちゃったらしい。それはそれで嬉しいことだよな、と自分に言い聞かせ、せっかく来たからと、何か本を買うことにする。本(物理)を後輩にあげたばかりだから、紙で買う意味があるものを購入せねばならない。Kindleで出ているものは論外。
そうなると画集かなあ…。
と、思いながら改めて物色していると、青い表紙の大判が飛び込んできた。なんで惹きつけられたのか全くわからないけれど、開いてみると知人の夫婦が出版したものだった。故郷の和歌山で小さな書房を営んでいる夫婦。パッと記憶が蘇る。彼ら夫婦に初めて会ったのは、大学四年生の時。地元の狩猟ツアーのスタッフで呼ばれて、晩御飯をご馳走になった。家には書籍が高く平積みされていて、ビールを片手にじっと見ていると二冊ほど貸してくれた。あれ、そういえば返してなかったな。本を借りパクしている免罪符になればと、購入を決意する。幸いにも電子書籍化していなかったことも購入を後押ししてくれた。
そのままパラパラめくっていると「柞刈湯葉」の文字が目に映り、目の玉が爬虫類みたいに大きくなる。どうやら短編小説の寄稿を依頼したとのこと。湯葉先生の小説は今出ているもの全部読んだと自負していたけれど、こんなところに抜けがあったなんて。これ、読める人数がとてもとても限られるんだよな。嬉しい。私が、私こそが出逢うべき本だった。


https://rakudasha.com/

240205 (Mon)

雨が降るなか、健康診断の追試に向かった。採血だけ。病院って、大きなシステムに組み込まれている気持ちになるけど、それを観測できないのが辛いところ。流されるままにレールに乗る。肝臓がどうも悪いらしい。あんまりお酒を飲まないんだけれどな、私。一応気を使おうかなという気分になる。まずはカップ麺生活をやめるところから。

240206 (Tue.)

引っ越しに向けて、賃貸・水道・電気・ガスの解約作業を進める。こういうのが本当に苦手だなとつくづく思う。何かを止めるために自分からその意思を伝えなければならないというプレッシャーか。ちょっと大上段に一般化している気がしなくもないけれどそういうこと。どこも、次の家の住所を聞かれるが、いまいち分かっていないので答えられない。多分メールを調べれば出てくるんだろうけれど、5秒で出てこない情報は持っていないも同然だ。ガスだけ、「この電話番号は現在使われておりません」というアナウンスが出た。そうこなくてはな。

夜、後輩2人と研究所のラウンジで『風立ちぬ』を観た。ロシア語版を間違えて買ったという。メニューページが全部ロシア語で本編再生や設定がどれなのか全然わからなかったが、Googleレンズを使うことで簡単に翻訳できた。すごいな、世界。
『風立ちぬ』
高校生の時に見たから、もう10年ほど前か。あの頃に感じた良さと今感じる良さは多分違う気がする。苦労して作った飛行機は一機も帰ってこなかったし、最愛の妻は結核に苦しむ。そういう時代の大きな流れの中、自分を見失わずに生き続けられるか。私には自信がないな。

240207 (Wed.)

ダラダラとデータの解析&まとめを進める。小さいタスクが山のように積み重なっている。ちりつも。何から片付けようか。ガスはまた今度解決することにして、お世話になった居酒屋に挨拶回りに向かおうか。

直近でやらねばならないこと

  • 引っ越し関連

    • 持っていかないものを捨てる (本棚とか。ハンガーラックとか。誰か貰ってくれ。。)

    • 転出届関連について調べる(多分マイナンバーでなんとかなる)

  • 会社関連

    • メールを全部読む

    • 色々返信する

  • ラボ関連

    • 学会準備をする

    • データを整理する

  • 人間関係

    • 後輩に酒を奢る

書いてみると、意外となんとかなりそう。やれる時にやろう。
18時に外へ出ると、空の青さのグラデーションがとても美しかった。天頂は紺、それから地平にかけて薄らびていた。思わず写真を撮ったが、街灯の明るさで背景の色彩が飛ぶ。せめて記憶には留めておこう。


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