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中日の外国人はなぜ当たるのか

0.はじめに

「中日と言えば外国人選手」というぐらい強い時も弱い時も強力な助っ人達がチームを支えてきました。
限られた予算内で日本で成功できる選手を連れて来られる中日の外国人スカウティング能力が羨ましいという他球団ファンも少なくないのではないでしょうか。
ブランコやロドリゲスといった「神助っ人」もはじめは年俸5000万円未満で来日したのですからその凄さが伝わると思います。
ということで今回のnoteは「中日の外国人はなぜ当たるのか」についてです。
どこからそんな選手を連れてきているのか、どんな選手を連れてきているのか、何を重視して連れてきているのかなどを過去の外国人選手から分析していきます。



1.どこから選手を連れてきているのか

1-1.ドミニカWLルート

近年の中日の外国人選手は皆さんご存じの通りドミニカンが半分以上を占めています。
何故そんなにドミニカンばかりなのかと言いますと、近年の中日は「ドミニカウインターリーグ」と太いパイプを築いており、ここを経由することで安価で良質な選手を獲得することが可能だからです。
このルートは元監督・ヘッドコーチの森繁和がマフィアに銃を突き付けられるなど命懸けで築き上げたルートで、現地でも中日ドラゴンズの名前は多くの人に知られています。
元中日の選手も今でも何人もドミニカWLでプレーしており、その選手達が新外国人候補に中日入りを勧め、退団後もチームに貢献…!なんてこともあったりします。
森繁和SDがチームを離れてた今オフも与田監督が現地まで出向いて選手を発掘しに行ってくれたので、今後も中日の外国人獲得ルートのメインになって来るでしょう。
「中日の外国人選手が好き」という方は是非ドミニカWLはチェックしてみて欲しいです。


1-2.キューバルート

2002年にオマール・リナレスを獲得して以降は暫く使われていなかったルートですが、そのリナレスが2016年に中日の編成スタッフに就任すると、再びキューバ人選手をキューバリーグから獲得するようになりました。
森繁和前監督、与田監督も自らキューバに出向き、2017年以降に4人の選手獲得に成功。
いずれも20代前半の若手有望株で育成選手として獲得し、中でもライデル・マルティネスはチームのリリーフエースに成長しました。
キューバ人選手はMLB挑戦の為に若いうちに亡命してしまい、中堅層が枯渇している現状なので、今後も亡命していない若手を獲得して戦力に育てるというのがメインになってくると思います。
キューバルートに関してはこちらのnoteに詳しく纏めたので是非ご覧いただけたらと思います。
https://note.com/redmiso/n/n8f500d602b33


1-3.北米ルート

このルートはMLBでも活躍していた選手を直輸入し、高年俸を払って大物を連れてこようというルートです。
外国人選手獲得について「ガチャ」という表現をするのは個人的にはあまり好きではないですが、ドミニカを「ノーマルガチャ」、キューバを「育成ガチャ」、北米を「レアガチャ」と表すと伝わりやすいかなと思います。
打者だとビシエドやゲレーロ、投手だとディロン・ジーをこのルートから獲得しており、打者二人はそれぞれ首位打者と本塁打王を獲得しました。
森繁和が一旦チームを離れた高木政権の時に1億未満でブラッドリーやクラークを獲得しましたが、近年はそういった補強は見られなくなっています。
ただクラークを推薦したパウエルコーチが今季から入閣したので、もしかすると今オフにアメリカ人選手のが見られるかもしれません。


1-4.その他(ベネズエラ、韓国等)

これらのルートは今は使われていませんが、与田監督が韓国からの選手獲得を目指しているとの報道が出たので、韓国ルートは近いうちに使われるかもしれません。
かつての韓国球界のスターであるリー・ジョンボムが研修コーチとして中日に戻ってきたのも追い風となってきそうです。
もしかするとNPBも視野に入れているという韓国球界を代表する左腕ヤン・ヒョンジョンの獲得にも動くかもしれませんね。
ベネズエラに関してはアラウホとロンドンで失敗して以降話も聞かなくなったので今後も多分ないと思います。
またドミニカWLとは別にドミニカ人選手を育成で獲得することもしばしばありますが、彼らもここではその他に分類しておきます。



2.どんな選手を連れてきているのか

ここまで「どこから選手を連れてきているのか」について書いてきましたが、ここからは「どんな選手を連れてきているのか」についてです。
2010年代に中日が獲得した助っ人の初年度の年俸、来日前年の成績、プレーヤータイプや年齢、先程紹介した「○○ルート」等からスカウティングの傾向を探っていきます。

2-1.投手

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これを見てまず目が行くのはやはりドミニカWL率の高さですね。
27人中15人がドミニカWLでの投球を評価されて中日に加入した投手で、この15人全員が年俸5000万円以下で来日している辺り「ドミニカWLルート」は安価で良い選手を発掘しようというルートで間違いないでしょう。
ドミニカWLではMLB経験豊富な年俸1億円ぐらいの来日候補も何人かプレーしていますが、恐らくこのルートを使う時は年俸5000万円以内という決まりがありそうなので、大物は「北米ルートから」と考えた方が良さそうです。
またドミニカWLにはアメリカ人選手も数多く在籍していますが、中日がそこから獲得する選手はあくまでもカリブ圏の選手のみ。
ですので、ドミニカWLルートからの新外国人候補を予想する時は安価で取れそうなカリブ圏の選手に限定して探すと当たりやすいかもしれません。

また近年は左投手の多さが他球団と比べて際立ちます。
森繁和がチームに戻った2014年以降の支配下投手に限定すると全体の66.7%が左投手となっています。
これについては「チームに左腕が不足している+外国人左腕育成ノウハウがある」という二つのチームの特徴が絡んでいると思われます。
それぞれエース、セットアッパーとして活躍したガルシアとロドリゲスは日本でチェンジアップを習得・改良して進化を遂げたので、ストレートに光るものがある新外国人ゴンサレスを獲得した狙いもそこにあるかもしれません。

成績を見た時に気になるのが奪三振率です。
高木政権時代は比較的纏まった打たせて取るタイプの投手の獲得が多かったのですが、2014年以降で来日前年度の奪三振率が7を下回っていたのはペレス、ロンドン、R.マルティネスの三人のみ。
外国人の予算が限られていながらも「安価で獲得できる高奪三振率の素材獲得→スパイスを加え日本に適応させる」という中日独自の方針で一定の成功を収めていることがわかります。
とは言え日本での成功者の殆どは3A(PCL/IL)である程度投げてドミニカWLでも好成績を残している為、やはり来日前から投手として一定の完成度を持ち合わせていることが日本で活躍する為の条件でしょうね。

2-2.野手

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野手は投手以上にドミニカWL率が高く15人中11人がドミニカから中日に加入しました。
また11人のうちモヤを除く10人がドミニカ共和国出身でモヤもドミニカ共和国育ち、年俸は全員5000万円未満と投手と同じ傾向が見られます。
投手にも言えることですが、昔のドミニカルートは年俸約2000万〜3000万円の中でバラつきが見られました。
しかし2018年以降のドミニカWL産の選手は途中加入のJ.ロドリゲスと育成のシエラを除き全員年俸ちょうど年俸5000万円。
年俸予想がしやすそうなのは面白いですが、少し額が増えたとは言えやはり予算に限度がありそうです。

限られた予算内で補強しなければならないので、MLBから即獲得であったり、3A(PCL/IL)で好成績を残した選手を獲得するのは厳しく、メキシカンリーグや2Aで活躍してドミニカWLに参加している選手を中心に獲得する傾向があります。
もう一度ビシエドやゲレーロのような大物を北米ルートから連れて来るのも面白いと思いますが、やはり今オフも年俸5000万円のドミニカ人選手の可能性が一番高いでしょう。
とは言えそこまで年俸の高くないドミニカンをしっかりと活躍させるのが中日の凄さなので、どちらにしても外国人補強は非常に楽しみです。

低年俸でも外国人選手を当てる為にスカウトが何を重視しているのか成績面から見ると、三振率に目が行きます。
2014年以降の選手で三振率が20%を超えているのはモヤのみで、日本のボールにも対応できるコンタクト能力を重視していることがわかります。
彼らはドミニカWLでも一定のコンタクト能力を発揮しているので日本でも大崩れはしにくく、2014年以降の外国人野手で全く結果を出せなかったのはゴメスぐらいです。
ただ、ナゴヤドームに合ったコンタクトヒッターを補強するのは合理的ではありますが、今のチームの最大の課題の一つは長打力不足。
テラスがつくという話も出ていますし、三振率にはある程度目を瞑り、もう少し長打力を重視してスカウティングしても面白いのではないかと思います。


3.中日の外国人が活躍する理由

ここまでの分析から中日の外国人が活躍する理由をいくつか考えていきます。
まず一つ目は「外国人獲得方針の軸がぶれない」です。
これは当たり前のことですが、過去にあまりサンプルのないようなルートから選手を連れてきたり、今まで取ってこなかったタイプの選手を補強するのは非常にリスキーです。
その中で中日は独自のドミニカWLルートを使い、投手なら「奪三振能力に長けた左腕」、野手なら「大崩れしにくいコンタクトヒッター」と得意分野を持っています。
ただ先程も言ったように今後は少しずつ長距離砲も獲得し、大砲を日本に適応させるノウハウも培えると今まで以上に良い補強ができるでしょう。

二つ目は「効果的に資金を使えている」です。
2010年代の中日の外国人野手で打撃タイトルを獲得したのはビシエドとゲレーロの二人。
お金のかからないドミニカWLからの補強が多い中日ですが、絶対的な打者は高年俸を払って獲得しています。
ただこれらの打者の補強に踏み切れているのも、ドミニカからそこそこの活躍が期待できる年俸5000万程度の選手、キューバから年俸1000万程度の好素材をバランスよく獲得して全体の年俸を抑えているおかげなので、近年の中日はこの辺りのやりくりが上手だなという印象を受けます。
しかし全員活躍しすぎて全体の年俸が高騰してしまい、年俸を払えず翌年退団というのが最近は増えてしまっています。
それでも近年の中日は退団した選手の穴を安価ですぐに埋めており、年俸を嵩せない継続的な外国人枠のフル活用に成功しています。

三つ目は「外国人がコミュニケーションに困らない」です。
やはり外国人選手が活躍するにはプレーしやすい環境を作ることが大切です。
今の中日のようにドミニカやキューバから選手を獲得し、全員スペイン語圏で固められているのは理想的と言えるでしょう。
しかも中日の場合はただスペイン語圏で固めるのではなく、「元々ドミニカやキューバでチームメイトだった選手」や「元中日の選手に勧められて来日した選手」を多く獲得しているので、本当にカリビアンがプレーしやすい環境を作ることができています。
今季からレンジャースに移籍したジョエリー・ロドリゲスも来日前に元中日マキシモ・ネルソンの助言を受けて入団しましたし、現在中日で活躍するアルモンテは来日前にルナ、ナニータとドミニカでクリーンナップを組んでいました。
新外国人のシエラに関してはホワイトソックスでビシエド、ナショナルズでロメロとチームメイトで、WBCではナニータと共に戦い、ドミニカのチームではネルソンやロドリゲスらと一緒にプレーしていました。

勿論スカウトの眼力が優れていることが前提ですが、これらの三つが中日の外国人選手の成功に繋がっているのは間違いないと思います。
特に最後の「○○と△△が□□でチームメイト」というのはファンから見てもとても面白いので今後もチェックしていきたいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
少しでも中日の外国人補強の凄さが伝わったなら嬉しいです。
今後も新外国人選手補強でドキドキやワクワクを味わいましょう!

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