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「続・アメリカの教育は厳しい」

 「アメリカの教育は厳しい」の巻でも書いたが、アメリカの学校では、校内にスクール・ポリス、キャンパス・ポリスがいる。これは決して、学校での乱射事件が多いからではない。アメリカではそういうことが日常茶飯事だ、と思っている日本人もいるかも知れないが、決してそうではない。そうでないからこそ、ニュースで大きく報道されるのだ。

 写真(いずれも2007年12月1日撮影)はカリフォルニア州立大学デイヴィス校(CSUD)のパトカーとキャンパス・ポリスの建物だ。

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 ちなみに、カリフォルニア大学(UC)と州立大学(USC)は異なる組織だ。前者は博士課程までありレベルが後者より上。以前書いたように最高峰はバークレー校。後者は修士課程までしかない。
 話を戻そう。
 このように、キャンパスの場合には自前のパトカーがある場合もある。ガードマンではない。組織としては市警の分署のような存在だが、本物のポリスがいるのだ。
 教育者のひとりとして、スクール・ポリスは日本にも必要だと思う。それは、事件が起こるからということではなく、教師が指導に煩わされて、肝心の教材研究や授業研究に身が入らなくなることを防げるからだ。まぁ、煩わされなくても、してない連中も多いのだが、少なくともそれを言い訳に、サボれなくなるだろう。
 アメリカでは生徒指導は基本的に教師の役割ではない。教師は教えるのが仕事なのだ。ところが、経験上言えることだが、日本の公立小中校の先生の仕事の30%は事務仕事で、そして30%は生徒指導である。のこりのせいぜい40%が教えることだ。残業手当もつかないのに、家に仕事を持ち帰って授業準備をすることは普通だ。そして、土日の部活引率があっても、手当は雀の涙だ。それなのに、夏休みを生徒と一緒に休むことさえ許されない。教師の10%程度が心の病を抱えているとまで言われているのは、アタリマエのことかも知れない。
 予想外かも知れないがアメリカは、生徒指導には厳しい。これをZero-toleranceということはすでに書いた。
 日本では逆に、しっかりとした原則がなさすぎる。親がごねると、すぐに学校側が折れてしまう。いや、学校というよりも、教育委員会が学校に折れさせるのだ。Zero-toleranceを採用せよとは言わないが、駄目なものは駄目だという姿勢も、たまには必要じゃないか。
 昔は、よく先生がしつけのために生徒を殴った(白状するが、筆者も渡米前に高校で教えていたときは、何回か殴ったことがある)。それでも親は怒らなかったし、かえって「先生にご迷惑をかけました」と、子供と一緒に謝りにさえいったものだ。給食代の未納などもっての外。親が食い逃げを教えているのだ。子供が先生の言うことなど聞くわけがない。2008年に報道された福岡県田川郡内の馬鹿中学生など、逮捕されても容疑を否定しているらしい (毎日の記事を追記) 。涙を流して反省するまでシャバに出すな、こんな糞ガキを! と思うのだ。どうせ今もロクなおとなになっていないだろう。バカは〓ななきゃ治らないものだ。
 親の横暴、ガキの増長もそうだが、現場の雰囲気もずいぶん変わったようだ。授業中に缶コーヒーをすすったり、自分の受け持ちの1時間しか勤務しない日があるというような、組合馬鹿までいた日本の学校現場にいろいろとメスが入り、それが是正されるのは結構なのだが、そのせいでそれまでも真面目に勤めていた人まで、緊張した空気を味わわされるようになったという。元同僚に世知辛い話を聞くと、いい時期に退職したのかなぁと、負け惜しみではなく素直に思っていた筆者だが、結局、ややこしくなっている教育現場に戻ってきた(校種は違うが)。少なくとも自分は、サラリーマン教員ではない、ということは誇りに思いたい。
 文中で紹介した『毎日新聞』の記事は
下記の通り
[傍若無人] 生徒8人がつば、放尿、喫煙… 福岡の中学校
2008年03月13日11時22分
 福岡県田川郡内の公立中学校で、一部生徒による“授業妨害”が続き、校長と教頭が心労で体調を崩し休職や自宅療養する事態となった。管理職不在を避けるため、校長は今月1日に後任が着任した。生徒たちは2月末まで約1年間、校内の一室に“隔離”されていたが、現在は指導が事実上及ばない状態にあり、教育委員会は「混乱のおそれがある」として卒業式の14日、県警に警備の要請を検討している。 
 教委によると、これらの生徒は2、3年生の計8人。廊下の窓や校長室のロッカーを壊すなどの器物損壊や教師への威嚇行為を繰り返した。また、校内を徘徊(はいかい)しては訪れた保護者につばを吐きかけたり、2階渡り廊下から放尿したこともあったという。
 学校側は生徒たちを美術準備室に個別断続的に“隔離”したが、生徒はテレビゲームや電熱器、ラジカセなどを自宅から持ち込み、喫煙や飲食するなど事実上のたまり場となったため、2月末に準備室は閉鎖された。現在も生徒たちは登校しているという。
 この間、教頭は昨年末に約1カ月間休養し、2月下旬から現在まで自宅療養中。校長も2月上旬から病欠し、今月1日から休職した。ともに心労で体調を崩したという。
 所管する自治体の教育長は生徒たちの行動について「原因は分からない」と話す。教育長によると、学校側は生徒らの親に話し合いを求め、生徒が一度は学校や親の注意を聞いても、仲間で群れると再び荒れ出したりするといい、結果的には改善できなかったいう。
 校長の病欠を受けて、教委は事故防止のため職員6人を連日学校に派遣。一部保護者も週1回、校内のたばこの吸い殻などを拾う活動を始めた。しかし、実態に憤る保護者は少なくなく、2月末の緊急保護者会では「生徒らを出席停止にしてほしい」との要望も出た。また、4月に入学する新1年生数人は、親類宅などから通う形で隣接自治体の中学校への進学を決めているという。
 1年生の保護者という40代の主婦は「校内は吸い殻が散乱しているし、荒れているのは事実。子供が巻き込まれないか心配でたまらない」と話した。
 教育長は「信頼される公立学校という責務を全うできず、深く反省している。正常化に向けて地域の協力もあおぎ、生徒の生活指導を徹底して、全力で立て直したい」と話している。【林田雅浩】

[校内暴力] 福岡・田川の中学生2人を逮捕
2008年03月14日21時33分
 福岡県田川郡内の中学校で男子生徒8人が授業妨害を繰り返し、校長と教頭が休職・自宅療養となってる問題があり、県警田川署は14日、グループの3年生(15)と2年生(14)を暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕した。2年生は校長室の湯飲みを割り、3年生は校長用ロッカーをけって損壊した疑い。2年生は容疑を認めているが、3年生は「(扉が)開いていたロッカーを足で閉めただけ」と否認しているという。
 調べでは、2人は今月6日午後0時20分ごろ、職員室に「(自分たちがいた)美術準備室の荷物をどこへやったか」と言いながら入った。男性教諭が保護者へ連絡しようと校長室に移ると2人も後を追い、2年生は持っていた長さ約50センチの鉄パイプを振り回した。2人は「部屋を片付けたのは誰か」と言い、湯飲み2個を床に投げてロッカー1台(被害計2万1400円相当)を正面からけって壊した疑い。
 校長室には当時「グループが中庭で大声を出してバレーボールで野球をしている」との連絡を受け、学校を訪れた所管自治体の教委職員と校長の計4人がいたが、室外に避難した。またこの日、保健室の窓ガラス1枚が割られる事件もあり、午後1時15分ごろ駆けつけた田川署員が、校長室の被害も確認した。学校側は同日被害届を出した。

拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「スクール・ポリスのすすめ」(2008年04月01日 00:00付)に加筆修正した。

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