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FINAL FANTASY XIIIシリーズについて(XIII-2編)

前回記事:XIII編 https://note.com/reddot/n/n4fa6e0895e04

『FINAL FANTASY XIII-2』は前作『XIII』から2年後の2011年12月にPlaystation3/Xbox360用ソフトとしてリリースされた。

主人公は前作の最後に救われたライトニングの妹『セラ』と、破滅的な未来からやってきたという青年『ノエル』
前作のエンディングが存在しなかったというところからはじまるこの『XIII-2』は、単体でみるならばかなりの問題作だ。
それこそが、このゲームがシリーズの中にある意義である。

物語のはじまり、セラの生きる歴史では前作のエンディングで彼女と共にいたライトニングが存在せず、彼女の自己犠牲により世界は救われたという歴史に変化している。
そのライトニングは騎士のような姿で軍勢を率い、異空間で謎の男カイアスと対峙し壮大な戦いを繰り広げている。
戦いの途上、因縁のあるカイアスを追って時を遡ってきたノエルをライトニングが発見する。彼女は何かを確信し、ノエルをセラの生きる時代へ遣わす。「自分はもうセラを守れないから」という言葉を残して。

時空を超え現れたノエルから姉の話を聞いたセラは、自分たちの生きる歴史は歪められているのではないか、今とは違う歴史で自分と姉は一緒にいられたのではないかという思いを抱き、ライトニングと再会するためノエルとともに様々な時代に旅立つ。

オープニングシーンの激しい戦いにプレイヤーはまず面食らう。
SFの色が濃かった前作から様変わりしたファンタジックな舞台や造形。
シーン中プレイヤーに簡単なボタン操作をさせるQTEアクション、そして唐突に現れたノエルを見てひとり納得し、彼をセラのもとへと送り出すライトニング。変わってしまった歴史。ムービーやデモでは言葉による説明を省略し、ゲーム内に用意された文章をプレイヤーがみることで理解を深めるというのは前作とも共通しているが、続き物のゲームながらこれほどまでに何が起こっているのかわからないというものを自分はあまり知らない。

続編ゆえに前作を知らないとわからないというわけでなく、前作をプレイ済みでもこのシーンは疑問や謎が残るようになっている。
そうした意味では前作未プレイでも問題ないと言えるが、この後ある程度プレイヤーが選択をしながら進める本作は、ひたすら一直線なシナリオだった前作に比べると、プレイヤーを惑わせるようなそうした見せ方が物語の推進力を削いでいる部分もある。

軍人から女神の騎士となったライトニング。
そして混沌の心臓を持つ新キャラクター・カイアス。
彼らのスケールの大きすぎる戦いが開幕から描写される。

直接的な続編ながら前作の終幕を無理やり変えるというやり方は繋ぎ方としてはとても歪だ。
人によっては前作のエンディングが台無しされた、と感じるかもしれない。
ただ、『XIII-2』に変化した物語は前作のエンディング後にそうなったのではなくその途中で変わったというものになっている。
こうした変則的な繋ぎ方は『XIII-2』の物語じたいは『XIII』がなければ生まれなかったが、『XIII』のエンディングは『XIII-2』に続かない物語として結したことの表れだ。

終わったはずのシリーズが延命され、矛盾が生じる。
継ぎ足され、矛盾し、変わってしまった物語それ自体を『XIII-2』は自身の立ち位置と重ねたメタフィクションにし、タイムパラドックスが起きたシナリオとした。

それはシステムの面でも表されている。『ヒストリアクロス』と名付けられた時代ごとにエリア分けされたマップ選択画面だ。
同じ場所であっても時代の違うエリアが用意されており、物語が進むにつれアクセスできるエリアや時代が増えていくが、時や場所を越えた先でイベントが発生する。
タイムトラベルを題材としたゲームでは時間軸を跨いだイベントやクエストはよくみられ、『XIII-2』もそれに漏れずヒストリアクロスからほかの時代を行き来することでイベントを進行させる。これは単にマップを移動するだけでなく、あとから物語を振り返れるチャプターセレクトでもあり、周回プレイといったやり込み、本筋と別に用意されたエンディング『パラドクスエンディング』をみるためのアクセス手段でもある。

『ヒストリアクロス』
一度訪れたエリアならばふたたびアクセスできる。
前作のシナリオと一体化しほぼ一本道だったマップとは対照的だ。

こうしたシステムをはじめとして、『XIII-2』は難易度、プレイヤーの選択、ムービー中のQTE、マルチエンディング、NPCから受注するクエストなど前作から見直された部分があらゆる面で大きく作用し、操作方法こそさほど変わらないがそのプレイ感は大幅に異なっている。
開発者インタビューでも実際に「FFXIIIはストーリードリブン、FFXIII-2はプレイヤードリブン」という趣旨の発言がされている。
善し悪しはともかく、前作がひとつのストーリーラインを追う映画的な体験だとすれば、『XIII-2』は寄り道やクエストといったよりゲーム的な体験の側にシフトしている。

いわゆるQTEである『シネマティックアクション』
ムービーデモだがダメージ表示を出すという演出で
これもある意味ゲーム的な側へ寄せたものといえる。
こうしたダメージ表示はRPGの戦闘では当たり前に存在しているものの、
ムービーのなかで表示される光景はいささか滑稽だ。

『タイムトラベル』がテーマのこのゲームは前作ではほとんどみられなかった時間や時計のモチーフがあらわれる。
そしてそれらは『XIII-2』以後の『XIII』シリーズと、より広い作品群『ファブラノヴァクリスタリス』シリーズにも同様で、これらの指針をまず本作が示してみせた。

時計の針が一周した13番目のFF『XIII』
12の時が過ぎ0に戻る『零式』
このシリーズを締めくくる『XV』は止めようのない物語上の時間に対してどこまでも過去を詰め込むことができる構成のうえ、後半は主人公を置き去りに世界は未来へと進む。

シリーズ作品はどこかに周年を置く。
FFシリーズはそれを時計に見立て、13番目でひと周りのものとした。
『時間を超える』というテーマは初代『ファイナルファンタジー』の物語の根幹にかかわる重要な要素だ。
『XIII-2』からの『ファブラノヴァ』シリーズはそれを明らかに意識し、それぞれが含みを持っている。
それまでのFFにそうした部分がひとつもなかったわけではないが、ここまで大きく取り入れられたものはなかった。

とはいえ『XIII-2』は他のシリーズよりもリリースが先だっただけで、それらのすべてを変えたわけではない。
大きく変えたのは『XIII』シリーズのほうで、『零式』と『XV』はもともと原点である初代FFに対しての意識や、それに連なる時間のモチーフは構想されていたものだろう。

むしろそれらに影響され、変化したのは『XIII-2』のほうだ。
システムや遊びやすさのために前作から変更した部分とともに様変わりした物語やビジュアルを見るとわかりづらいが、前述したゲーム的な体験や、以前はみられなかったファンタジーらしい演出に『混沌(カオス)』というフレーズは、『XIII』の舞台にそれ以前の『ファイナルファンタジー』が流入してきたことを意味する。

前作の発売前、ゲーム誌において『光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士』と紹介されたライトニング。前作の彼女にはまるでそぐわない一文が、本作ではおあつらえ向きのものとなる。

装いを新たにした登場人物たちの姿はあたかもコスプレしているかのようにも思える。
前作から役割を変え、大仰な台詞を発しはじめた彼らはファイナルファンタジーシリーズを含め、日本製ファンタジーRPGに抱かれがちなパブリックイメージをまとい物語を演じる。

『XIII編』の記事にも書いたように、物語の役割を演じることやゲーム上のパラメータで表現される役割(FFでいうならばジョブ)が割り当てられていることに対して、FFシリーズは何らかのこだわりを持っている。
『XIII-2』と似た立ち位置にある、『FFX』の続編『FFX-2』では前作のヒロイン・ユウナが、巫女のような姿で魔法を使う召喚士とよばれるジョブから、スポーティーなタンクトップ姿でガンアクションをするスフィアハンターとなり、その物語のカラーも大幅に変わった。

物語にあわせて人物造形が変化するならばキャラクターたちに一貫した人間らしさは破綻する。加えてゲームではプレイフィールを調節するためにキャラクターの能力も変わる。それを承知でゲームと物語で一体化させることが『X-2』や『XIII-2』でとられた試みだが、その結果生みだされた物語の歪さは私たちプレイヤーには受け入れがたく感じる。

このゲームの登場人物たちにとってもそれは同様だ。


歴史を変えようとしたセラたちの行いは、自分たちが介入したそのすべてがひとつの結末につながることを証明してしまう。
変えようとした行為により変わってしまった物語が変わらないことが演繹される。
このゲームに用意されたどのエンディングを迎えたとしても、それらはひとつに収斂し、必ず悲劇に導かれることが約束されている。

プレイヤーが終幕を見つめるなかで、個人としてこの結末と物語を絶対に受け入れられない者がいる。

それがライトニングだ。


『FINAL FANTASY XIIIについて(LIGHTNING RETURNS編)』


・FINAL FANTASYシリーズポータルサイトFFXIII-2ページ
https://www.jp.square-enix.com/game/detail/ff13-2/

・FINAL FANTASY XIII-2 (STEAM版)
https://store.steampowered.com/app/292140/XIII2/

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