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請負契約と追加変更工事代金の請求

 請負契約でよく問題になるのが、契約締結したときとは、工事内容が変わっているなどして、追加工事代金が請求される場合があります。この場合に事業者側で気を付けることはどこか、考えてみたいと思います。なお、事業者向けの記事です。

1 なぜ相談が多いのか?

 請負契約において、現場で施主から追加変更を要請されたり、施工した後になって、やっぱり気に入らないからやり直してくれ、と言われて、特に契約書などを取り交わさないまま、工事を実施し、最終精算のときになって、改めて追加でかかった費用を請求したところ、施主側から「お金がかかるなんて聞いていない」と言われ、代金を支払ってくれないという場面は、相談を受けている中で多数あります。中には、工事中は「あとで払うから」と口頭では支払を約束していたものの、いざ支払の時になって「そんなことは言っていない」と前言を撤回して支払をしてこない施主もいます。こうしたときに、実際に予定していなかった工事を実施したという理由だけで、追加工事代金はどこまで請求できるものなのかを考えてみたいと思います。
 細かい検討をする前に、まずは、どうして相談が多いのかを考えてみましょう。施工者側の視点からすれば、「もともとの工事に含まれていないのだから、余計な工事をやった以上は当然請求できるはずだ」という考えを持っている方も多数いるでしょう。ただ、実際には、本当に「もともとの工事に含まれていない」のか、という点がそもそも問題になります。また、追加であると認められたとして、費用について事前に合意していない場合に、後出しの請求書がなぜ当然に請求できるのかという問題もあります。訴訟の場においては、そもそも「追加」といえるような内容なのか、追加であるとして「代金額」をどう考えるのか、という点が問題になり、この点を請求者である受注者側が立証しなければならない、というところに請求の難しさがあります。
 なお、余談ですが、以前、訴訟において裁判官が「施主」を「せぬし」と読んでいました。「せしゅと読むんですよ」とわざわざ訂正するのも嫌らしい感じがするので、特に何も言いませんでしたが、その後もずっと「せぬしが・・・」と発言するたびに非常に気になったことがあります。

2 訴訟物は何か

 任意交渉で請負代金が支払われない場合には、法的手続に移行することになります。訴訟提起をする場合には、どのような請求権を立てるのか、という点で訴訟物を検討する必要があります。このあたり、同種の請求に慣れていない先生は、きちんと整理しないまま、ざっくりとした主張を展開しているように見えます。
 私が実際に追加工事代金の請求をする場合には、概ね、①請負契約に基づく請負代金請求権、②商法512条に基づく報酬請求権、③不当利得返還請求権を訴訟物として設定することが多いです。
 以下、順に説明していきます。

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