20210920学習ノート『福祉国家亡国論』健康保険、無料診療、失業保険
20210920『福祉国家亡国論』
健康保険と無料診療と失業保険の話。
診療の必要は客観的に確かめ得る、という考えがあるが、診療が必要か必要でないかの客観的な標準などあるわけがない。
健康と生命の安全が、他のことよりも最優先であるということはなく、バランスによって決めるべきである。
そして、医療が進歩すれば労働能力が回復して国民経済的に見ても十分な費用をペイするものだという信念がある。
が、そのような考えは、物事の表面だけしか見ていない空論である。
そして、診察費が無料となれば、診療に際限がなくなる。
医療のありがたみを忘れる。
失業保険については、強制的な保険によって所得の再分配をすることが正義の原則によって正当化できるのか。
失業した人の正常な収入を基礎としてミニマム以上の援助を、どのようにするのか。
失業は、特定の職種の賃金が高すぎることによって起こることもあるが、それは国家が面倒を見なくてはならないのか。労働組合に責任はないのか。
また、自由主義経済体制の下では好況と不況があり、不況時には失業率が増加することは事実であるが、福祉国家であっても共産主義体制であっても失業がなくなるものではない。
➡︎景気の循環も失業現象も「高度な分業」から起こっている。
⚫︎政府の強制力の制限について
自由主義者は、政府に対して一切の経済活動から手を引けと言っているのではない。
自由主義者は、法と秩序の維持が政府の本質的役割であることを否定していない。
自由主義者は、政府には広汎な活動の分野があることを認めている。
しかし、政府には強制力が与えられている。
自由主義者は、政府に与えられた強制力には厳重な制限がなくてはならないと考える。
政府の強制力は、法の執行に制限して行使されるべき。
もしも強制力の行使を法の執行に制限しない場合、権力者の思想がどうであれ、個人の自由は保障されなくなるから。
必要なのは「自由のための法の支配」なのだ。
⚫︎なぜ福祉国家では法の支配も市場メカニズムも崩れるのか
民主社会主義者は、市場メカニズムを有効に維持するためには何が必要なのかを理解していない。
理解していないまま、市場メカニズムのもとで所得の再分配ができるよう、経済をコントロールしようとする。
しかし理解していないので、有効に市場が働くように統制を敷く。
だんだんと中央集権的計画経済になっていく。
こうして、市場メカニズムは崩れる。
彼らは、自由や市場メカニズムを尊重すると言うが、尊重する気持ちの有無が問題なのではない。
自由や市場メカニズムの維持のために、
「政府は何をすべきか」
「何ができて何ができないか」
そして大事なのは、
「何をしてはいけないか」
を、認識することだ。
⚫︎一定の生活水準の保障について
全ての国民に一定の生活水準を保障しようとする目的は、自由社会にとって有害でしかない。
これを行うには、一部の国民から強制的に取り上げ、他の国民に与える方法を取る。
強制的な所得の再分配は、取り上げられる者と与えられる者、という不平等な扱われ方になる。
これは自由社会とは両立しない。
⚫︎最も危険な問題は、ある目的が一度合法的に認められた場合、それを達成するための方法も合法的に認められるべきだ、という考え方である。
自由の原則と矛盾する強制手段も正しいということになる。
福祉対策のために、政府がこのような統一的、包括的、強制的な計画をもってすれば、将来国民の自由は奪われることになる。
そして、ひどい官僚主義が問題となる。